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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第2章 〜百鬼夜行〜
29/101

Twentieseventh Judge

合戦開始より三分経過...


「おりゃぁぁ!!」


「くたばれぇぇぇぇぇ!!」


ヤマシロ軍、士気は更に高まり、勢い止まらず

戦闘不能者ほぼなし


「せいやぁぁぁぁぁぁ!!!」


先頭を走るのは紅 亜逗子

彼女の拳は大地を割き、暴風を巻き起こす


「給料はあたいのもんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」


亜逗子の拳が再び放たれる

....というより、もう向こうは戦意喪失して亜逗子から逃げてるようにも見えてしまうのはきっと気のせいだろう


「何人でも掛かって来やがれぇー!」




「全く、亜逗子は本当に単純ですね」


「.....給料効果恐るべし」


「ここまでやる気になるのは予想外でしたか?」


「予想外だったな...」


その後方で敵を確実に倒しつつ見守る、ヤマシロと蒼 麻稚


ヤマシロが見たなかでは亜逗子の拳が敵を半数近く倒してしまっている気がする

.....というよりここに来る前、既に一戦行っているというのにどこにあんな体力が残っているのだろうか、亜逗子と戦った煉獄は相当の手練れであった筈だが...


「閻魔様、向こうの主力は何をしているんでしょうね?」


「大方、亜逗子を止めるのに一人とこっちに何人か回してくるだろうな、俺たちみたいに暴れ回ってるとは考えづらい」


今敵対している相手は現役ではないが、数々の死闘を経験したことのある猛者が団結したようなものとなっている

一瞬の油断や一つのミスが命取りになってしまう強豪を前にしているのと同じである


「確かに、向こうはこちらよりも戦闘の経験が豊富ですからいつでも万全にしておくことが考えられますからね」


「だから、なるべくお前も体力は残しておけ!」


「はい!」


ヤマシロと麻稚はそれぞれの武器を構え直し、体制を立て直す

こちらの軍は数こそ勝っているが実力は完全に敵方が上にある

今は数と勢いで押してはいるが、それも時間の問題となり敵方の主力が出てくれば戦況は大きく変わるだろう

だからこそ、ヤマシロは叫ぶ


「亜逗子ー!敵の陣を見つけたら更に給料倍だぞー!」


ヤマシロが叫ぶとどこからともなく、ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!と声が大きく響き渡り地鳴りと轟音が更に大きくなる


「.....ホント単純な奴だよな」


「全くです」


ヤマシロと麻稚は溜息をつきながら苦戦している鬼の所へ向かおうとする

しかし、それは背後から迫る人影によって阻まれる


「全く、あの赤鬼の娘は中々元気なことだ...」


ヤマシロと倍以上の身長差、その体格は先代閻魔大王ゴクヤマにも並ぶ

深海のように暗い青い髪と天空をも貫きそうな一本の青い角を生やした巨漢の鬼、


「中々いいペアを見つけたようだな、麻稚」


「か、隗潼さん!?」


「父上...」


今回の事件の首謀者であり、麻稚の父親でもあり先代閻魔大王ゴクヤマの右腕とも呼ばれた鬼...


「元気そうだな、麻稚」


蒼 隗潼、最強にして最大の壁が二人の前に立ち塞がる




「うおりゃぁぁぁぁぁぁ!!」


「ぐわぁぁぁ!!」


「ひ、退けぇ!」


「あの女に近づくな!!」


一方、今までにないくらいのハイテンションでフィーバーして一人独走している亜逗子はヤマシロからの敵陣捜索の報酬を聞き、更に興奮が激しくなり敵方達を容赦無く次々と殴り飛ばす


「カネェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」


....動機が不純で欲望に忠実な部分はスルーしていただきたい


「畜生!」


「俺達の手に負えないぞ!」


敵の鬼達が少しずつであるが後退を始める

敵わない相手とは極力戦わない方が良いという長年の経験と彼らの危険信号が無意識に働いた結果である


「うぃ〜、こっちは中々楽しそうじゃねぇかよ〜」


数多くの鬼達が後退する中、一人の鬼だけが酒を飲みながら危なっかしい千鳥足で亜逗子にゆっくりと近づく


盃 天狼...


他から見れば、ただの酔っ払いの中年だが、亜逗子は彼の力を感じ取ったのか警戒を強める

その一連の動作に盃はニヤリと笑う


「なるほど、どうやら他の雑魚共とは一味も二味も違うみてぇだな、おもしれぇ...」


盃は首を軽く捻りながらマイペースにゆったりした動作で構えの体制に整える


「上等...!煉獄の奴とはやりたりなかったんだ、こんぐらいの実力者じゃないとあたいの腹の虫も収まんないね!!」


亜逗子も拳を更に強く握る

二人はただ睨み合っているだけなのにそれだけで互いの実力が伺えるほど凄まじい力とプレッシャーが二人の空間を支配する


「つぉりゃぁぁぁぁぁ!!」


亜逗子は凄まじい速度で盃に迫り一気に距離を詰める

そのまま拳を放つも盃はそれを躱す

しかし、その動きは千鳥足が更にフラフラしたような動きであったため亜逗子の闘争心を更に煽る


「....酔拳使い」


「うぃ〜、当ててみろ」


亜逗子は静かに舌打ちする

酔拳は酔えば酔うほど動きの予測が難しくなる

それも意識的に行う動作ではなくなるのが原因である

あまり酔うことのない亜逗子にとっては酔っ払いの気持ちはこれっぽっちもわかりはしない

盃も反撃を開始する、予測不能の格闘術は躱すのも受けるのも至難の業である


「ヒック、俺は酒呑童子、アルコールこそが俺のエンジンだ」


盃は更に酒を飲む

酒呑童子という種属は体内に入ったアルコールの半分をアドレナリンに変えることができる

これには個人差があるが、常人よりも酒を摂取できる量が遥かに多いのも特徴的である

盃は酒呑童子の中でもかなりの酒飲みである


「さて、そろそろ本気で行くか.....ヒック!」


更に盃の酔いは回る

それは彼本来の実力が発揮される前触れだった


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