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第一章 正直者の嘘つき勇者

【注意】

この作品の舞台は異世界ですが、転生ものではありません。

また、「カクヨム」「ハーメルン」でも並行して公開しています。

第一章 正直者の嘘つき勇者






「リアン・マーガレット、貴方を縦琴軍(じゅうきんぐん)の勇者とする。」

 天王城の王の間に、天王の覇気のある声が響く。王に"勇者"の称号を与えられた跪く少年と、その右後ろで顔を下にして同じように跪く少年が二人。多くの官僚と大衆に祝福されながら、彼らはたった今「縦琴軍」になったのだ。

 勇者となった少年は、ゆっくりと立ち上がり、天王に感謝の言葉を述べ始める。顔を下にして跪く少年は、これからの事について考えを巡らせていた。


 式典を終えた少年二人は、城門まで続く歓声に包まれながら、魔王城に向けて出撃していった。

「…リアン、これからどうするよ。」

「魔王に会いに行くしか、なんだろうけど…。」

 元々、"勇者"という称号はこれまでの二千三百年ほどの歴史の中で、両手で数えられるほどしか授与された人がいない。そんな称号が、田舎の村に住んでいた、魔法使いを志す少年に与えられたのだ。

 少年の名は、リアン。鮮やかに輝く茶髪に、翠玉色(エメラルドグリーン)のローブを身に纏った少し可愛さのある顔の彼は、勇者になっていなければ同い年の親友と共に、まだ四十もあるだろう人生を謳歌するはずだった。

「魔王に会うって言ったって、俺もリアンもまだ力不足だろ…。」

「ユトキなら戦えそうな気もするけどね。」

「馬鹿言うな、まだ十一の少年が、一族の王相手に何ができる。」

「それは確かに…。」

 親友の名はユトキ。リアンと同じ村の生まれで、剣士を目指す勇敢で知的な少年だ。艶のある黒髪と、剣士らしい身軽さと防御力を兼ね備えた装いの対比は、勇者の隣に置くに相応しい美少年だ。

「とりあえず、だ。これから俺達はどうしていくか決めなきゃならん。」

「僕達、ほぼ何も支給されずそのまま放り出されたような感じだしね。」

 この世界は、天の神の血が流れる「天人」と、魔の神の血が流れる「魔人」の二つの人種が存在する。彼等はお互いの文化を取り入れながら、協力して文明を築き上げてきた。

 だが、信じる神もバックボーンも違う彼等はたびたび対立した。酷いと戦いにもなった。

 そうなったときに、どちらかがどちらかに勇者を派遣して争いを収める軍が必要とされた。

天人は「縦琴軍」を、魔人は「横笛軍おうてきぐん」を作り、何か大きな争いが起きたら軍を派遣し、和解を試みた。

 そうした仕組みから、天人と魔人で対立したことは数えるほどしかなく、それに伴って派遣される軍も同じ程度の回数しか結成されなかった。

「それにしても、リアンが勇者になるなんて、思ってもいなかった…。」

「僕が一番思ってるよ、なんで僕なんかに、って。」

()()()()()()()()、ってのは違うな。リアンは勇者の器にある程度適してはいる。」

 争いもここ300年無かったが故に、この国の人類は誰も自分が生きている時代に勇者が生まれるなんて思ってもいなかった。

 それは、突然起こった。魔王が急死したのだ。後継者を明言することなく土に還っていった魔王は、自分の子供達が後継者争いで国全体を巻き込むことになるなど考えもしなかったのだ。

 王族内の争いは、いつしか軍隊同士がぶつかり合うほどの大揉めと化し、国の治安は急速に悪化していった。

 事態を重く見た天王は、縦琴軍を結成して揺れる魔王室を収めようとした。

「いやだって、僕の天才は普通に考えて最悪だよ。きっとお城に集まった人達は僕が勇者になることに賛成している人なんだろうけど、そうじゃない人が僕を否定していないとは限らない。」

「…そう自分を責めるな。俺がリアンを守るから。」

「ユトキはやっぱり頼もしいね。ユトキのそういうところを僕も見習っていかないとなあ。」

「カッコつけて言えば、『男に二言はない』からな!勇者様の護衛は俺に任せろ!」

 この世界の人類は、皆一つ天から授かった才、「天才」を持っている。俗にいう能力だ。わかりやすいところで言うと、「音楽の天才」を授かった人は、音楽の才能を持っている、といった具合のものだ。

 リアンも、例に漏れず天才を授かっている。しかし、その天才は厄介極まりなく、使いこなすのは非常に難しいものだった。

「ユトキが言うと、絶対嘘じゃないんだな、って思うな。」

「当たり前だ。嘘ほど忌むべきものはない。」

「ちょっと心に来るものがあるね。」

「あっいや、そういうことじゃないんだ…。」

「知ってるよ。ちょっとだけからかいたかった。」

「はぁ…。」

「僕も、嘘はなるべくつかないって、決めてるしね。」

 リアンの天才は、「言った嘘を真にする天才」だ。心の底から念じるように嘘を口に出すと、それがいつかの未来で真になる。自分の嘘が実現するなんて最高じゃないか、と喜んではいけない。何故なら、この嘘が「いつ真になるのか」は誰も判らないからだ。

 嘘を言った本人は、いつか必ず真実となるから問題ないが、傍から見ればとんだ法螺吹きだ。言った嘘が非現実的なら尚更だ。

「お互いに本音で話せるって、素晴らしいことだな…。リアンがいなきゃ、俺はここまで生きて来れたか怪しいくらいだ。」

 そういうユトキの天才は、「嘘を見分ける天才」。人が話した会話から、嘘である部分を見抜くことができる。これも一見すると使いやすそうな天才に思えるが、問題なのは「常時発動」であることだ。

 どんな人と会話していても―それが例え自分の親であっても、相手が嘘をついているとわかってしまう。

「僕もユトキがいなきゃここまで来れてないよ。」

「本当に、相性が悪いようで良いんだよな、俺とリアンの天才。」

 嘘をつきたくなくなる能力と、嘘をつけなくさせてしまう能力。それは、「嘘をつかない」ことに二人を運ばせた。

「僕、ユトキがいて本当によかった。安心するんだよね、なんか。」

「俺も同じだ。心が疲れない、って言うのかな。」

 二人は、そんなことを言いながら石の道を進んで街の外に進む。

「おっ、もう街の中心に来たか。」

 途中で、天都の中心街に辿り着いた。少し落ち着いていた歓声は再び大きくなり、二人の歩みを後押しした。

「嘘つきは消えろ!」

 突然、歓声の中から男の声がする。すると、ありとあらゆる路地から人が現れて、勇者めがけて走り出した。

「何だお前ら!勇者様に近づくな!」

 歓声を上げていた人々は、暴徒となり襲う人々と争い始めた。

「リアン、すぐに街を出るぞ。」

「わかった…。」

 ユトキはリアンの手を引き、人々の抗争の中を走り抜ける。暴徒は抵抗されようとも必死に勇者一行を追いかけた。

「リアン、転送魔法を使えたりしないか?」

「はあ、はあ、ちょっと待ってね、どこに行けばいい?」

「城門の近くの松の木に行けるか…?」

「わかった、行くよ!」

 リアンは自分の背丈ほどはありそうな杖を取り出し、呪文を唱えた。

「詠唱短縮、魔法陣召喚!」

 リアンとユトキは、目の前の床に展開された紫色の魔法陣に飛び込む。

「まずい!勇者が逃げるぞ!」

「テレポート!」


「リアン、打ったところ大丈夫か?」

「大丈夫…ユトキも、大丈夫?」

「大丈夫だ…これくらいなら寝れば治るさ。」

二人は、城門から150mほど離れたところに立つ松の木に寄りかかり、息を整えていた。

「というか、なんで地面に向けて出るようにしたんだ…。」

「ごめん、焦ってて…。」

 魔法陣に飛び込んだはいいものの、テレポート先に見えた景色は緑の地面。そのままひっくり返ってあちこちをぶつけた。

 よく晴れたこの日に、松の木を日陰にするには少し心許なかった。

「はあ…よいしょ、っと…。」

 ユトキは立ち上がり、大きく背伸びした。腰に携えた銀色の鞘が太陽の光を反射して白く光る。

「もう行くの?」

「行くしかない。あの感じ、ここに長くはいれないだろ。」

 ユトキはくるりと身体の向きを変え、リアンの手を取る。

「見つかる前に、行くぞ。」

リアンの目には、ユトキの強くも優しい顔が、温かく包み込む陽の光のように見えた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。零雨朝陽です。

これが初めての一次創作作品となるわけですが、正直全くと言っていいほど上手く書ける自信がありません。

というのも、全体の文字数からお察しの通り内容が思いついていません。部分部分では、構想があるのですけどね。

まあでも、終わりをどうしたいかははっきりと見えているので、そこに至るまでをどう私が気に入る感じに書けるかですね。もちろん面白さと読みさすさも忘れずに。

あとがきに需要が無いのはどこでもいっしょです。そろそろ終わりにしましょうか。

それでは。

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