【朗報】追放、禁止になる~追放とかざまぁとかもうやめませんか?←やめた結果wwwwww~
その世界には「不遇職」と呼ばれる者たちがいた。
戦士、魔法使い、聖騎士、剣聖。
そんな派手な職業に比べれば見劣りする職業だ。
鑑定士。
付与師。
農具強化師。
料理人。
鍵師。
測量師。
地図職人。
薬草管理士。
彼らは冒険者パーティーのお荷物と呼ばれ、多くが追放されていた。
誰も知らなかった。
本当に価値がないのではなく、価値に気付いていなかっただけだということを。
そして全ての悲劇は一人の青年から始まった。
◇
レオ・アークライトは黒髪短髪の平凡な青年だった。
職業は貯蔵術師。
極めて珍しい固有職業である。
彼の能力は単純だった。
魔力を無限に近く蓄えられる。
そして他人へ貸し与えられる。
たったそれだけ。
そのため世間の評価は低かった。
「魔力タンクか」
「便利だけどそれだけだな」
「本人は弱い」
「戦えない」
誰もがそう笑った。
しかしS級冒険者パーティー『ドラゴンの牙』だけは違った。
彼らはレオを仲間に迎えた。
リーダーのシド・ヴァーミリオン。
赤髪の大剣使い。
灼熱魔術師のセリア。
双剣士ガレス。
聖女ミリア。
そしてレオ。
世界最強と称されるパーティーだった。
レオは本気で仲間だと思っていた。
だから五年間。
自分が集め続けた膨大な魔力を何度も彼らへ貸し与えた。
強敵との戦いで。
古代遺跡の攻略で。
魔族との戦争で。
何度も。
何度も。
何度も。
その結果。
ドラゴンの牙は英雄と呼ばれるようになった。
レオ以外が。
◇
ある日。
伝説のダンジョン。
奈落の迷宮攻略の依頼が舞い込む。
百階層存在すると言われる史上最悪のダンジョンだった。
数ヶ月後。
彼らはついに最下層へ到達する。
巨大な石門。
その向こうに莫大な財宝の存在を示す反応。
全員が興奮していた。
ただ一人を除いて。
シドだ。
彼は振り返った。
「レオ」
「どうした?」
「お前を追放する」
レオは笑った。
冗談だと思ったからだ。
だが誰も笑わない。
「……え?」
「役目は終わった」
レオの表情が固まる。
シドは続ける。
「ここまで来たのは俺たちの力だ」
「何を言ってるんだ」
「魔力供給くらい誰でもできる」
セリアも頷く。
「正直、荷物だったわ。私の着替えも覗いてたし。バレバレよ?」
ガレスが笑う。
「ザコだしな」
ミリアは目を逸らしていた。
「待ってくれ」
レオは必死になる。
「俺たち仲間だろ」
「仲間?」
シドが鼻で笑う。
「勘違いするな」
その言葉は剣より鋭かった。
「お前は燃料だ」
沈黙。
数秒。
それだけで十分だった。
五年間が崩れ去るには。
◇
直後。
シドはレオを蹴り飛ばした。
最下層の広間へ。
巨大な扉が閉まる。
その向こうで笑い声が聞こえる。
「財宝はいただくぞ」
「達者でな」
「じゃあね」
置き去りだった。
完全に。
◇
レオはため息を吐く。
「まあいいか」
意外にも冷静だった。
怒りも悲しみもある。
だが死ぬ気はしない。
なぜなら。
彼は世界有数の魔力量を持っているからだ。
自身ではなく貯蔵庫の中に。
レオは振り向いた。
広間の奥。
そこにいた。
黄金に輝く古代竜。
山のような巨体。
赤い瞳。
世界の終焉を思わせる威圧感。
普通なら絶望する。
だがレオは余裕だった。
「回収すればいいだけだからな」
貸し出した魔力を戻す。
それだけで億単位の魔力が集まる。
一瞬で最強になれる。
そう思った。
その瞬間。
レオの顔色が変わる。
「……あ」
思い出した。
最下層に来る直前。
全員へ過去最大量の魔力を貸していた。
現在の手持ち魔力ほぼゼロ。
「やばい」
ドラゴンが動き巨大な口が開く。
「回収術式起動!」
必死に詠唱した。
遠く離れたシドたちの身体から凄まじい魔力が引き抜かれる。
戻ってくる。
戻ってくる。
戻ってくる。
「間に合え!」
青白い光が集まる。
あと少し。
あと少しだった。
だがドラゴンの牙が落ちる。
そして。
レオの頭は胴体から消えた。
◇
一方その頃。
シドたちは財宝の間にいた。
「勝った!」
「伝説の財宝だ!」
山のような黄金。
神話級装備。
古代魔道具。
歓喜が広がる。
しかし。
最初に異変に気付いたのはミリアだった。
「魔力が……消えてる?」
「何?」
全員の身体から力が抜ける。
「あいつだ!」
シドが叫ぶ。
「回収しやがった!」
その瞬間。
背後の壁が吹き飛んだ。
黄金の炎。
絶望的な魔力。
最下層のドラゴンが現れた。
だが何かがおかしい。
魔力反応が異常だった。
桁違いに。
レオという貯蔵庫を丸ごと喰らったのだ。
ドラゴンは世界最高峰の魔力量を手に入れていた。
「逃げろ!」
遅かった。
炎が放たれる。
シドたちは叫ぶ暇もなかった。
英雄と呼ばれたドラゴンの牙は。
一人残らず消し炭になった。
◇
事件は終わらなかった。
むしろ始まりだった。
数年後。
ある鑑定士が追放される。
ダンジョン最深部へ置き去り。
モンスターに食われる。
追放したパーティーも後日全滅。
さらに付与師。
料理人。
農具強化師。
鍵師。
薬剤師。
次々と追放された。
そして全員がダンジョンで死亡する。
不思議なことが起こる。
彼らを食べたモンスターが異常進化し。
追放したパーティーを襲うのだ。
鑑定士を食べた魔物は未来予測能力を得た。
付与師を食べた魔物は伝説級装備並みの肉体を得た。
料理人を食べた魔物は常識外れの回復能力を獲得した。
農具強化師を食べた魔物は周辺大地を支配した。
鍵師を食べた魔物は結界を無視して侵入した。
誰も気付いていなかった。
彼らこそ本当の才能だったことを。
◇
冒険者ギルドは恐怖した。
調査結果は絶望的だった。
「追放された不遇職を食べた魔物が異常進化している」
「原因不明」
「ただし関連性は確実」
世界中で会議が開かれた。
そして。
史上初の法令が制定される。
追放禁止令。
冒険者は能力だけを理由に仲間を見捨ててはならない。
違反者は資格剥奪。
重罪扱い。
世界は喝采した。
不遇職たちは涙を流した。
もう捨てられない。
もう見殺しにされない。
平和な時代が訪れた。
◇
だがそれは別の悲劇の始まりだった。
誰も追放されなくなった。
誰も死ななくなった。
だから誰も気付かない。
本当の力に。
鑑定士が世界の真実を暴けることに。
付与師が神を超える武器を創れることに。
料理人が奇跡の回復食を作れることに。
農具強化師が荒廃した土地を蘇らせることに。
鍵師が肉体や精神に鍵をかけられることに。
彼らは追放されない。
だから絶望もしない。
工夫もしない。
覚醒もしない。
真価へ辿り着かない。
◇
そして数十年後。
魔王が現れた。
歴代最強。
神々すら恐れる怪物。
人類は戦った・・・そして敗北した。
勇者は倒れた。英雄も倒れた。国家も滅びた。最後の砦も崩れた。
もしあの時。
不遇職たちが自らの可能性に気付いていたら。
世界は救われていたのかもしれない。
だが誰も知らない。
知る前に全て終わった。
燃え上がる世界を見下ろしながら魔王は笑った。
「脅威は初めから存在していた」
その言葉通りだった。
人類を救えた力は確かにあった。
ただ誰も価値を理解できなかっただけだ。
こうして世界は滅んだ。
英雄によってではなく、無能と呼ばれた者たちの可能性を見抜けなかった愚かさによって。




