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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第3章 〜死神〜
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Thirtiethird Judge

しばらくの間、天狼と無言の時間を過ごしていたヤマシロだったが、裁判所から仕事の連絡が入り麒麟亭から直接裁判所まで戻った

こんな大宴会が行われている中でもきちんと働いている奴もいるんだな〜とヤマシロは関心しながら宙を浮き移動する

重力を無視したこの移動技は閻魔大王に与えられた特権技術の一つである、実際鬼達は宙に浮く便利な技術は持ち合わせていない


「死神...」


ヤマシロは裁判所へ向かいながら先程の天狼の言葉を思い出す

ペンガラディラン図書館で読んだライトノベルでそのような登場人物像はあった気がするが、恐らく天狼の言っていることとは別物だろう


「昔、親父に何か言われた気もするんだけどな、なんせあまりにも昔過ぎて記憶が曖昧だ...」


誰かが聞いているわけでもない独り言をブツブツと呟きながらも裁判所はどんどん近くになってくる


ヤマシロは裁判所に着くと連絡のあった場所の座標を脳波で特定し、そこまで移動する

そこまで急ぐような様子でもなかったのでゆったりとマイペースに向かう

向かっている途中に何人かの鬼に捕まりかけたが、あきらかに閻魔大王がやらなくてもいいような無駄な内容もあったため、そこについては全力でスルーする


そして、何やかんやで目的の場所に辿り着いた


天地の裁判所 第二資料室、と書かれた部屋の前で立ち止まり一応礼儀としてノックをする


「はい?」


「ヤマシロだ、連絡を受けて来た」


「あ、閻魔様ですね」


少々お待ちください、と言葉を残し何やら整理をしている様子が室内から聞こえたが片付けでもしているんだろうな、と判断し扉が開くのを待つ

そして、音が止み扉がゆっくりと開かれる


「お待ちしておりました」


扉を開けたのは少し小柄で気の弱そうな青年だった

恐らく、鬼で戦闘もするであろうが後衛で補助がメインだろう


「何の用だ、枡崎 仁...だっけ?」


「えぇ、自分のことをご存知で?」


まさか自分の名前を知っているとは思わなかった、と言わんばかりの表情を見せる枡崎に対しヤマシロは、


「いや、なるべく部下の顔と名前くらいは上司として覚えておたきたいんだよ、二週間前はお疲れ様、よくあれだけの魂を説得できたな!」


「いえいえ、勿体無いお言葉です」


そう、彼こそがあの大戦中に機能を失った天地の裁判所にやって来る大量の魂を喰い止め、時間を稼いでくれた鬼こそが彼、枡崎 仁なのだ

その活躍は亜逗子から聞いており、ヤマシロもいつか会ってみたいと思っていたがこんなに早くも会えるとは思ってもなかった


「でもお前の働きがあったからこそ更なる被害を出さくて済んだんだ、その点では本当に感謝している」


「そ、そんな、自分はただできることをやっただけですよ」


枡崎は恥ずかしそうに笑いながら頬をかく

彼としても自分はその辺にいる部下Aという括りに纏められている人物と自覚していたので嬉しい部分もあるようだ


「それで、どうしたんだよ一体?」


「失礼、嬉しさのあまり本分を忘れておりました」


枡崎はピシッと態度を改め、


「自分は亜逗子様の隊の、主に資料やそのような雑務を担当しております枡崎 仁でございます


......自己紹介が今更ですみません」


「いや、いいよ俺もタイミングを奪っちゃったみたいだし」


「ありがとうございます、では早速ですが中にお入りください」


枡崎に連れられるままヤマシロは第二資料室に入る

そこにはペンガラディラン図書館に匹敵するであろう紙束と本が並べられていた


「ここは亜逗子様の管轄する部屋なのですが、何分彼女はこういうことは苦手そうなので現在は自分が自由に使わせていただいております」


「.....何か悪かった」


「いえ、自分もこういうのは好きなのでお気になさらず...」


亜逗子ならやりかねないことだがまさか本当にやっているなど誰が想像したものか...

.....苦笑いを浮かべている枡崎も相当苦労しているんだな、と心の中で静かに手を合わせる

ヤマシロが無駄な思考をしている間にも枡崎は黙々と資料を広げ作業を進める

見てみるとここ最近やって来た魂のリストとその死因などが掲載されている資料だった


「これはこの一週間で裁判所にやって来た魂達を一部抜粋して纏めたものです」


「一週間ってことは俺がまだ夢の中にいるときの奴も含まれてるな...」


「そうですね、で死因と死亡した場所なんですが...」


枡崎のリストアップした魂数十人の死因と死亡場所を見てみると...


「死因、刃物などの鋭利な物質での致命傷からの出血多量、死亡場所、日本の首都である東京都渋谷の路地裏...って全員が!?」


「えぇ、どう思います?」


「同一犯人による殺害として見るのが妥当だろうな、でもわざわざ俺たちが介入するようなことでもないんじゃないか?」


「いいえ」


そんなヤマシロの疑問を枡崎は瞬時に否定する


「傷口をよく見てください」


ヤマシロは枡崎によって指示された画像の中の被害者の首元をよく目を凝らしながら観察する


「これは...」


「えぇ、これはあちらの法則を完全に無視した殺害方法となっています」


枡崎は続ける

ヤマシロは訳がわからなくなった


「傷口の部分だけ血液の反応が全く見られないのです」


そう、辺りは水溜りのように血が溜まっているのに、体には確かに血が流れた跡が残っているのに、被害者の傷口だけ綺麗に血がない

もはや拭き取ったとかそんなレベルではなく全くないのだ

枡崎はここで一つの可能性をヤマシロに提示する


「これは死神が関与している可能性があります」



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