押入れの中のプラスチックケース
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いつかの恋句。 6句
年上で アル中気味でも 好きでして
笑おかな 冷酒片手に とぽとぽと
秋扇 我と重ねて ひらひらと
朝寒し 帰る場所ある あなたの背中
冬木立 煙草をくわえ 物思う
ストーブの 前にまるまる その背中
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皮膚の下。
部屋の隅の方から、欠けてきたように思う。
そこからは、普段目にしない景色が見える。
日々の生活を脅かしかねないような恐怖感が、
見えるのです。迫ってくるのです。
私はどうしよう。
受け入れよう。
そして怖がろう。
欠けるまで放って置いた私が悪い。
けれども決して心配はしないで下さい。
私は決して壊れない。約束できる。
剥がれ落ちた壁を、元通り綺麗にしていく。
私は結局、なんにも感じないから。
ただ安心する音があればいい。
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猫。
窓の向こう側。猫がなごう。
あなたに少し似ている。柔らかい音。
すり寄せる、凍える傷だらけの体。
甘えて。甘えて。やがて眠ってしまった。
ぬくもり、逃がさぬように、温めて。
温めて。安心した。
彼女は目覚めると、帰ってしまった。
大好きな飼い主のところへ、帰ってしまった。
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ミッドナイトウェイ
誰もいない部屋に帰るのは大して悲しいことではないが、
誰も帰ってきてくれない部屋に帰るというのは憂欝だ。
マンションのエントランスホールのドアに手を触れる。
誰にも気付かれない息がもれた。
細く短く冷たく泣く。一瞬だけ。
僕は身を翻し、夜の散歩に出かける。
まだ明かりのついた家は多いのに、
どれも僕には関わりのない光。
通り過ぎていく車が、
ベルトコンベアに乗って運ばれていくダンボールに見える。
乗っている人たちは、
ダンボール箱に詰められた品物のよう。
やがて誰も姿を見せなくなり、家庭の明かりも消える。
もう、僕しか歩いている人はいないのに、
まだついている明かりがある。
休めない人々を慰める光だ。
深夜。無条件の優しさ。
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支え
自分には何もないと思っていた
中身がないんだ
惹かれるまま あっちこっちへ 手を伸ばす
特別なものを 自分は知っている
そう装いたいだけ だったよね
自分には 特別なものなんて 一つもない
改めて思い知らされて
だから 物分りの良いふりして
離れて いった
役割を演じていると
役割に対してのアプローチが
方々からなされて
自分は必要とされている だなんて
そんな勘違い しちゃったんだね
役割が重要だったんだよ
きみが重要だったんじゃ ないよ
なにか 自分にも出来るんじゃないか
なんて 思っちゃったんだよね
なにも できないよ
でもね ちゃんと自分を見つめなおして
そして 今からでも遅くないから
ゆっくり きみのこだわってるものを
育てていけばいいから
きみの幸せを願っているひとは
きみの歩みを見ていてくれるよ
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不安
時間がない 時間がない
いっつもそう言ってるのに。
へえ 別の女と会う時間はあるんだ。
大好きな 水族館 行ったんだ。
素敵な カフェ 行ったんだ。
大切な バー 行ったんだ。
死ぬか 一緒になるか してくれないかな。
また 嘘をつくなら 死ね。
死ね 愛してる
死ね 離れないで
死ね 一人にしないで
死ね ずっと一緒にいて
死ね 頭おかしいよ
死ね 今までの時間は無駄
死ね あんたはあたしを損なった
死ね 時間を戻せよ
死ね 傷ついたよ
どうしたら あんたは傷つくの
どうしたら 私は
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妹みたいなきみへ
いくら僕が最低の人間と呼ばれようとも
本当に大切な人については
大切にできるらしい
じゃなけりゃ あの夜の行動は 理解できない
自分らしくない
1ミリだって離れちゃいない
そんな距離の中で
僕は君に触れられなかった
他の人なら違ったろう
ただ君にだけは触れてはいけないと思った
熱しやすく冷めやすい
人から非難されることを多くしてきた僕が
この感情を持ち続けて6年
あと何年続くかな
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無題
鼓膜を叩く大音量に
頭が痛い だなんて
そんなことはない
ただただ
音に合わせて
攻撃的になる だけ
攻撃的になる
ということは
強い意思を持って
生きることかと
思う
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お時間ありがとうございました。