表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/50

第42話「絶対にぶっ飛ばす! 地球の裏側までぶっ飛ばす!」

「あは、あははッ!!」


 笑い声を上げたのは、黒服の男だった。

 血だ。

 奴から血が出ている。

 だったら、……殺せる! 


 こんな化け物でも、殺すことができるんだ。最後の一人になった黒服は、狂気と興奮の混じった笑みを浮かべる。そして、新しいマガジンを取り出すため、腰に手を回した。


 ……違和感を感じたのは、その時だった。


 銃で撃たれた少女。

 肩と腹を撃たれて、ふらふらになっている少女。

 それなのに、どうして。

 あの少女ばけものは倒れていないんだ?


「……あぁ、やっちゃったな。これで三着目だっけ。また店長に怒られるなぁ」


 じわじわと血が漏れていく腹を抱えて、唯は悲しそうな顔になる。


 過去に彼女は、バイト先に恵まれていなかった。問題やトラブルを起こしていなくても、彼女のことを怖がって相手から離れてしまう。そんな環境にいることが辛くて、何度もバイトを変えた。そして、とうとう彼女にも安心できる場所が見つかった。


 少し年の離れた、居酒屋の店長。

 まるで台風のような彼女でも、普通の女の子として接してくれた店長には、感謝以上の気持ちを抱いていた。そんな店長に対して、彼女の胸は申し訳ない気持ちでいっぱいになっていく。


「……あまり、痛くはないんだよ。痛くはないけどさぁ。……でも、やっぱり胸は痛いや」


 腹を抱えたまま、ふらふらとしていた彼女。

 だが、不意にその動きを止めると、ゆっくりと顔をあげる。


 その濁った視線が、黒服を捉えた。

 ひっ、と男は悲鳴を上げる。


「はぁ、仕方ないか。ちゃんと謝ろう。……あいつを地球の裏側までぶっ飛ばしてから!」


 唯は血がにじむ腹を抑えたまま、居酒屋の制服のポケットをまさぐる。

 身構える男。

 だが、彼女が取り出したのは。

 黒色と緑色の缶をした炭酸飲料、……怪物モンスターの爪痕があるエナジードリンクだった。


「……やっぱり、エナドリといったらモンスターだよね。この体に悪そうな甘さが最高だよ」


 そうやって独り言を零すと。

 傷だらけの彼女は、エナジードリンクの蓋を開けて、くびくびと飲みだした。

 何が起きているのか、呆気にとられる男。

 しかし、その行動の理由は、すぐにわかることになる。


「ぷはーっ! これだよ、これ! 体に染みわたるぜ~」


 一気飲み。

 がぶがぶと口元から溢れるのを気にも留めず、彼女は黒と緑色のロング缶を一気に煽る。そして、その味を堪能するように身を震わせてると。


 彼女は言った。


「よし、治った!」


 唯が満面の笑みを取り戻していた。

 ぐるぐると肩を回して、空になったエナジードリンクを握りつぶす。

 男はまだわからない。

 腰に手を回した態勢のまま、彼女の変化の原因を探っていく。


 そして、気がつく。

 気がついてしまった。


「……まじかよ」


 傷だらけだったはずの、その体に。


 銃弾を浴びて。

 血が溢れていたはずなのに。

 その傷は、どこにもなかったのだ。


 出血も、腹に空いた穴も。

 傷口そのものがなくなっていた。


「よぉーし、ぶっ飛ばすぞーっ!」


 絶対にぶっ飛ばす! 

 何があってもぶっ飛ばす! 

 この拳に力をめい一杯込めて!

 地球の裏側までぶっ飛ばしてやるからな!


「え、ちょっ、やめー」


 焦った男が彼女を静止しようとする。

 だが、遅すぎた。

 まるで肉食獣の笑みを浮かべた唯は、目にも止まらない速さで黒服に近寄ると、そのまま力一杯に殴りつけたのだ。


 ぴぎぃ―


 男の小さな悲鳴が聞こえた気がする。

 嵐のような暴風が吹いて、格納庫の中が激しく揺れた。

 ガタガタガタ、と屋根と壁が振動する。

 そして、男はいなくなった。

 いなくなってしまった。


 その場には。

 彼が履いていた革靴だけが、寂しそうに転がっている―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エナドリは回復薬w
栄養ドリンクで超回復する少女、犠牲、出してしまいましたね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ