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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第3章 〜死神〜
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Thirtiefirst Judge


百鬼夜行大戦から二週間...

そして危篤状態であったヤマシロが目を覚ましてから更に三日という月日が流れた

病み上がりの彼を待ち受けていたのは大量の書類という名の雑務作業であった、部屋一杯に埋め尽くされた書類の束を見るなりヤマシロは再び意識を手放そうとしてしまいそうになったこともあったが何とか踏みとどまることに成功し急ピッチで書類の束を丁寧かつ迅速で終わらせた

.....これでもヤマシロが気絶している間緊急で閻魔大王業をしていた先代のゴクヤマが半分以上片付けて帰ったらしいが、この量では本当にやっていたかすら怪しく思えてくる

...少し失礼かもしれないが面倒くさがりの先代ならやりかねない


そして、蒼 隗潼の一派であった煉獄 京と盃 天狼が天地の裁判所の職員として再就任が決定、冨嶽 厳暫と百目鬼 雲山は先代の所で療養ついでに共に隠居、朧岐 御影は蒼 隗潼と共に行方不明扱い...

幹部達以外の大半の鬼達も天地の裁判所に再就任を希望する者たちも多かった


少しながら変化のあった日々が続いたがコレといった事件はなかったため仕事も順調かつ迅速に終わることができた

....正直言うともうあのようなことは二度と起こらないでほしいのがヤマシロの本音だったりもする






そして、


「えー、では...」


広い室内にて一人の鬼がマイクを握りしめ、コップを片手に意気揚々と叫ぶ


「閻魔様のお目覚めと、新しい仲間達に乾杯ー!」


『乾杯ー!』


ある宴が開催された




「飲め飲めー!」


「イヤッホー!」


「おい!酒足りないぞ!!」


「.....どうしてこうなった?」


此処はもう戦いの爪痕など完全に忘れ去られた麒麟亭、大広間

前回の宴の盛り上げ役でもあり司会進行もしていた、唐桶 祭次(からおけさいじ)の一言がきっかけで皆が酒を飲み暴れだす

流れでヤマシロも参加することになったのだが、毎回のことながらこういうテンションには中々慣れない

彼は元々騒ぐことはないので極力宴会などには参加しないようにしているのだが、今回は亜逗子と麻稚の押しに負けてしまい渋々参加することにした


そして、その二人は今...


「閻魔様、これあたいのオススメなんだよ、飲んでみてくれ!」


「閻魔様、お酌いたしますので盃をこちらに」


.....両隣で種類の異なる酒をグイグイ押し付けてくる始末だった

いや、まだ酒を勧めてくることはまだいい...

酒を注いでくれることにも文句は何一つないのだが...


「亜逗子、貴方は煉獄とイチャイチャしてきなさいな閻魔様が大変苦しそうですよ?」


「あんたこそ、この間みたいにステージに立って盛り上げてきなよ、その方が閻魔様の為にもなるからさ」


.....いまいち平和な状態ではない

ヤマシロを挟んで互いに火花を散らしている二人は今にも飛びかかりそうな勢いだ

ヤマシロはとりあえず酒を飲みたかったので持参していた瓢箪型の酒瓶でぐいっと一杯飲む

亜逗子と麻稚はいつの間にかヤマシロを挟むどころか一歩踏み出せば頭突きができると言っていいほど顔を近づけていた

何を思って邪魔と感じたのか、ヤマシロは静かに立ち上がり大広間の扉を開け麒麟亭の外に静かに移動する

そこから麒麟亭の屋根を登り荒れ果てた地獄を見下ろす


「.........」


少し目を凝らせばいつものように罪人が地獄巡りをしている様子が見られる

ヤマシロは火山の噴火を傍観しながら酒を一杯飲む


「ヘぇ〜いいな、ここ...ヒック!」


不意に背後から聞き覚えのある声がヤマシロの耳に届く

振り返るとそこにはヤマシロの銀髪とは少し違う、色素の抜けた真っ白の髪を風になびかせた鬼がいた


「天狼さん...」


「うぃ、こうやって二人だけってのは久しぶりだな、ヤマシロ」


天狼は笑いながらヤマシロの背後に立ち、更に酒を体内に摂取する

酒呑童子である天狼はアルコールを取り入れることに何の躊躇いもなく、アルコールによる病の心配もない


「しっかし、お前がここまで立派になってるとは俺は驚きだぜ」


「いつまでもガキ扱いしないでくださいよ、一応今じゃあんたの上司って形にもなってるんですから」


「おぅおぅ、あのヤマシロが随分偉くなったもんだ、昔俺の酒を間違えて飲んで大泣きしたのはドコのどいつ様だったかな〜?」


「いつの話してるんですか、残念ですが俺の記憶には残ってないですね!」


「はは、懐かしいねぇ〜」


ヤマシロを弄ぶ天狼はどこか楽しそうに、ヤマシロも満更ではない様子で苦笑いを浮かべる

天狼が辞める前、ヤマシロは天狼に様々なことを教わっていた時代があったため彼らにとって今の時間は懐かしい限りなのであろう


二人が懐かしい思い出話で盛り上がっているともう一度火山が噴火した

そして乾杯を交わし、話を再開する


「そぉいやよヤマシロ、お前死神使ってんのか?」


「死神?」


聞き慣れのない単語にヤマシロは思わず首を傾げる

確か昔一度そのようなことを聞いた覚えがあるような気がするのだがどうも靄がかかっていて思い出せない

ヤマシロの反応に天狼は驚き、息を飲む


「お前...先代から何も聞いてないのかよ?」


「親父から?」


「いや、何でもない」


知らないならいい、と天狼は呟き視線を落とす

ヤマシロはいまいち天狼の意図がわからなかったが一先ず忘れることにした

その後、二人に会話はなく静かに酒を飲む時間がひたすら続いた

沈黙を打ち破るように火山が何度か噴火を繰り返したが二人が言葉を交わすことはなかった


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