ふっきれ女子の成り上がり
暗く書こうとしたら、いつの間にかコメディーになってしまっていた小説です。
他作品の息抜きに書いたので、誤字とかあったらごめんなさい。
高校からの友達、百合と一緒に配信をするようになったのは、些細な会話からだった。
「この人達みたいに撮影すれば、私達もすぐ人気者になれるんじゃない?」
教室の中で弁当を広げていると、百合がスマホを見せながら冗談っぽくそう言った。
「なれるわけない。住む世界が私達と違うんだよ、動画もあげたところで再生数が1桁いけば良い方でしょ」
「でもでも! やってみないと分からないじゃん! 今日の放課後に一本あげてみよーよ! 登録とかは私で勝手にしとくからさ」
「はいはい」
どうせやることはないだろう。
そう思って流していたのがダメだった。
「昼に今日撮影するって約束したじゃん! ほら私の家に行こ」
「…えぇ」
清楚を体現したような少女、百合。流れるような黒髪に少女らしいあどけなさがクラスの男子に人気、というが…すれ違うたびに感じる熱い視線の大半は百合の胸元へと注がれている。
見るなと言われても無理なものだろう。百合のそれは私の断崖絶壁とは違って豊満であり、思春期の男子達を悩殺すること間違いなしだ。
女子からは嫉妬、男子からはそういう目で見られる百合は本当に大変だ。学校でも学校外でも視線が外れることはない。唯一の幸いは、本人がそんなことに気づいていないことだろうか。
対して、百合に腕を引っ張られている私は月とスッポンのスッポン側だ。顔は福笑いで適当に遊べばそっくりに出来そうだし、体型も残念というより他ない。
板のように平たい胸に段だけを重ねた腹。足は歩くたびにドスドスと鳴りそうで、自分のどこを見ても好きになれないコンプレックスの塊だ。
だからこそ、幼稚園からの幼なじみとはいえ私と仲良くする百合のことをいつも不思議な生き物を見るような目で見てしまう。
(自分は利用されているのではないか?)
そう考えてしまう自分が本当に嫌だ。
きっと百合はそんなこと考えていないのに…とも言い切れないこの気持ち悪さにも。
「美月、早く入ろー」
「・・うん」
百合以外にまともな友達を持ったことのない私は、今まで一度も百合の誘いを断ったことはない。
断ったところで一人になるだけ。
だから、百合のやることなすことに何となくでついてきた。
今回もきっと、百合の一人勝ちだ。
見せられた動画の通りに振り付けを真似て、百合の横で踊る。私はずっと百合の引き立て役、それでもいい。
家にも学校にも居場所がない私が唯一人のために役に立てる。
これでいい。
そう思っていた、が。
『隣で踊っているブスなにww』
『豚が二足歩行してて草』
翌日、百合にメールで開いたURLを開くと荒れに荒れたコメント欄が目に入った。
ブス、豚、醜い。
自分でも分かっていたことを知らない人達に寄ってたかって伝えられるのはこんなに苦しいのか。
涙を堪えてながら百合のいる教室に入ると、百合を中心に賑わっていたクラスメイトが一斉に黙り込む。
「おはよう、美月! 昨日撮った動画色んな人が拡散してくれたおかげで私達大人気だよ! また、今度もよろしくね」
昨日までの清楚さはどこへやら。
あくどい笑みを浮かべて笑う彼女を見て、私は怒ることも泣くこともしなかった。
ただそのクズさに感心してしまって、目に溜めていた涙もすっかり引っ込んでしまった。
「あ、やっぱり!?」
まぁそりゃそうだよねぇ。
美人がブスに近寄るとか自分の棚上げ以外ないわ〜。
本当の美人なら自分だけで勝負しろって感じるけど、百合は周りにチヤホヤされないと気に食わないタチだから私と仲良しごっこしてたのかぁ。
それにしても幼稚園から他人を利用してやるって考えていたのかだけは聞いてみたい。その時期から私を棚上げ要因として考えていたなら天才、いや天才超えて大天才!??
「いいよ! 次はいつ撮る?」
あまりにも清々しいクズさに次の撮影をついOKしてしまった。
昨日までのおとなしいブスから一転、やかましいブスへの変貌である。周りを取り囲むクラスメイトはついに私の精神が壊れたかと勝手に憐れんでいるが、当の本人は健康そのもの。勝手に病人にしないでほしい。
「え、えっと…次の撮影は今日とか」
「OK! 今日ね!」
「う、うん…」
明らかにドン引きしている百合を横目に私は自分の机に座った。家に帰る訳ない、やることないし。
・
それからの私はダイエットを始めた。
人に流されるだけの人生はやめて、自分で考えて実行できる人生を始めようと思ったからだ。
そのためにもまずは、結果が目に見えるダイエットから始めるようにした。
自分の体調に気を遣って、無理のない数回の筋トレやプロテインを飲むことを習慣となるようにして始め、慣れてきたら筋トレの回数や食べるものは咀嚼の多いものを好んで食べるようにした。
それでもリバウンドというのは避けられないもので、好きなものを食べるチートデイを設けたら食べたものが直接体重になる私には合わなかったらしい。
頑張って落とした2キロがマイナスになってしまった。
それでも楽しく続けていると撮影の度に体型が変わってきているのか、最近は百合の美しさを讃えるコメントよりも自分へ向けられた応援が増えてきた。
そんな日々が続くと、次第に百合の撮影に誘われることは自然となくなり、自分で動画撮影をするようになった私は成り上がり系配信者として有名になった。
今配信しているコンテンツは、ダイエットと化粧である。
文字数2000超えていてビックリしました。




