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1億℃の心臓  作者: ねこのけ
第三章
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第四十六話 暗躍


 4月の末のこと。

 温暖化と昨今は騒がれるけど、流石にまだ過ごしやすい気温で花粉が飛んでいる事以外何も不満は無い。俺はそんな鼻のむず痒さを感じつつ一人街中を歩く。今日は月一でやることにしたアンドロイド所有者同士の連絡会。


「こんな街でやっていいのかね」


 もちろん携帯は家に置いて来た。千春さんのアンドロイドや渚に情報を漏らさないためだが、どちらにせよこんな街だと情報機器が多すぎでバレバレに感じるが。

 そんな事を思いつつ俺が雑踏を掻き分けていると、後ろから独り言に答えるように声が聞こえてくる。


「エムブラが渚の監視しているので大丈夫ですよ。今は門浪千春の捜査で手一杯なようですから」


「・・・・黙って後ろにつかないでくれないか?びっくりするから」


「気付いていての独り言だったのかと」


 背後に立っていたのはアイ。以前顔を合わせた時以来だが、やはりアンドロイドだけなあって変わりはないらしい。


「でも街中でやる意味は無いんじゃないのか」


「遠方地に移動するリスクもありますから。リスク分散ですし、周辺の防犯カメラはこちらでなんとかするので安心を」


 それだけだと納得は出来ないけど、まぁこいつらアンドロイドでその辺りを調整してくれるなら良いか。山田・・・じゃなくてエムブラが渚の事監視しているらしいからな。


「そういえば千春さん関連で何か進展はあった?」


「まだ居場所はなんとも。ですがまたアンドロイド1体とその所有者の老婆が死にました」


「・・・2人目か」


「警察も捜査に乗り出しますね。まだ手掛かりは掴めていないようですが」


 千春さんは今どういう感情で人を殺しているのだろうか。本来根はやさしい人だったと俺は感じていたけど、もう手を染めた以上後に引けないってのだろうか。早く俺もどうにか行動を起こさないとと、焦りを感じる。


「・・・・引き続き頼む。渚に千春さんを殺されないように」


「はい、それはもちろん」


 こいつらの意図はまだ計りかねている。今の所は俺に協力してくれているから良いが、いつかの為に俺も動かないと。それにその為に他のアンドロイド所有者と接点を作ったんだからな。


「もう1組は先についている様で」


「ファミレスか」


「えぇ大人数でいても不自然ではないので。私達は外で待機しているので」


 そう言ってアイは立ち止まるので、俺は先にファミレスへと入りテーブルを見回す。集合時間より早めに来たから、社会人の亀田さん辺りが先に来たのかと思ったのだが。


「早いね。伊佐治君」


「・・・・悪いかよ」


「悪くないよ。ありがたい」


 6人掛けのテーブルで、伊佐治君の隣に座るのはそのアンドロイドのテツ。それを確認しつつ俺は伊佐治君とテツの向かいに座る。


「ここ一か月何か変わりありました?」


「特に無いですね。まぁ田舎住なこともあるので、索敵範囲に当たらないんでしょうね」


 テツはこうやってちゃんと会話をしてくれるからありがたい。所有者の伊佐治君がこんな感じだから余計にそう感じる。


「通信とかしていないですよね?」


「勿論。他アンドロイドとは連絡はしないようにしてます。所有者同士の端末で繋がっているだけですね」


 以前顔合わせした時に俺以外の三人にグループの連絡チャットを作らせたから、そのことなのだろう。俺のアカウントでそこに入ると、渚に怪しまれるから俺は入ってないが。


「でも田舎に住んでいたアンドロイドとその所有者も殺されました。警戒はもちろんですけど、出会ったらすぐに通信して逃げてください」


「すぐ来てくれるんですか?」


「俺は無理ですけどアンドロイドが」


 一応護衛に1体つけているけど奇襲でもされたら分からない。千春さんだって数で撒けているのに突っ込むような事はしないだろうし。

 すると俺らの会話に不満げに席を立つ伊佐治君が吐き捨てるように言う。


「別にどうだっていいだろ。アンドロイドがどうとかってよ、スマホも使えねぇし」


「スマホは安全の為だから我慢してください」


「・・・あっそうかよ」


 ドリンクバーだろうか。伊佐治君がテーブルを去って行ってしまう。スマホに関しては、下手に情報を渚に落とさない為なのだから我慢はして欲しいのだけど。


「堤さんも何か飲みます?」


「あ、自分で取りに行くので大丈夫です」


「そうですか」


 俺は注文履歴を確認すると人間の数である5人分が入っている。それを確認して俺が席を立つとテツが微笑んで頷く。どこまでも人当たりが良いアンドロイドだ。

 そして遅れることながら伊佐治君の後ろに並んでコップを取る。


「伊佐治君お茶なんだ」


「・・・炭酸は嫌いだからな」


「じゃあ俺はコーラにしよ」


「んで聞いたんだよお前は」


 伊佐治君はひたひたまで注いだコップを手にテーブルへと戻っていく。そしてそれと同時に入店ベルの音がし、そちらを見ると亀田さんと元気そうに手を振ってくるそのアンドロイドのメイが見える。


「何か飲みます?」


「私はコーヒーかな。メイは?」


「ウチは水でいいよー。お金勿体ないし」


 俺は進路を譲って亀田さん達にドリンクバーへと進ませる。タイプは互いに違うが、仲は良さそうに見える。そんな事を思いながら俺はテーブルへと戻る。


「集まってきましたね」


「皆さん時間にルーズじゃなくて良かったですよ」


 俺はそう言ってテツに水の入ったコップを置く。


「必要は無いですけど?」


「無いと不自然かと思って」


「そう言う事ですか。人扱いされたのかと」


 人扱いというあまりに聞き馴染みの無い言葉に引っ掛かりはしたが、亀田さんとメイが俺の隣に座りそれは一旦中断される。そしてその亀田さんはテーブルを見て、やっぱりかとため息を零して言う。


「あとあの2人か。時間通りに来るかも怪しいが」


「まだ5分前ですから。そんな焦らなくても」


「・・・君は学生だな」


 呆れたような言葉と共にコーヒーカップを口に運ぶ亀田さん。

 コーヒーの良い匂いが香ってくる。千春さんも好んで飲んでいたから、少しだけ思い出す。


「それで亀田さんは変わりないですか?」


 そう聞くと少し考え込んだ後亀田さんが明かす。


「渚と名乗るアンドロイドが接触してきた。警察関係者らしい」


 事情を知らないテツはへぇとその話を興味深く聞く。だが俺にとっては悠長に聞けるものではなく、息がつまる感覚を覚えながら問い返す。


「それでそのアンドロイドは何を・・・?」


「庇護下に入らないかとだけ。単独で行動するよりまとまって行動した方が良いだろうと」


「・・・それで亀田さんはどう回答を?」


 カタっとコーヒーカップが皿に置かれる。


「一度持ち帰らせてもらった。君らの事もあるからな」


 どの経緯で渚が亀田さんを見つけたか分からない。だが同じ県で活動をしていた以上、街中でばったり見つけたという可能性もある。


(・・・・が、渚側になっている可能性もある)


 勿論わざわざこの話をする時点でその線は薄いが、頭の片隅に入れない懸念事項ではある。だがそんな俺の思考はお見通しとばかりに亀田さんは。


「そんな怖い顔しなくても大丈夫だよ。それにお付きのアンドロイドがいるから君らからは離れられないしね」


 亀田さんは店の外を指差す。アイの隣に知らない背格好の男がいるから、あれが亀田さんについたエムブラの所のアンドロイドなのだろうか。

 だがどちらにせよ亀田さんが渚と接触したというのは喜ばしい事象ではない。


「・・・その渚ってアンドロイド。人殺した事あるので警戒しておいてください」


 俺がそう言うと亀田さんが不思議そうに首を傾げ、そのアンドロイドのメイを見る。


「アンドロイドってのは人が殺せないって聞いたが?なぁメイ?」


「そのはずですけどー?」


 やはり気付いていないらしい。エムブラの話だと全ての個体が制限解除されているらしいが、倫理観でも設定されているのだろうか。


「過去に来た衝撃で制限が解除されているっていう話です」


 メイもテツも制限は外れていて人を殺せる。だが今アンドロイドの制限が外れていると言えば、将来的にこのアンドロイドらが人を殺しかねない。だから今は渚だけだと付け加え、余計なリスクを避けるように俺はそう説明する。


「目的が見えないけどなぁ。そこの高校生はどう思う?」


「・・・高校生じゃね。伊佐治って自己紹介しただろうが」


「あぁ、ごめんね。社会に出ると会う人が多すぎてね」


 亀田さんが伊佐治君に絡むのは珍しいなと思いつつ、その二人の会話を眺める。


「で、どうなんだい?」


「俺らに手を出さなければどうでも」


「じゃあ話が来ても裏切らないってことで良いのかな?」


「勝手に解釈しとけ」


 亀田さんがこれはダメだと言いたげに両手を上げ俺を見てくる。テツは困ったように頭を抱え、早速コミュニケーションに困難が訪れていた。

 けど流石に今の会話で5分は経っていたらしく、殆ど丁度に吉岡さんと高垣さんが入店してくる。


「・・・・なんで皆さん注文してないんです?」


 高垣さんが困惑したようにコップだけの俺らのテーブルを見てそう言う。後ろには吉岡さんが隠れていて、多分一緒に来たのだろう。


「あぁただなんとなくです。ドリンクバーは注文してるのでどうぞ」


「そうですか。じゃあ愛衣行こう」


 そう言って高垣さんはアンドロイドを連れて行こうとするので俺はそれを止める。


「あ、その人数分しか注文して無いので・・・」


「?なら愛衣も良いでしょ?」


「いやだから”人”数分だと・・・」


 俺の言った意味を理解したのか、吉岡さんが少し不快そうに眉を顰める。


「愛衣が人じゃないって言いたいの?」


「そうは・・・言いませんけど、お金の事もありますし・・・・意味ないじゃないですか」


「良いよ私が出すから。愛衣行こう」


 考え方の違いか。渚と普通だった頃は俺も似たような考え方だったけど、今はアンドロイドをそういう見方は出来ない。そう思いつつも俺側も言葉選びを失敗したと、後悔したようにソファに深く座る。


「君案外ドライなんだね。アンドロイド相手に感情移入するタイプかと」


「・・・・・まぁ俺も色々あるんで」


 亀田さんは特に何も思わなかったのかそれ以上追及してこない。伊佐治君も特にノーリアクションで、吉岡さんは・・・いつも通りオドオドしてて分からないな。


 そうして向かいのテーブルに吉岡さんと高垣さんの組がコップを手に座る。結局アンドロイド2体にも飲み物を注いだらしい。さっきの会話で少し気まずくなってしまいはしたが、俺はその二人に話を振る。


「1か月何か変わりはありました?こっちは亀田さんが別のアンドロイドに接触を受けたんですけど」


 俺が少し体を乗り出して2人に聞く。吉岡さんは以前病院で会ったとはいえ、会話が苦手な人だから話してくれるだろうか。そう思っていると、高垣さんが手に持ったコップを机に置く。


「特に無しです。いつも通り」


「・・わ、たし・・・も何もないです。おに・・・亮も無いでしょ?」


 吉岡さんは亮に確認を取り、高垣さんは分かりやすく不機嫌になっていた。吉岡さん最初会った時は女子高生って感じしつつも、礼儀正しくていい人な印象だったけど、この対応は少し心に来るものがある。


「一応亀田さんに接触したアンドロイドが人を殺した事あるので気を付けてください。渚と名乗ったらしいですから覚えといて貰えると」


「はい」「は・・はい」


 詰めたく淡白に答えた高垣さんが置いたコップのストローの先端が潰れている。吉岡さんもそんな高垣さんの様子に少し怯えているようだった。


「一応こっちのアンドロイドが護衛に付きますけど、何かあったらすぐ連絡と逃亡をお願いします」


 俺は人相手じゃなく、それぞれのアドロイドである亮と愛衣へと視線をやる。するとそれぞれ分かってくれたのか頷いてくれたのは幸いだが、如何せん関係性の構築に失敗しているからどうにかしないと。そう俺がどうにか話題を変えようとした時、急に伊佐治君が話し出す。


「前会った時から思ってたンだけどさ。お前なんでアンドロイドの事兄貴って呼んでんだ?」


 多分亀田さんも同じ疑問は感じていたんだろう、その解答を求めるように吉岡さんへと視線をやっている。けど、俺はなまじ事情を知っているだけに、不用意に触れちゃいけない話題だと伊佐治君を止めにかかるが。


「ちょ、ちょっと伊佐治君・・・それは・・・」


「んだよ。気になるだろ」

 

 すると乱暴にコップを机に叩きつける音がし、その音の方を見るとそれは高垣さんの物だった、


「そういうことズケズケ聞くのどうかと思うけど?」


「なんでおめーがキレんだよ、俺はそっちのガキに聞いてんだよ」


「前からそうだけどさ、君口悪すぎ。学校で礼儀学んだら?」


 テツも伊佐治君を宥めようとするが、止まりそうにない。高垣さんの方に至っては、アンドロイドの愛衣は止める気すらないのか黙ってその経過を眺めている。


「で、お前黙ってないでどうなんだよ。ただの家族ごっこでもしてんのか?」


 伊佐治君の問いかけにも吉岡さんは黙ったまま俯く。流石にこれ以上は関係性が終わりかねないし、周りの迷惑だと俺は再び間に入ろうとする。


「言いたくない事もあるしさ。ちょっと落ち着こう?共有しなくても伊佐治君は困らないことでしょ?」


「日本語分かる?俺は気になっているから聞いてるって言ってんの」


 駄目だ。思った以上に日本語が通じない。

 そう今の会話で判断し、多少は大人な対応してくれるかと、次は高垣さんを落ち着けようと視線を向ける。


「高垣さんもね?一旦落ち着こう?店の中だし・・・・」


「あいつが突っかかってきたんだから、あっちに言いなよ」


「でも声も大きいからさ・・・・」


 あぁめんどくさい。伊佐治君は高校生だとしても滅茶苦茶だし、高垣さんも激情型というか機嫌の波が大きくて困る。

 そう困り果てていると、伊佐治君が舌打ちをし席を立つ。


「気分悪りぃ。帰る」

「あ、ちょ、ちょっと・・・・」


 さっさと帰って行ってしまう伊佐治君。俺が止めようと声を掛けても振り返らないし、アンドロイドのテツは申し訳なさそうに頭を下げ小銭を置いてそれを追いかける。


「あいつなんなの。意味わかんないんだけど」


 高垣さんが吐き捨てるようにそんな事を言うが、伊佐治君には聞こえなかったのかそのままドアのベルが鳴る。

 だが案外亀田さんも空気を読めないのかまだこの話を続けるらしかった。


「で、こんな空気になって申し訳ないが。普通に気になりはするから大丈夫なら教えて欲しいのだが」


「別になんでも━━」


 そう高垣さんが言い返そうとした時、ずっと沈黙だった吉岡さんがその高垣さんの手を掴む。


「大きい声はやめて」


 少し怯え声が震えつつも詰まらずにそう言って顔を上げる高垣さん。アンドロイドの亮が背中を撫でているのも影響しているのだろうか。


「あ、ごめん、でもあんまり触れて欲しくないんでしょ?あの話」


「・・・・で、でも仲悪いのは・・・嫌だから」


 そうして高垣さんは自身で呼吸を落ち着かせながらもゆっくりと話し出す。高垣さんは知っていた風だけど、大丈夫なのか心配そうにそれを眺める。

 でも言葉に詰まり思い出し、感情が詰まりながら話すから少しまとまりはなかったが、内容はおおよそこうだった。


 3年前。吉岡さんが小学6年だった頃に5歳差の兄が交通事故にあったと。かなり兄妹仲が良かったらしく、それで中学に上がってからも籠りっきりに。立ち直っても途中から中学に行くのはハードルが高くてそれ以来籠って気付けば中学3年

 で、そんな時に現れたのがアンドロイドの亮。名前は漫画かららしいが、最初は見た目は女性だったらしく、見た目を兄に寄せたらしい。


「え、お兄さんそんなイケメンなの?」


 話の途中だったが、俺は思わずそう突っ込んでしまった。でも事実なのか高垣さんは小さく頷いて話を続ける。


 だがその容姿が寄ったのは吉岡さんの希望では無く、アンドロイドが一番適切だと考えてそうしたらしい。どうやら未来だと同じような治療をした例があるからだと。で、吉岡さんも最初こそそれを不気味がったけど、段々と受け入れてきたと。それで見た目が同じだから偶に呼び方が被ってしまうらしい。


「へぇーじゃあメイも見た目変えれるの?」


「お望みなら出来ますよー私はこれが好きなので出来れば嫌ですけどー」


 正直兄が病気のショックでおかしくなったと思っていた俺が、一番失礼だったって言う奴なのだろう。

 そりゃ見た目が同じでよくお見舞いに行っていたなら、間違える事もあるのだろうし。


「あとで伊佐治君にも説明しないとか」


「あんな奴にはしなくても良いでしょ」


「これからも関わるんだからさ。高垣さんも落ち着いて」


 高垣さんに思いっきり睨まれる。どうやら俺の事はアンドロイドと揃って嫌いになってしまったらしい。でも吉岡さんはそれで良いらしく。


「お願い・・・します。あの人・・・怖いので」


「じゃあアンドロイド通じて伝えときます」


 あとでアイにお願いして護衛のアンドロイドに伝えれば良いか。今日は渚も監視してないらしいし、多少の通信も出来るはず。

 

 そして一旦の沈黙が流れる。気まずい事もあるが、皆何を話したらいいか分からないって感じなんだろう。だから俺が率先して口を開く。


「あ、じゃあご飯食べます・・・?」


 俺がとりあえずそう提案すると、各々メニューを開き注文していく。するとずっと吉岡さんに寄り添っていたアンドロイドの亮が発言する。


「席空きましたし移動しません?せっかく集まったんですから」

「でも1席足りなくなりません?」

「私は外のアンドロイドとちょっと話してみたいので。お二人はどうぞ」


 そう吉岡さんの背中を押し俺達の前に座らせ、渋々高垣さんと愛衣はそれに続いてこちらのテーブルに来る。アンドロイドなりの気遣いって奴なのだろうか、亮はにこやかに笑って。


「紗南はちゃんと人と話そうね。これも練習だから」


 コクっと吉岡さんが頷く。

 伊佐治君がいないから多少は何とかなるだろうかと思ったが、結局高垣さんが不機嫌なままで気まずいままその日は終わって行った。だけど俺としては次の集まりの約束は出来たから最低限と言った所だろうか。


「とりあえず伊佐治君か」


 痛み出した胃を気にしつつ俺はまた帰路につくのだった。


ーーーー

 

 同日の夜。

 自身を監視していた鬱陶しい管理者がいなくなったのを確認し、別で接近していたそのアンドロイドと会話を続けている。


「・・・・で、どういうつもり」

「ん~?まぁこっちの方が面白くなるかなって」


 渚と呼ばれる呼ばれていたアンドロイドと、もう一つの影が会話を重ねる。

 恐らくだが相手のアンドロイドの裏にいる人間が差し向けたのだろう。そう渚は予測しつつ情報を探る様に慎重に相手の言葉を聞く。


「嘘だろうが真実だろうが不快だな」

「でも事実だから。アンドロイド同士で集まっているよ、堤岳人を中心に」


 これを信じるのかは渚次第だった。けど事実としてこいつの提示した映像は確かに、堤岳人が他アンドロイドと接触しているものだった。ただの予測だがこんな事できるのは、さっきまで監視していたあの管理者しか思いつかない。


「・・・て、ことはあいつが岳人さんの管理者?」


 あの時破壊すればよかっただろうか。それとも今から破壊しに行けばいいだろうか。それはただただ渚にとって不快な行動そのものだった。

 だが、目の前の影はそれを止める。


「一応警告だけどやめときな。仲間沢山いるって話したでしょ」


「・・・・そっちの目的はなんだ。理由が見当たらない」


「だから言ったでしょ。そっちの方が面白いからって」


 理解が出来ない。それに目の前の相手にもあまり情報が無いから、それを判断できる情報も無い。だが目の前に提示された情報は嘘ではないのは分かる。


「・・・・・これからも情報は流すのか」


「嘘は言うつもりないかな。渡す情報は選ぶけど」


「そんな事出来る立場だとでも?」


 一歩距離を詰める。渚なら余程の事が無い限り、一対一では負けないからだ。だが、それを意にも返さないように軽い口調でそれは言う。


「別に良いけど敵対しても君に利は無いでしょ?情報欲しく無いの?」


 不快だが私は一度引く。一度情報の精査もしたいし、今日岳人さんらが集まったっていう情報も、私への監視が強まったタイミングと被っているからある程度信用性もある。


「余分なことするなよ」


「まぁーその言葉は頭の片隅に置いておくよ」


 そう言ってアンドロイドは引いて行く。

 だが事実渚にとってこれからの方針を変更せざる負えない事が起きたのも事実。前所有者、渚にとっては現所有者の堤岳人が、別のアンドロイドと接触している。それは全く受け入れがたい現状だった。


「早く門浪千春を殺さないといけないというのに・・・・」


 別の問題が次々と降りかかる。蒲生定範の信用の為に捜査協力はしないといけないし、岳人さんにすり寄るアンドロイドの事もある。


「でもこれも岳人さんの為」 


 そうしてまた一つの影がどこかへと消えていった。



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