表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第1話:斬殺少女と苦労性な乙女

キャラクター原案:フェルマ

シナリオ:SEIMA

木漏れ日が草木を照らす、早朝の森林


その奥の広い空き地で、大木が倒れるようない重い音が響いた。


倒れるのは、鹿に似た角を持つ草食獣『ガグゼル』一般的に温和といわれるそれは、その腹から血を流し今にも息絶えそうに震えていた。


「ふぅ、やっと止まった………」

そう声がすると草陰から一人の黒髪の少女が出てきた。

草色のシャツに薄茶色の七分丈のズボンを穿いている。

手には一本のナイフ、背中には簡素なつくりの弓を背負い腰には矢筒をつけている。



「もう、往生際が悪いのよ!」

そう言い、少女は手に持ったナイフを振り上げガグゼルの首に振り下ろした。

食い込むナイフはガグゼルの意識を一気に奪いその命を刈り取った。


「ふぅ、今日は大物ね……流石にこれは一人じゃ無理ね」

肩甲骨まである髪を振り払いそう呟くと、一息嘆息すると、彼女の真横の木々が崩れ、そこからヒト型の生物が現れた。

『ゴブリン』緑色の肌をした小人のモンスターで知能は低いが集団で動く厄介者である。

広く生息するそれが今、目の前にいる。


一人の少女にその命を弄ばれながら


ゴブリンの上には一人の少女が飛び乗る。

先の少女と同い年くらいで、長い髪を白いリボンで結い、黒いワンピースを着ている、そしてその手には、彼女の前腕位の長さの短剣が握られ、今それをゴブリンの腹に突き刺した。

潰れた蛙の様な声がゴブリンから聞こえる、少女は数度短剣を上下に揺すると、短剣を抜き笑顔のまま再度突き刺した。

数回の抜き差しの後、少女は大きく口を開いたゴブリンの腹に手を突き入れ、中から腸を引きずり出す


「見てぇマナミこんな長いのがとれたよ」

幼子のように目を輝かせそう言う少女をマナミと呼ばれた弓の少女は、無言で近寄り少女の頭を叩いた。


「リエコ、いい加減して!毎回狩りの度に対象外のモンスターを弄ばないの!いい?襲われたのならわかるけど、なにもしてないモンスターしかも食べられないモンスターを安易に殺さないで、モンスターも生きてるんだから!!」


マナミがそう言うと、リエコは叩かれた頭を押さえながら上目使いでマナミを睨んだ。


「ほら、今ガクゼルを狩ったからさっさと持って帰るよ」

マナミがそう言い適当な木の棒にガクゼルの死体を括りつけていく、リエコも不満そうな顔でそれを手伝い始めた。




==============================================================================



【アーシス】


地元に帰ってきた二人は街にある精肉店に獲ったガクゼルを渡し換金した。


「まぁ、あのくらいの獲物ならこのくらいが妥当かな………」

換金前より幾分温かくなった財布を見ながらマナミは呟く、予想より少ない額にやや不服そうだがそれでも普段より多い金額に内心安堵した。

「ねぇマナミ、あのナイフ綺麗だね」

一方隣にいるリエコは近くの武器屋に展示されているナイフを眺め、眼を輝かせる。

「ハイハイ、というかアンタ少しは魔法の練習はしているの?折角素質があるっていわれているんだからサボったらもったいないよ」

「う~ん、確かに魔法の練習も楽しいんだけどさ、私はやっぱり自分の手でモンスターをなぶり殺す方が好きなんだ」

リエコはそういうと、マナミは額を抑えた。


「アンタのその嗜好はもう病気の域ね………なんで神様は、こんなヤツに魔法使いに素質を持たせたんだろ………」

マナミが本気で悩むその横でリエコは生き生きした顔でナイフを眺めている。マナミは嘆息するとリエコの裏襟を掴み引きずって歩きだす。


「あぁ、もう少しぃ」

「アンタが刃物見だしたら日が暮れるのよ!」





=====================================================================


リエコを引きずりマナミが向かった先は、街の食堂であった。

昼時を過ぎた店内は人波も疎らで、席を探すのは容易であった。


「はぁ………」

「どうしたの?さっきからため息ばかりついて」

サンドイッチを食べていたリエコは溜息を吐きつづけるマナミにそう声をかける、マナミの手元にはパンが浸かった食べかけのシチューがある、浸かっているパンがシチューで手を汚し、彼女の食が進んでないことを物語っている。

「ねぇ、リエコ?」

「なに?」

不意に声をかけるマナミにリエコは笑顔で答える。

「私たちってこのまま強くなれると思う?」

マナミのその言葉にそれまで笑顔だったリエコの顔が曇った。

「私達、今まで結構モンスターを倒してきたけど、ここら辺のモンスターって一般的に弱い部類に入るからさ、最近物足りなくなってきたんだよね」

「………そうだね、もうゴブリンの腸も見飽きたよね」

「いや、モンスターの腸見て楽しいのはアンタだけだから………」

天然な発言するリエコにマナミは突っ込むと、真剣な顔をした。



「だからさ、そろそろ旅に出ない?」

マナミはそう言いた瞬間リエコの顔が複雑に動く

「旅って、私たち二人で?」

「そう、私の剣の修行も一段落したし、リエコももう街の魔道書読みつくしたでしょ?いい機会だと思うんだ」

「うん。でもさ、私たち二人で生き残れると思うの?外には強いモンスターもいるみたいだし」

「だから、その強いモンスターと戦って私たちも強くなるのよ!」

「そうだね………。強いモンスターを倒せば私たちも強くなったってことだよね………他のモンスターの腸も見てみたいし」

「だから、いい加減に腸から離れろ!」

マナミがそう叫んだ瞬間、食堂に一人の男が飛び込んできた。


「大変だ!ゴーラの炭鉱がゴブリンの群れに乗っ取られた!!」

男がそう叫んだ瞬間店の中が騒がしくなった。

ゴーラは二人の住む、アクゼリス最大の鉱山の街であり産業の中心でもある、そこの炭鉱が乗っ取られたという報に街の人々を騒がしたのだ。


「マナミ!」

「来たわね、私たちの旅立ちの時が」




そう言い飛び出す二人、その背中を一人の男がじっと眺めていた。


新連載始めました。



今後ともよろしくお願いします。


なおこちらは基本不定期です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ