カラス
僕の声は届かない。
誰にも。
知ってたんだ
僕は要らない存在。
自分の居場所なんて
そんなものはどこにも無かった
みんな噂をしている
「アイツは狂ってる」
毎日顔を合わせていた野良猫が
雨で濡れた道路に潰れていた。
流れていく赤いものが
このモノクロの世界で鮮明に映った。
お休み。どうか良い夢を
例えばそう、優しくて温かな腕の中にいる様な
電柱にとまっていたカラスが
野良猫の魂を乗せて飛んでいく
羽ばたけ、夜の使者よ
この雲より高い世界へ。
僕は傘を閉じて
冷たい雨に打たれてみる
奪われていく体温が
不思議と心地よかった
そうだ、僕は何処へでも行ける
あのカラスの翼に乗って
あの野良猫の下へだって。
警報の鳴る踏切
遮断機をくぐり抜けて
さぁ、カラスよ
唯一の友達の所へ
僕を連れていっておくれ
大きな黒い翼に乗って
モノクロの世界から遠ざかって
腕の中から
あの野良猫が僕を見ていた。
一緒にいこう
ずっと一緒にいよう
僕はずっと
君のことが大好きだったんだよ。