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1億℃の心臓  作者: ねこのけ
第三章
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第四十一話 所有者とアンドロイド


 錆びた鉄の臭い

 どこかトタンが捲れているのかカタカタと辺りに鳴り響き、所々空いた穴から日光が差し込んでいる。そんなボロい倉庫だろうかそんな中、入り口に立つ俺へと集まる8人・・・・いや4人と4体の視線。


「えーっとお集まりいただきありがとうございます」


 俺が集めた手前黙っている訳にも行かず頭を軽く下げ、自己紹介を始める。


「堤岳人って言います。で、こっちがアンドロイドの山田で━━」

「まずなんで集めたのか教えろよ」


 俺が言い切る前に、苛立っているのか強い口調で遮ってくる男。アンドロイドの方も男らしいが、どちらも少しチャラついた格好で少し気圧される。


「え、えぇそれも説明しますから。まず互いに自己紹介しませんか?これから情報共有もしたいですし」


 俺は他は大丈夫かと視線を送る。

 見て回るが割と癖のある人が多そうというか、見覚えのある人もいる。

 俺に突っかかってきた金髪の男と似たタイプの外見のアンドロイド。真面目そうな社会人の男と明るそうなギャルっぽい女のアンドロイド。


 そしていつの日か電車の中で遭遇した女の人と女型のアンドロイド。あの時は殆ど接触できなかったが、集まってくれたって事は話す意思はあるって事で良いのだろうか。それから最後の一組は・・・・・


(あの中性的なイケメンは・・・・)


 結衣と行った時に映画館で見た人だ。かなり記憶に残る美形だったから覚えていたけど、こんな身近にアンドロイドがいたとは。てかじゃああの所有者の女の子アンドロイド相手にお兄ちゃんとか言ってたのか・・・・・まぁ中学生か高校生っぽいしそんなお年頃なのかな?


「・・・・あの・・・・なんです?」

「あ、いやなんでもないです。自己紹介お願いしても良いです?」


 まじまじと見てしまったせいか、怯えさせてしまったらしい。少し暗そうというかき弱そうな女の子だから、関わり方を気を付けないとか。


「わたっ・・・私は吉岡紗南・・・・です。で・・・おにっ・・じゃなくて亮って名前・・です」

「どうも。よろしくお願いいたします」


 傍に居るそのアンドロイドが胸に手を当て恭しくお辞儀をする。少女漫画の執事っぽい服装してるのに、名前はなんでそんな日本人というか俗っぽいんだ。そんなツッコミが出そうになるが、俺は抑え頭を下げ返し次の人に自己紹介を促す。


「私は高垣愛衣。この子が詩織で人に紹介する時は姉妹って事にしてます」

「よろしくお願いします」


 高垣さんは普通そうな人だった。ただまぁ詩織と呼ばれたアンドロイドは俺の事を警戒しているのか、視線が鋭い気がしてならない。


「じゃあ次は自分ですかね?亀田巧と言います、見ての服装の通り社会人です。で、こっちが━」


 若いわりに苦労しているのか顔に疲労の色が浮かび上がっている。そしてそんな亀田さんの腕に巻き付き、自ら自己紹介するのがあのアンドロイド。


「ウチはメイって呼んでください~。仲良く出来たらなって思ってます~」

「もっとちゃんと自己紹介してくださいって・・・事前にも言ったでしょう・・・・」

「別に良くない~?他学生さんばっかだし堅苦しくてもでしょ~」


 仲は良さそうらしい。今まで会ったアンドロイドとは毛色がだいぶ違って、反応に困るが悪い人と悪いアンドロイドでは無さそうだった。

 そして最後にと俺はそのヤンキーというか輩というか、突っかかってきた金髪の高校生ぐらいの子に視線を向ける。


「・・・ッチ、伊佐治蓮。これがテツって名前」

「どもっす!よろしくお願いします!」

「あんま馴れ馴れしくすんなよ」

「別に良くないすか!?仲良くした方が情報も入ってきますし!!」

「うるさいんだよ!お前はいつもいつも!!」


 親子みたいな関係性だろうか。友人とも違う不思議な距離感な二人だな。そう思いつつも喧嘩をされては困ると、俺はとりあえず落ち着かせるように言う。


「あ、あの落ち着いて・・・・」

「あ?」

「あ?じゃないでしょう。静かにしないとダメですよ?」


 だけどまぁ伊佐治君は・・・気難しいと言うか年相応の反骨心があるのだろう。アンドロイドの方も外見が所有者に似てはいるけど、中身はそこまででとりあえず外向的な様で安心か。


 そうとりあえずこの場のメンバーの情報を一旦覚えつつ、山田へと視線を向けるが如何せんさっきから上の空なのか要領を得ない。


「話進めるからな」

「・・・お好きにどうぞ」

「お好きにって・・・」


 文句が無いならいいが、後出しで色々言われそうで面倒だな。

 そう思いつつ、俺は4組に向かい少しだけ声を張る。


「集めた理由なんですが。あるアンドロイドが他アンドロイドを破壊して回っています。ですのでその対策と情報交換の為集めさせていただきました」


 出来るだけ簡潔に、それとあくまで千春さんじゃなくそのアンドロイドのせいだと思ってもらう様に。

 すると早速手を上げてくれたのは、スーツに身を纏った亀田さんだった。


「ならこうやって集まるのは危険では?みんな狙われている以上、情報交換はオンラインでも出来るでしょうし」

 

 真っ当な疑問。それぞれが露見するリスクはあるが、これが情報を交換する上で一番良い選択だったのも事実。それを説明するように俺は口を開く。


「そのアンドロイドというのが情報戦に長けているのでそれは無しです。逆にインターネットやアンドロイドを使う方がですから」

「・・・そのアンドロイドとは面識があるので?」

「俺は無いです。こっちの山田があるからその情報で、戦闘能力もある程度あるって話だから警戒は必要です」

「なるほど・・・・」


 アンドロイド間での通信も型式によっては盗聴されるリスクがあるらしいから、それも中々難しい。

 でも亀田さんは必要以上に疑わずにそこは建設的にいってくれるのはありがたい、そう思いかけたのだが、今度は女二人組の詩織だっけか、そのアンドロイドが疑問を呈する。


「その前に良いです?」

「なんです?答えられる範囲なら答えますよ」


 嫌な予感がしつつも俺は笑顔を絶やさないようにするが、それもすぐに引きつる。


「以前は違うアンドロイドと一緒にいましたよね?それはどこに?」


 一斉に全員の視線が俺の返答を待つように集まってくる。

 俺はどう説明したものか迷うが、正直に言うのはこの関係性が薄い段階では良くないと判断する。


「実はそのアンドロイドが破壊されまして・・・・で、この山田に俺は助けて貰ってっていう流れで」

「・・・・なるほど、それはいつ頃に?」

「1月です。他にも破壊されたアンドロイドが2月に出ているので月1のペースですかね」


 自分でもうまく言い訳は出来たと思う。これなら俺が千春さんとそのアンドロイドの犯罪を知っている理由にもなるし、もし渚とこの人らが接触しても破壊されたと勘違いしていたで通せる。


 そう俺と詩織が会話をしていると、そこに割り込んでくるのは人では無くアンドロイドらしく、執事の格好をした・・・亮だっけか、それが手を上げる。


「これだけアンドロイドがいれば破壊出来ないんです?相手は1体なんでしょう?」

「そもそも俺らはあちらの居場所を知りません。だから相互に位置情報を共有して何かあった時守り合えるようにしたいんです」

「じゃあ今日はその為の顔合わせと?」

「まぁそんなとこです」

 

 千春さん達は探そうと思えばできる。けどそれをしたらこの人らと千春さんが戦って死人が出る可能性が大いにあってしまう。なら千春さんとの戦闘を避けつつ、千春さんから手を出せない様、こっちが守りを固めてしまえば死人は出ないはず。こんな敵と知り合いなんて事言ったら信用されないから口を噤むのだけど。


「他に疑問はあります?」

「え、でもその破壊して回ってるアンドロイドってのが、君らって可能性は?」

「ならこんな説明せずに爆破でもなんでもして殺してますよ」


 亀田さんのギャルアンドロイドが疑ってきたけど、一応の確認って感じだろうか。ギャルっぽいとどうにも話しづらくて困る、亀田さんの性癖だろうか。


「伊佐治君は大丈夫ですか?」

「あ?」

「何か不明な点とかありますか?」


 一番不満というか反発的な人。アンドロイドは話が分かりそうだけど、人同士でもコミュニケーションが取れなければどうにもならない。


「俺は1人でなんとかするから良い。テツ、行くぞ」


 そう言ってこの場を去ろうとしてしまう伊佐治君。だが相変わらずアンドロイドのテツは言う事を聞く気は無いのか、それを止める。


「蓮君。ちょっとはこらえ性を付けないとダメですよ」

「だから君付けすんなって!あと離せ!!!」


 テツとかいうアンドロイド所有者の命令を割と無視しているけど、どういう理屈なんだろうか。もしかしたらこいつも勝手に動けるとなると、多少は警戒が必要になってしまうが。


「すみませんね~反抗期なもので~」


 俺はそんな言葉に乾いた笑いでしか反応出来なかったが、ボソッとあの詩織とかいうアンドロイドが零す。


「なんか田舎のヤンキーって感じですね」

「ちょ、ちょっと詩織!変な事言わないでって!!」


 その所有者の高垣さんが制止するが、その声が大きくて伊佐治さんの血走った目が向く。


「お前今なんっつったッ!?」

「協調性は社会に出た時必要になりますよ?」

「お前らと仲良くする気がねぇって話してんだよ!!」


 今度は亀田さんが伊佐治君に向かってまた要らない事を言う。寺岡さんはその性格のせいかずっと黙っているし、いきなりこれ人間同士が大丈夫だろうか。

 そう不安になりつつも俺は、これ以上関係悪化させるわけにはと口を挟む。


「あの命が掛かってますから・・・・・仲良くしましょう?それにここにいる皆さんこの辺りの出身の同郷なんですから・・・・」


 と言っても県が隣とかそのレベルだけど、仲良くして欲しいのは事実。ここで信頼関係を築いて自己防衛してくれる分には、俺の負担も減って助かるから。


 だけど俺の意志を別に暴れようとするのが伊佐治君だった。


「こんな得体のしれない奴ら信用できないだろ、俺は帰・・・・・・あ?なんだお前・・・・」

「そんな怖がらなくて大丈夫だからね~」


 甘い声で伊佐治君を抱き寄せるのが亀田さんのアンドロイドのメイだった。何をしているのかと思うが、頭を撫でてまるで子供をあやすようだった。

 ちょっと羨ましく感じたが、伊佐治君も流石に照れているのか恥ずかしそうに離れようとする。


「離せってッ!!!」

「大丈夫だからね~私保育用のアンドロイドだったから安心してね~」


 伊佐治君が埋もれていき、それと一緒にさっきまで騒いでいた声が沈静化していく。亀田さんの方を見るが、何とも言えない表情をしているし、アンドロイドのテツを見れば微笑ましそうに笑っている。女性陣の方は・・・割と引いているっぽいな、伊佐治君可哀そうに。


 まぁなにはともあれ場は落ち着いたとまだ伝える事があると、話を続ける。


「で、これから月1かそれ以上のペースで顔を合わせたいと思います。連携を取る為なのと、定期連絡の為ですね」

「盗聴がどうのって気にするならこうやって会うのも大差なく危ないと思うんだけど?」


 ずっと俺に懐疑的な視線を向けるアンドロイドの詩織が発言する。


「だからスマホは置いてくるようにお願いしました。周辺のカメラも映像は差し替えてますし、そもそも毎回集合する場所は変えるので」

「でもドライブレコーダーとか一般人とかのスマホのリスクもあるのでは?」

「どちらにせよ今現在であちらに発見されアンドロイドが破壊され、所有者が殺された例がある以上、どうやってもバレる物はバレます。つまりリスクを言うなら日常生活を送るだけでもありますからね」

「・・・・・なら見つかった時に相互で守れるようにした方がまだ良いと」

「そゆことです」


 あとは疑問は無いかと吉岡さんとそのアンドロイドである亮へと視線を向けるが、吉岡さんは亮の後ろに隠れてしまった。


「何もないでそうです」

「分かりました。他に疑問や懸念がある人は?」


 沈黙。伊佐治君は何か言いたげだったけどメイに抑えられて、何か言葉を発することは出来ないでいた。


「じゃ、自分から伝える事は以上です。あとは雑談と言ったらあれですけど、互いに知ってる事を交換しましょうか」


 と言っても山田がこっちにいる以上アンドロイドの知識に関して俺らが負けているとは考えずらい。これはただ単に交流を図って仲良くしてもらうための口実。なんであいつの為に命を張らないといけないんだ、そんなこと思われていざという時連携出来ないとか目も当てられないしな。


「あ、じゃあ自分からいいですかね?」


 そう所有者を取り押さえられているテツから会話は始まって行ったのだった。

 

 

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