表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/50

第46話「『報復者』」

――◇――◇――◇――◇――◇――◇――


 有坂式ありさかしき次郎じろうは、元は裏社会の人間だった。

 生まれたときから天涯孤独で、生みの親が分からなければ、育ての親もいない。


 もし、彼に両親がいるとなれば。

 それは、この街に他ならない。


 どこまでも歪んだ街、陣凱町じんがいちょう

 秩序は常に乱れていて、無秩序が敬礼して跋扈する。首都圏から追われたものが流れ着き、地方から逃げてきたものが滞留する。ここには法律や秩序より、生きていくために必要なものがある。


 それは、スジを通すこと。


 法律を基準としない。

 他人から言われたことに依存しない。己の信念と、真正面から現実と向き合っていく覚悟。誰かに指を刺されようとも、誰かからバカにされようとも。


 己が、己として生きていく。

 その気持ちこそ、何よりも大事だった。


 ……故に。

 ……恩義のあるものを裏切ることは、何よりも許されないことだった。


 スジを通せ。

 スジの通らない裏切りには、裏社会の『報復者』が来るぞ。奴らは尋常ではない。どんな言い訳をしようとも、どんな姑息な手で逃げようとも。裏社会に雇われた報復者たちは、絶対に裏切り者を許さない。


 有坂式次郎。

 17歳。

 職業、男子高校生にして、裏社会の元・A級スナイパー。陣凱町を裏切ったものを、どこまでも追い詰めて、その命を狩り取る。


 ……『報復者』の一人だった。



――◇――◇――◇――◇――◇――◇――



「きぃええ!」


 サーペント卿が跳躍をする。

 頭上から飛び掛かる男が構えているのは、二振りのブッシュナイフ。獣の骨すら断ち切りそうなほどの大振りの刃。それを空中で構えると、一直線に次郎に向かって襲い掛かる。


 刹那。

 刃が空気を切り裂く音が、耳鳴りのように響く。

 そんなわずかな余韻すら許されない。

 冷たく、鋭利な斬撃音は。

 次郎がわずかに体を傾けたことによって、完全に空を切る。


 一撃を躱わすにしては、あまりにも紙一重。

 次郎の首の産毛を撫でるように、必殺の一撃は悲しくも外れる。


「ちっ!」


 サーペント卿が舌打ちをする。


「(……まただ。どうして、このガキは。直前で私のナイフを避けることができる。そんな甘くはないはずだぞ、我が暗殺の刃は)」


 彼の表情が少しずつ強張っていく。

 歯ぎしりをして、唾をはいて、冷静さを欠くように息を荒くさせていく。


「どうした、蛇野郎。不意打ちができなければ、その程度の実力か?」


 わずかに呼吸を乱していたサーペント卿に向かって、次郎が揶揄うようにヤジる。


 先ほどから一方的に攻撃をされているとはいえ、次郎は一撃も受けていない。それどころか、完全に相手の攻撃を読み切って、常に紙一重で避けていた。


「くっ、この腐れジャップがぁ!」


 サーペント卿はナイフを構えると、地面を強く蹴った。


 目で追うことさえ許さない疾走。

 瞬きをする間に、サーペント卿は完全に間合いに入る。そして、次郎の顎から頭にかけて切り裂こうと、その刃を振り上げる。


「……」


 だが。

 その一撃も間一髪のところで避けられる。まるで、どこを攻撃してくるのかわかっているような動きだった。


 だからこそ、サーペント卿は。

 次郎の懐にまで潜り込んでいた。


「勝った! 死ねぇ!!」


 サーペント卿は隠していたもう一つのナイフを逆手に持つと、そのまま次郎の心臓にめがけて突き刺した―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やったか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ