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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第3章 〜死神〜
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Thirtieninth Judge

「ヤマ...シロ...」


「.........」


ヤマシロの一撃がゼストを捉えたかのように思われたが間一髪のところでゼストが躱した、いやヤマシロがわざと外したのだ

更にヤマシロはその両の瞳から涙を流している


「なぜ、泣くのだ?」


「だ、れだ?」


やっとのことで絞り出したヤマシロの最初の台詞だった

ゼストの疑問に応える様子もなく、静かに閻魔帳と鬼丸国綱を何処かに仕舞い込み、


ドゴッ!という音が三途の川に響き渡った


ヤマシロがゼストを殴ったのだ


「がはっ!?」


「誰なんだ、お前は!!」


ヤマシロは涙を流しながら額にビキビキビキィと血管が走り、憤怒の表情でゼストを見下す

ゼストは素早く起き上がり、警戒体制を瞬時に取る


「何を言って....!?」


再び、ゴッ!と鈍い音が響き渡る

ヤマシロの追撃が止まることはなく蹴り、肘打ちが次々と放たれ止まることを知らない


「調子に乗るなァァァァァァァァ!!」


痺れを切らしたゼストが反撃に出る

ゼストは格闘術ではなく、氷の刃でヤマシロに狙いを定め放つ


ヤマシロは素早く閻魔帳を取り出し、炎の壁を作り出し攻撃を防ぐ

ヤマシロも炎の壁を操作し、巨大な渦に姿を変えゼストに放つ

しかし、炎の渦に手応えはなくゼストの気配も感じられない

ヤマシロが警戒していると、地面を這う黒い塊がこちらに向かってくるのが見えた

ヤマシロは瞬時に炎をそこに放つ


「畜生、厄介だな...」


「俺はゼストだ」


背後からゼストの声が響き渡り殺気がヤマシロに向かい飛んでくる

その殺気を頼りにヤマシロはゼストの攻撃を防ぐ


「その事実は俺が輪廻転生の輪に乗り存在がなくなることがない限り変わることはない」


「.....もう一度言う、お前はゼストという存在に依存している魂だ、閻魔大王を本気で騙せると思ったか?」


「..........」


今度はゼストが黙り込む

ヤマシロの言葉が真実であったかのように僅かに動揺の色が見える


「俺の知っているゼストはそんなにクールな奴じゃなかった、どちらかというとやんちゃで俺と問題ばかり起こしている問題児だった...」


「...!!」


その言葉にゼストは大きく目を見開く

しかし、ヤマシロの言葉はまだ続く


「俺が涙を流した理由はお前がゼストじゃないから流れたんだ、本来のゼストなら拒絶反応が起きなかっただろうからな」


「拒、絶反応...だと...!?」


「兄弟の盃を交わし合った者同志がそんなことも知らないのかよ?」


「....くっ!?」


ヤマシロはジワジワとゼストの姿をした何かを追い詰める

ヤマシロとゼストが昔、兄弟の盃を交わしたのは事実だが拒絶反応に至っては真っ赤な嘘である

実際ヤマシロも何故涙を流したかはわからない

しかし、こんな簡単な嘘を見極めることができず動揺してしまうということはゼストとゼストの姿をした何かの記憶は共有されていないことがわかる

つまり、一方的にゼストの精神と身体を操っている、簡単に言えばゼストに何かが寄生している状態になっている


そして、ヤマシロはその一瞬の隙を逃さない


「ゼストを返せ、この偽物野郎!!」


ヤマシロの右腕が白く輝き始める

いや、正確には右腕に装着された金色の腕輪が輝き始めていた


「それは...まさか...!?」


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


ヤマシロの右ストレートが炸裂し、白い輝きがゼストの身体を貫く

その輝きと共にゼストの身体から黒い人魂の様なものが飛び出す


「グォォォォォォォ!!?」


「ゼスト!?」


ゼストは身体から力を失うと、重力に従いそのまま前に倒れる

それをヤマシロが支える


「よし、生きてはいるな...」


ゼストの安否を確認したところでどこからか声が掛かる


「貴様、それを一体どこで習得した!?」


先程までゼストの身体に寄生していた何かの声だった

今まで以上に焦り、声を荒げる

ヤマシロはニヤリと笑い、


「キリストのオッサンから、初代の力を封印した腕輪を預かっただけさ」




数週間前、神の国にて...


「..........おい、なんだここは」


キリストに案内された場所に辿り着き、ヤマシロは敬語を忘れ青筋を浮かべながら尋ねる


「私の家だが?」


「テントじゃん!!」


「何、最近アウトドアというモノにはまっていてな、BBQなんかも実に楽しい」


「俺の行く先々で次々と常識が崩れていく!?」


人一人入るのがやっとの赤いテントの前でヤマシロは頭を抱え込む

確かに神の国は自然が多く、というか自然と神の居住地くらいしかないため、キャンプのようなアウトドアするにはもってこいの場所だが、忘れてはいけないのはここが神の国でそれを行っているのがイエス・キリストという世界的に有名な人物がそれをしているというところである


特にヤマシロはここ最近、髪を金髪に染めた戦国武将とか何故か天国にいるややイケメンな大泥棒などと常識という常識が崩れてしまっているため新たな常識を作る必要がありそうだ

.....いや、既に手遅れかもしれない


「ここで天照と待ち合わせなのだが.....」


キリストがポツリと呟く

天照大御神といえば現世の日の丸の国を代表する神の一人と聞いている

太陽の神とも言われかなり有名な神らしい

そんな人物とキリストが知り合いなのも、何か縁があったのだろうとヤマシロは瞬時に片付けてしまう


しばらくして、木陰から物音がした

そこには美しい黒髪の女性が立っていた

白い着物に冠を表すような帽子、目を奪われてしまうほどの美貌にヤマシロは言葉を失ってしまう

まさに大和撫子という言葉がピッタリ当てはまる女性だった


「おぉ、天照」


どうやら彼女が天照大御神らしい

キリストの呼びかけに天照大御神はこちらに歩み寄ってくる


すると視界から彼女の姿が突如として消えた


「................え?」


ヤマシロは理解が追いつかなかった

きゃっ、という可愛らしい声の意味が全くわからなかった

キリストはもう見慣れた、といった顔でため息を吐く


「.............」


「.............」


「.............えへ☆」


ここまで引っ張ればもうお分かりであろう

神の国であった大和撫子、天照大御神は盛大にズッコケたのだ

こうしてヤマシロと天照大御神は少し奇妙な出会いを果たした

その後、話は初代の話になりキリストから初代の力を宿した腕輪を受け取ったのだ

二人とも初代とは知り合いだったらしく相当の使い手であったと語っていた

そして.....


「ヤマシロ...」


「ん?」


天照大御神が何やらモジモジしながらヤマシロに声を掛ける


「ま、またお酒を飲みましょふ!」


....最後の最後で盛大に噛んだ天照大御神が印象的だったことを伝えておこう




長い長い(?)回想を頭の中で繰り広げた(一部省略)ヤマシロはようやく現実に戻ってくると辺りに黒い霧のようなモノが立ちこもっていた


「やはりこのような若僧が儂を所持するにはいささか無理があったか...」


「お前は一体何なんだ、一体どこから話掛けているんだ?」


ヤマシロは少々ドスの効いた声を放つ

霧は辺りを包み、声だけが不気味に響き渡る


「ククク、可笑しなことを言う奴だ、儂はお前の目の前にいるというのに...」


「目の....前....?」


ヤマシロは声に従い前を見るがそこにはゼストが使っていた大鎌しか転がっていない...

まさか、いくらヤマシロの常識が崩れかけているとはいえ鎌が話しているなど誰も思わないであろう

ヤマシロもその一人なのだから


しかし、その常識は崩壊する


「あの青鬼め、儂の封印を解いたと思ったらこんな若僧になぞ授けおって...」


鎌が一人でに話し出したと思ったらカタカタと音を立て、何かが解き放たれるように鎌がヒトの形を帯びていく


「今代の閻魔大王よ、儂を怒らせた罪は重いぞ!!」


鎌は勢い良く怒号を上げる

その叫びは鼓膜を破り、辺りの氷を次々と破壊していく

鎌は身体中から瘴気を放出する


「今回こそ、憎き閻魔大王の血筋を断ち一族の永遠の幸せを手に入れてやる!!」




「全く、目覚めの悪い目覚ましだ...」


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