ギルド バニッシュド
この日、一つのギルドが産声をあげた。
「お嬢様。正気ですか……?」
「当たり前じゃない。絶対にうまくいくわ」
顔を青くして口をぽかんと開ける執事に対しお嬢様は自信満々だ。
「しかし、この集まった者達は……」
屋敷の中に集まった者達を見て執事は頭を抱える。
本日、誕生したギルド故にこの者達が初期メンバーとなるのだ。
没落貴族とはいえ長い間、勉学と武術を学んだ故にそれなりに腕の立つお嬢様は良いとして。
いや、良いだろうか?
役に立たないレベルでこそないだろうが、取り立てて評価するようなものではない。
というか、彼女の最大の欠点はこの後先を考えない思い切りの良さなのだ。
ヤケクソと言い換えてもいいかもしれない。
しかし、そんな人間がまだマシという悲惨な状況から続くメンバーは――。
手先の器用さをウリにしてパーティーに潜り込み、見事仲間たちの財布を抜き取ったことで追放された【共有財産】のアレフ。
回復魔法はそれなりに使えるが一回使うたびに必ず料金を要求することを疎まれて追放された【請求書付き聖女】のミレナ。
重戦士として弱くない。むしろ強い。しかし、パーティー全体の平均レベルを考えずに強敵に突っ込み毎回負傷者を出し続けたため追放された【無意味な盾】のドグ。
弓矢の腕は正確無比。しかし生存最優先。定位置はパーティーの最後方のさらに20歩後ろ。常に「生き残るのも才能」と言い張り疎まれて追放された【あいつ居たの?】のリュン。
――とまぁ、実に濃いメンバーばかりだ。
悪い意味で。
「お嬢様。何故、ギルドを追放された者達ばかりを集めたのです……」
「あら? 知らないの?」
お嬢様は無い胸を張りながら言う。
「パーティーから追放される人ってのは大抵は素晴らしい能力を持っているのよ」
「お嬢様。それは創作物の中での話でですね……現実では追放される者達にはそれ相応の理由があるのです」
「あとはギルド名。ギルド名。何か良いのないかしら……」
執事の正論を無視してお嬢様は「あっ!」と声をあげる。
「バニッシュド! バニッシュドにしましょう!」
「異国の言葉で『追放者たち』ですか……」
ピッタリなネーミングだと思わなくもない。
しかし、こんなギルドに依頼なんて来るのだろうか。
いや、来るはずもない……。
「なんでこんなことに……」
執事は頭を抱えながら呟くばかりだ。
――ちなみにこの執事。
十年以上かけて少額ずつ金を抜き続け、誰にも気づかれていないと思っていたら旦那様にガッツリバレており遺命により「お前、横領した分は娘を守れよ。クズ野郎」とブチギレられた【横領執事】ことヴァルツである。
お嬢様率いるバニッシュドの愉快な話はまた次の機会に語るとしよう。




