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クロノバイザーの話。

作者: エンゲブラ
掲載日:2026/02/18

人類の夢のひとつ、タイムリープ。

時間を跳躍し、様々な時代を冒険する。


たとえば、理論上では、可能となった未来であろうとも、技術的なリスクから、肉体そのものの跳躍には、やはり恐ろしいものがあるだろう(二の足を踏む)。


だが、過去や未来の「映像」の撮影くらいになら、気軽にチャレンジしてもよいのではないか。それが出来れば、非常に面白いのにな、というのが、ここ数年の筆者の考えのひとつである。


この技術が確立されれば、歴史上の様々な事件も、ドラマではなく、ドキュメンタリーとして、楽しむことが可能となる。


―― そんなことを考えていた中、昨日、クロノバイザー(Chronovisor)なるものの存在を知った。


1950年代頃から、イタリアで話題となった「過去の光景を映し出すことができる」とする謎の装置。修道士で物理学者でもあった神父・エルネッティが発明し、ヴァチカンが今も秘密裏に保管しているとかなんとかな、半フォークロア装置である。


原理としては「生物が発したエネルギーは消滅せずに、空間に残り続ける」よろしく、エントロピー増大の法則を逆算し、過去をどうたらこうたら……。円周率の完全計算も未だに終わっていないのに、イチ神父がそれを解き明かし、装置を開発したというのだから、面白い。


神父も、さすがに途中からムリゲーと考えたのか、フェルミやフォン・ブラウンなど、当時最高峰であった科学者12名とも共同開発したと、後から主張したが……(「12」ってのがまた)。


この装置を使い、紀元前のローマや、ナポレオンの演説、イエス・キリストの磔刑の光景を映像として、見たと主張する神父。キリストの磔刑のシーンは、1枚の写真として、1972年に雑誌でも公開されるが、スペインの彫刻を撮影し、荒い画質に処理しただけのものであったことが後から判明し、炎上。


「エネルギーは消滅しない」理論の流用は、たしか誰かさんもやっていた気がするが、何百年、数千年前の光景を再現するために、必要な計算式とロケーションを考えると「……何言ってんだ、お前?」な話。


空間が、各ブロックごとに完全に区切られており、そのブロック内に永遠にとどまるという前提があるのであれば、或いは面白い思考実験かもしれない。だが、バタフライ・エフェクトよろしく、観測のわずかな処理違いが粒子単位のひとつでもあれば、一日前の出来事でも、おそらく完全崩壊に至るだろうから、やはりこれは現実的な話ではない(計算に必要なエネルギーコストは、いったいどれくらいになるのか)。


――これは、地球の重力圏内をひとつのハードディスクと考えたとしても、バックアップポイントも取っていない「過去の特定エリア」をピンポイントで復元するようなものなのだから、ラプラスの悪魔以外には、処理出来ない計算ともいえる(それはもはや計算とも言えないか)。



さて、ふりだしに戻る。

ここからは、未来の話。


クロノバイザーという装置にかかる計算が、未来の量子コンピュータをもってしても、おそらく不可能であることは、体感としても分かる。なので、別のアプローチを考えてみよう。未来であれば、或いは、という。


筆者が、ぱっと思いつくところでいえば、「録画装置」の各時代への転送。これにも時間の障壁が大きく立ちはだかるが「時間そのものの捉え方」を「空想理論」に置き換えるのであれば、案外、それ自体は低コストで出来るようにも映る(あくまでもクロノバイザーと比較すればの話だが)。


量子もつれ(エンタングルメント)の関係性にある、2つ以上の量子。この相方、ないしは三角関係に位置する量子が、過去・現在・未来にも、並列して存在すると仮定した場合(おー、ファンタスティック前提)。


あとは、量子テレポテーションのように、コチラ側の量子を操り、過去に録画装置を出現させ(?)、特定の事象を録画させたら、タイムカプセルのように所定の場所で眠らせ、現代で回収するという手法を採用。これなら、途中で何者かに掘り起こされていない限り、操作と同時に、地中からカプセルが見つかるといった塩梅となる。


未来からの回収の場合、装置そのものをもう一度、今の時代に転送させるための装置そのものも、量子テレポテーション時に作らねばならぬので、設計コストのケタが、何ケタ変わるか分かったものではないので、却下か(すでにケタのおかしな話ではあるが)。


問題は、タイムカプセル化し、数千年の時を経ても、データを劣化させない保存技術そのものの転送と、それに付随する「起動プログラム」の転送方法。物質をテレポートさせるだけなら、まだしも(まだしも?)、プログラムというデジタルデータの転送は、どうやってすればいいのだろうか(何の話をしているのだ、さっきから)?


そもそも、プログラムを過去や未来に、転送できるシステムが本当に構築されたら、録画装置の転送の前に、直接、その時代の人間の脳にプログラムをダウンロード(=インストール)し、歴史を操る方向で、先にフィーバーが始まるだろうから……。



―― さて、ここまでの筆者の空想に、最後までついて来られた読者は、いったいどれくらいいるだろうか。筆者も、何か良くない「未来からの中途半端なプログラム」の受信に、脳がやられており、誤作動を起こしている可能性があるが、案外、街中でひとりでぶつぶつ言っている人たちも、同様に「中途半端なプログラムによる誤作動」を起こしているという可能性もあるな、とかなんとか(ブラックなジョーク過ぎか)。


ということで、よく分からない誤作動を起こしたままの、今回の空想・妄想の話は、ここまでとする(唐突)。


お後も、よろしくないようで。



最近、SFの短編でも書こうかとネタをよく探しているのだが、よくよく考えたら、俺ド文系人間だったわ……。理系読者の多いSFジャンルではしゃぐのって、実際どうなんだろうね。

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