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【朗報】追放、禁止になる~追放とかざまぁとかもうやめませんか?←やめた結果wwwwww~

作者: 勇者れべる1
掲載日:2026/11/01

 

 その世界には「不遇職」と呼ばれる者たちがいた。


 戦士、魔法使い、聖騎士、剣聖。


 そんな派手な職業に比べれば見劣りする職業だ。


 鑑定士。


 付与師。


 農具強化師。


 料理人。


 鍵師。


 測量師。


 地図職人。


 薬草管理士。


 彼らは冒険者パーティーのお荷物と呼ばれ、多くが追放されていた。


 誰も知らなかった。


 本当に価値がないのではなく、価値に気付いていなかっただけだということを。


 そして全ての悲劇は一人の青年から始まった。


 ◇


 レオ・アークライトは黒髪短髪の平凡な青年だった。


 職業は貯蔵術師。


 極めて珍しい固有職業である。


 彼の能力は単純だった。


 魔力を無限に近く蓄えられる。


 そして他人へ貸し与えられる。


 たったそれだけ。


 そのため世間の評価は低かった。


「魔力タンクか」


「便利だけどそれだけだな」


「本人は弱い」


「戦えない」


 誰もがそう笑った。


 しかしS級冒険者パーティー『ドラゴンの牙』だけは違った。


 彼らはレオを仲間に迎えた。


 リーダーのシド・ヴァーミリオン。


 赤髪の大剣使い。


 灼熱魔術師のセリア。


 双剣士ガレス。


 聖女ミリア。


 そしてレオ。


 世界最強と称されるパーティーだった。


 レオは本気で仲間だと思っていた。


 だから五年間。


 自分が集め続けた膨大な魔力を何度も彼らへ貸し与えた。


 強敵との戦いで。


 古代遺跡の攻略で。


 魔族との戦争で。


 何度も。


 何度も。


 何度も。


 その結果。


 ドラゴンの牙は英雄と呼ばれるようになった。


 レオ以外が。


 ◇


 ある日。


 伝説のダンジョン。


 奈落の迷宮攻略の依頼が舞い込む。


 百階層存在すると言われる史上最悪のダンジョンだった。


 数ヶ月後。


 彼らはついに最下層へ到達する。


 巨大な石門。


 その向こうに莫大な財宝の存在を示す反応。


 全員が興奮していた。


 ただ一人を除いて。


 シドだ。


 彼は振り返った。


「レオ」


「どうした?」


「お前を追放する」


 レオは笑った。


 冗談だと思ったからだ。


 だが誰も笑わない。


「……え?」


「役目は終わった」


 レオの表情が固まる。


 シドは続ける。


「ここまで来たのは俺たちの力だ」


「何を言ってるんだ」


「魔力供給くらい誰でもできる」


 セリアも頷く。


「正直、荷物だったわ。私の着替えも覗いてたし。バレバレよ?」


 ガレスが笑う。


「ザコだしな」


 ミリアは目を逸らしていた。


「待ってくれ」


 レオは必死になる。


「俺たち仲間だろ」


「仲間?」


 シドが鼻で笑う。


「勘違いするな」


 その言葉は剣より鋭かった。


「お前は燃料だ」


 沈黙。


 数秒。


 それだけで十分だった。


 五年間が崩れ去るには。


 ◇


 直後。


 シドはレオを蹴り飛ばした。


 最下層の広間へ。


 巨大な扉が閉まる。


 その向こうで笑い声が聞こえる。


「財宝はいただくぞ」


「達者でな」


「じゃあね」


 置き去りだった。


 完全に。


 ◇


 レオはため息を吐く。


「まあいいか」


 意外にも冷静だった。


 怒りも悲しみもある。


 だが死ぬ気はしない。


 なぜなら。


 彼は世界有数の魔力量を持っているからだ。


 自身ではなく貯蔵庫の中に。


 レオは振り向いた。


 広間の奥。


 そこにいた。


 黄金に輝く古代竜。


 山のような巨体。


 赤い瞳。


 世界の終焉を思わせる威圧感。


 普通なら絶望する。


 だがレオは余裕だった。


「回収すればいいだけだからな」


 貸し出した魔力を戻す。


 それだけで億単位の魔力が集まる。


 一瞬で最強になれる。


 そう思った。


 その瞬間。


 レオの顔色が変わる。


「……あ」


 思い出した。


 最下層に来る直前。


 全員へ過去最大量の魔力を貸していた。


 現在の手持ち魔力ほぼゼロ。


「やばい」


 ドラゴンが動き巨大な口が開く。


「回収術式起動!」


 必死に詠唱した。


 遠く離れたシドたちの身体から凄まじい魔力が引き抜かれる。


 戻ってくる。


 戻ってくる。


 戻ってくる。


「間に合え!」


 青白い光が集まる。


 あと少し。


 あと少しだった。


 だがドラゴンの牙が落ちる。


 そして。


 レオの頭は胴体から消えた。


 ◇


 一方その頃。


 シドたちは財宝の間にいた。


「勝った!」


「伝説の財宝だ!」


 山のような黄金。


 神話級装備。


 古代魔道具。


 歓喜が広がる。


 しかし。


 最初に異変に気付いたのはミリアだった。


「魔力が……消えてる?」


「何?」


 全員の身体から力が抜ける。


「あいつだ!」


 シドが叫ぶ。


「回収しやがった!」


 その瞬間。


 背後の壁が吹き飛んだ。


 黄金の炎。


 絶望的な魔力。


 最下層のドラゴンが現れた。


 だが何かがおかしい。


 魔力反応が異常だった。


 桁違いに。


 レオという貯蔵庫を丸ごと喰らったのだ。


 ドラゴンは世界最高峰の魔力量を手に入れていた。


「逃げろ!」


 遅かった。


 炎が放たれる。


 シドたちは叫ぶ暇もなかった。


 英雄と呼ばれたドラゴンの牙は。


 一人残らず消し炭になった。


 ◇


 事件は終わらなかった。


 むしろ始まりだった。


 数年後。


 ある鑑定士が追放される。


 ダンジョン最深部へ置き去り。


 モンスターに食われる。


 追放したパーティーも後日全滅。


 さらに付与師。


 料理人。


 農具強化師。


 鍵師。


 薬剤師。


 次々と追放された。


 そして全員がダンジョンで死亡する。


 不思議なことが起こる。


 彼らを食べたモンスターが異常進化し。


 追放したパーティーを襲うのだ。


 鑑定士を食べた魔物は未来予測能力を得た。


 付与師を食べた魔物は伝説級装備並みの肉体を得た。


 料理人を食べた魔物は常識外れの回復能力を獲得した。


 農具強化師を食べた魔物は周辺大地を支配した。


 鍵師を食べた魔物は結界を無視して侵入した。


 誰も気付いていなかった。


 彼らこそ本当の才能だったことを。


 ◇


 冒険者ギルドは恐怖した。


 調査結果は絶望的だった。


「追放された不遇職を食べた魔物が異常進化している」


「原因不明」


「ただし関連性は確実」


 世界中で会議が開かれた。


 そして。


 史上初の法令が制定される。


 追放禁止令。


 冒険者は能力だけを理由に仲間を見捨ててはならない。


 違反者は資格剥奪。


 重罪扱い。


 世界は喝采した。


 不遇職たちは涙を流した。


 もう捨てられない。


 もう見殺しにされない。


 平和な時代が訪れた。


 ◇


 だがそれは別の悲劇の始まりだった。


 誰も追放されなくなった。


 誰も死ななくなった。


 だから誰も気付かない。


 本当の力に。


 鑑定士が世界の真実を暴けることに。


 付与師が神を超える武器を創れることに。


 料理人が奇跡の回復食を作れることに。


 農具強化師が荒廃した土地を蘇らせることに。


 鍵師が肉体や精神に鍵をかけられることに。


 彼らは追放されない。


 だから絶望もしない。


 工夫もしない。


 覚醒もしない。


 真価へ辿り着かない。


 ◇


 そして数十年後。


 魔王が現れた。


 歴代最強。


 神々すら恐れる怪物。


 人類は戦った・・・そして敗北した。


 勇者は倒れた。英雄も倒れた。国家も滅びた。最後の砦も崩れた。


 もしあの時。


 不遇職たちが自らの可能性に気付いていたら。


 世界は救われていたのかもしれない。


 だが誰も知らない。


 知る前に全て終わった。


 燃え上がる世界を見下ろしながら魔王は笑った。


「脅威は初めから存在していた」


 その言葉通りだった。


 人類を救えた力は確かにあった。


 ただ誰も価値を理解できなかっただけだ。


 こうして世界は滅んだ。


 英雄によってではなく、無能と呼ばれた者たちの可能性を見抜けなかった愚かさによって。

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