始まりは雨降り 〜喧嘩友達と泊まることになった夜〜
視点変更があります。都度明記してます。
(神坂視点)
いつもの様に、柏木を足がわりに連れ回した先で、雨に降られた。
駅までは少し走れば大丈夫な距離。
だけど
頑張ってセットしてるイカツイ髪型は雨に濡れてしまうと途端に垂れて威厳が無くなってしまう。
(…電車は五分後か。)
それを逃すと1時間程無駄になる。
仕方ないか、と覚悟を決めた途端視界に影が落ちた。
「!?」
慌てて顔を上げれば、上着を脱いで覆う様に頭上に掲げている柏木の顔が近くにあった。
「電車もうすぐだろ?走ろぜ?」
自然に俺にまで雨除けする姿に戸惑う。
「神坂?」
「っ、ああ!」
歩調を合わせながら駅まで走る。
軒下まではすぐだった。
上着が退けられ、柏木の身体が離れてしまう。
(…あ)
開いた空間に、寂しさを感じてしまったのは何故だろう?
改札を抜けて、ホームに降りると電車が滑り込んできた。
「うわっ!ギリギリだったな!」
濡れた上着を腕にかけて立つ柏木は半袖姿で
「寒く、ねぇ?」
らしくない気遣いの言葉が口についた。
「へ?あ、ああ、大丈夫だけど?」
やっぱびっくりされた。
「移動中に冬眠されたら困る。」
「しねぇから!」
「えっ、しねーの?」
「俺はカエルか?クマか?言っとくがカメレオンは冬眠しねぇからな!?」
「爬虫類なのに?寒いと動き鈍るだろ?」
「俺は人間だっての!」
なんだか、いつもの喧嘩らしくない、戯れるような言い合いに、でも悪くないと思ってしまった。
*(柏木視点)
今日も連れ回された先で雨に降られた。
駅は目と鼻の先。ちょいと走れば済むのに、何故か動こうとしない神坂に内心首を傾げていたら、その白くて細い指がそっと立て髪のような髪に触れる。
(あ!髪型崩れるのがいやなんだ?)
神経質だなと思いつつ、電車の時間が迫ってるから上着で屋根を作ってやれば、びっくりしたような泣きそうな顔された。
(えっ、何だよ、その顔!?)
あんまりにも普段と違いすぎて戸惑うが、なんとかギリギリ電車に乗りこむ。
電車では、口喧嘩というより戯れ合いだし、チラチラと伺う視線を感じる。
(気にしてる?あの神坂が?)
電車を降りて俺のバイクのもとへ。
動き出した車体の揺れで神坂に抱き着かれて、めちゃくちゃびっくりした。
(うお!近い!)
何故だか心臓がウルサイ。
後、へんな汗が出る。
何故か中々離れてくれない。
(動きにくいし集中できねぇ!
まさか慌ててんの見て笑ってんのか?)
「運転しにくい!」と肩越しに振り返って背後を見たら。
「ぁ…わりぃ。」
泣きそうな顔で距離を空けてから、不安そうに服を掴まれた。
(ちょ、何!?すげぇ罪悪感!え?何、怖くて、しがみついてたとかだったのか!?)
「っ、あ、いや、掴まってんのは、いいから!腰辺りを掴む感じで掴まってくれ、な?」
「…ン。」
その後はトラブルもなく、神坂のマンションへ到着。
と思ったら敷地に来た途端にゲリラ豪雨。
とりあえず神坂をエントランスで降ろす。
「これじゃ帰り無理だろ。しゃーねー、上がるまでウチに入れてやるから、バイク停めて来い。」
雨に濡れたせいで髪が下り始めてるせいか優しい神坂の提案にのり家へ。
「っくしゅん!」
エレベーターに乗り込んだら隣からクシャミ。
防水のライダース着てる俺とは違いずぶ濡れだから当然か。
神坂の家は、シンプルだった。
必要最低限しか物がない。
シャワーを勧められたが、びしょ濡れの神坂の方が先だと押し通した。
上がって来た、髪を下ろした神坂の姿にちょっと見惚れた。
恥ずかしそうに、目を逸らしながら髪を拭くのが可愛い。
下りた髪で逆に見えにくい、うなじ。
襟元が開いてて見える鎖骨…いかん、冷静になれ!
慌て風呂を借り、冷たい水で顔を洗った。
「服、置いとく」とドアの向こうから声が聞こえた。
上がってみると、世界一有名なのに仕事を選ばない子猫ちゃんが描かれているスウェットがあった。まあ、メンズだし着る。
(神坂視点)
自宅に他人がいる。
その事実に落ち着かない。
着替えには、福袋の余り物を押し付けた。
ちょっと見ものだ。
「上がったぞ、服サンキュな。」
普通に着て来たか。
む、サイズキツそうだな。
俺よりデカイとかムカつく…。
「…メシ、カップ麺しかネーから選べ。」
「あ?あー、もうそんな時間か…って、激辛ラーメン以外ねぇのかよ!」
「うどんとー、蕎麦もあるぞ?」
「あ、なら、これ2つくれ。」
「ン。湯沸かしてくる」
二人でカップ麺を啜る。
「やまねぇな」
葉柱が窓を見る。
「あー、明日まで無理だろ、泊まってけ。」
「…いいのか?」
「しゃーねーだろ」
「わりぃ」
「別に…」
*
(葉柱視点)
「…ぁ」
覇気の無い、漏れるような声に、欲が疼いた。
ベッドの使用権で押し問答した結果、勢いあまって押し倒す形になってしまった。
目を見開いて驚いていたのが、目があちこちに彷徨うようになり、逃げるように俯く。
「睨んだり蹴ったりしねぇのか?」
らしくないなと尋ねたら
「…バカっ」
拗ねるように呟かれた。
(かわいすぎるっ!)
神坂の肩口に額を付ければ、体を捩って抵抗された。
「オイ!コラ!のけっ!重い!」
「なあ?神坂…?」
「…んだよ?」
近い距離だからか、神坂の話し方がおとなしいな。
「好きだって言ったら、迷惑か?」
(神坂視点)
好き?柏木が、俺を?まさか!
「一体、何を好きなんだよ?」
「お前の事。」
「…は?」
「俺も、今気づいたんだけど、お前の事、好きなんだと思う。」
まさかの、告白。
いや、まだ冗談やふざけてる可能性がっ
「神坂っ」
いつのまにか離れた頭が、ゆっくりと顔に近づいて…
は?柏木に、チューされてんだけど!?
「ンンッ!?」
声を上げたらすぐに離れた。
「…嫌か?」
「え?…嫌では、ない。ヤバイ、マジ恥ずい。」
「あー、もう!愛しすぎてやべえ!」
柏木の頭が胸元に当たる。
「ちょっ!?いきなりそれは言いすぎだろ!」
「いや、だって、もー、お前、めっちゃかわいいんだもん。」
…『もん』て、なんだ、『もん』て。
「みさか?」
「可愛くなんか、ネーだろ?」
「は?かわいいし。今の照れてんのとか、もう、鼻血出そうなんだけど。」
「悪趣味だな、テメー。」
「お前のかわいさは俺だけ知ってりゃいいんだよ。っか他のやつに見せたくねぇ。」
「いや、知らネーし、見せネーし。」
「ん、俺の心の安寧の為にも頼む。」
「…心の安寧って」
「あー、俺、短気なのは自覚してたんだが。ごめん。」
「なんで謝った?」
「えー?だって独占欲丸出しの、嫉妬しいとか重いだろ?自分じゃ止めらんねぇし。」
独占欲?嫉妬?それは…
「嬉しい、かな?そんだけ執着してくれるなら。」
「執着じゃなくて愛って言って!って、良いのか!?ウザいって言われるかと思った。」
「…誰とも喋るな、とか部屋に監禁とかは無理だぞ?」
「いや、そこまではしない、と、思う。一緒に居たいとか、他の奴に笑うな、とかは思うけど。」
「…。思うのか。」
「人の感情なんて断定できねぇだろ?」
「…ああ、まあ、そうだな。」
「ん。で。答えは?」
「は?」
「俺はお前が好き。できればこのままイチャイチャしたい。お前は?」
「…。」
チュッ!っとリップ音を立てて触れるだけのキスを送る。
自分でも分かるくらい顔が熱い。
「否定しない地点で察しろ。…好き、だよ。」
またギュウギュウ抱きしめられた。
雨はまだ止まない。
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