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1億℃の心臓  作者: ねこのけ
第二章
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第二十七話 交錯


 もう世間はクリスマスを忘れて年末ムードが漂う。スーパーに行けば餅だの栗きんとんだのが並んでいるが、もう親戚もいない今となっては懐かしい物でしかない。


「太郎ってさ。案外高性能だったりする?」


 火曜の朝。しばらく忙しかった中やっと休日を獲得し、ゆったりとした時間をコーヒーと朝刊で過ごす。


「さぁ、あちらも警戒が薄いようでしたからなんとも」


「・・・・そうは言ってもこんなにあっさりねぇ」


 朝刊の一面を飾るのは警察庁長官が死体になって発見されたと、それでニュース番組も大騒ぎ。まぁ当たり前の反応ではあるけど、自分がいかに大きなことをしたか改めて実感する。


「足は付いてないよね」

「まだ捜査官の間で相野様の事は一度も議題に上がってないです」


 太郎は自分では普通の型落ちアンドロイドだって言っているけど、ここまで国家権力に喧嘩を売っても隠し通せるだけの力がある。それだけ未来が進んでいるのかもしれないけど、どちらにせよ私にとっても都合が良いか。


「にしてもどうやってやったの?」

「普通にですよ。彼がクリスマスに家族サービスする人間で多少やりやすかったぐらいで」

「・・・・へぇ」

 

 クリスマスイヴの日に私達は動いた。といっても私が東京に行けばそれだけ証拠を隠す労力がかかるから、今回は太郎に一任したのだけど。

 

 そして少しだけその日の事を思い出す。


「じゃあリストの内それなりに社会的影響の大きい人物をお願い。期限は年末までに、で失敗リスクが少しでもあれば即刻中止をすること」


「・・・・・誰でも良いのですか」


 少しの実験も兼ねての行動だった。

 まず一つは千春君と接触した男がこの事件に対してどう反応するのかを見る。そして千春君自体もどうするのか、心の行動の変化があるのかを見る。


 そして一番はこの太郎の思考パターンを探る事だった。


「そこは君に任せるよ。君の思考でより未来がより良くなる選択肢をしてね」


「・・・・・・殺さないと言う選択肢は」


「失敗リスクが無い限り有り得ないね」


 これからも行動を共にする以上このアンドロイドの事を知らねばならない。それにこの殺人行為自体、私と同様好ましく思っていないのは事実なのだから。


「・・・・・・なんか慣れてきてるな」


 記憶の中から思考を戻し、コーヒーに口を付ける。

 もう4人目、まだ4人目。この数だけで人は人を殺す事に対する抵抗が薄まっていくものなのか。そう自分が少し怖くなりつつも、私は当初の目的をだと、相変わらずこたつに入らずただ立つ太郎を見る。


「なんで警察庁長官だったの?大分すごい所いったけど」


 すると太郎がおくびもせず言う。


「その方が警察が本気になって相野さんを捜索してくれると」


「・・・・・へぇ、それは君の中では命令違反じゃないのかい?」

 

 確か私は私の不利益になり得る行動をするなと太郎に命令したはず。でもこれも太郎なりの冗談ではあったのか分からないが、本当の理由を話し出す。


「ですが相野様の提示した条件に合致するのが警察庁長官しかいなかったのも事実です」


「なるほどねぇ」


 まぁリストアップされた人物どれも大物だったから、そうなるのも仕方ないか。

 それに今の太郎の言葉を信じるなら、二つの命令が背反した時はより新しい命令が優先される可能性もあるのか。ならこれからはより慎重にしてかないとか。


「ま、しばらくは様子見かな。捜査本部も人が増えたようだし」

「・・・どうやらかなり大規模になるようですからね」


 太郎に捜査官やその周囲を一応探らせ続けているが、余程今回の件が効いたのかかなり大規模に警察組織が動いているらしい。まぁ長官を殺されでもしたら沽券に関わるから、当たり前なのだろうけど。


「あ、で、千春君の方はどう?」

「・・・・まぁ特に変わらずと言うのが適切でしょうね」


 千春君の元に現れた堤岳人と言う男。どうやら彼もアンドロイド所有者らしいが、特段それを使って暴れている様子も無い。でも今の私には彼によって千春君の心境の変化をしてくれることを、願う事しかできない・・・・・・。


「なんか違うな」

「?何がです?」


 どうもここ最近千春君の事を義務的に心配しているような気がしてならない。堤君がいるからだろうか。

 でも誰を殺すか、どうやって殺すか、どうやって警察をかく乱するのかって事には仕事で疲れ切った日でも必死に考えている、いや正直に言えば少し楽しんでいる部分もある。


「手段の目的化か」


 どこかこの歳で起きる自分の変化に少しだけ恐怖を覚える。こんな私では本当に門浪の墓参りに行けなくなりそうか。

 

 でも事実千春君は私は死なせたくない。その私の感情に変化は無いし、どちらにせよやる事は変わらない。私が人殺しをどうとも思わなくとも、太郎と出会った時の様に罪悪感を抱こうとも、私は選択の結果人を殺し続けなければいけない。


「・・・・・よし。墓参りいくか」


 私のまだ善良だと、人の為にと、そう思える心がある内に。


「独り言ですか」

「君も一緒だよ何言ってんの」


 そうして私達の年末の予定が一つ埋まったのだった。


ーーーーー


「警察本部の刑事部長が来るってさ」

「昨日の件?早くない?」

「いやまぁ長官がね、もう待ってられないって事なのかね」


 朝の警察署。色んな会話や情報が交錯する。

 そして僕はそんな中アンドロイドと共に廊下を進む。急に人が集まったせいか会議室が乱雑になりながら、そして外にはちらほらとマスコミの連中が見える。


「どこから聞きつけたんだろうねぇ」

「想定以上に早く動きますね」

「ん?あぁマスコミね、絶対誰かが━━」

「じゃなくて犯人の方です」


 あぁそっちか。

 まぁあっちもアンドロイドがいる以上、そう簡単に尻尾は出さない。でもこっちだって長官が殺された以上、下手に出し惜しみだってしない。人海戦術でどうにか手がかりを見つけに来るだろう。


「ま、この方が僕の責任減って動きやすくて良いや」

「貴方の上官が来るんでしたっけ」

「そ、僕が将来継ぐポストの人ね」


 捜査員が増え続ける現状だからこそ、このアンドロイドが違和感を持たれず僕の傍に置けている。と言いたいのだが、どうにもこいつは強情らしく。


「髪ぐらい銀髪やめてくれない?」

「無理です。アイデンティティです」

「アンドロイドの癖に何言ってんだよ」


 キッと睨んでくるアンドロイド。


「そんな睨むなよ。別におかしな事言って無いだろ」


 周りを見れば確実に視線を集めているのは事実。何も言ってこないのは、僕の立場と外様で触れづらいから。いつかボロがでかねないからやめて欲しい。まぁ本人曰く上手く書類上で誤魔化しているらしいけど、普通に公文書偽造罪だし、警察の前でやるなよ。


 そんな会話をしつつ僕たちは会議室に入り一連の事を終え、椅子へと腰掛ける。


「あー早く出世してぇ」

「その血縁でキャリア組なら早いのでは?」

「もっとだよ。もっと早く全体で人を動かしてぇの」


 そんな会話を二人でしていると、確かこの署の・・・・刑事課の西田さんと高崎さんだっけか。が何か紙束を持って現れる。


「これ以前報告した物ですけど・・・」

「ん?・・・・あぁ、ありがとね高崎さん」


 そういえばそうだ。この人らが堤岳人の事調べてたから、一応僕に通すよう言っておいたんだった。

 そう思い出しながらとりあえずパラパラと全体を見通す。


「・・・・・うん、じゃあこれこっちで扱わせてもらって良いです?」

「あ、え・・っと」


 高崎さんが上司の西田さんに確認を取るような視線を向ける。すると西田さんはなんてこと無さそうに言う。


「分かりました。では持ち場に戻るので」


 そう言ってあっさりと引いてくれた。僕としては助かるが、手柄泥棒とか思われてたら嫌だな。そんな事を思いつつ、再び書類に目線を落とす。


「・・・・このクレーターどう思う?」


 僕は小声で隣のアンドロイドに話しかける。この報告書によれば、カメラを確認してもその瞬間は抑えられなかったとの事だけども。


「大方アンドロイドでしょうね。映像も加工されたものかと」

「・・・だよねぇ。堤のか?」

「・・・・確定的にはなんとも。ですが・・・・」


 昨日にもう会う事はないみたいな事彼に言ったばかりだから、また事情聴取に行くのダサいから関与してないでくれ。そう思うのだがこのアンドロイドは。


「実は私の持つ未来のデータベースと一致しない死者が1週間前出たんですよね。それもこのクレーターが出来た現場付近でその次の日に」

 

 つまり堤かそのアンドロイドが人を殺したって事か。そう僕が視線を向けると、どうやらそれはまだ早計な考えらしくアンドロイドが言う。


「ですが別個体の可能性が高いです。それこそ堤所有のアンドロイドがこんな分かりやすい証拠を残す訳ありませんし」

「んだよ。それ先言えよ」

「私は一度も断定的に言ってませんが」

「可愛げないなお前も」


 まぁなら本件には関係ない・・・いやまぁ本件の犯人がやった可能性も無きにしも非ずか。でもそれは僕と同じようにその可能性はアンドロイドも感じているらしく。


「一応私の方でも周辺を調べます。可能性はあります」

「そうか。じゃあ任せるわ」


 こういう所は話が早くて助かる。大体僕が言わなくても同じ結論に達していてくれるから、一々口頭で伝達する手間が省ける。それにアンドロイドの件はアンドロイドに任せた方が早い、それにどうせこいつ教えてくれないし手柄と犯人だけ貰えればだ。


「こんなバカげた騒ぎいい加減終わらせないとだしな」


 アンドロイドとかいう意味の分からない存在の介在する事件。正直人間の僕が関与できる部分は少ないし、そのくせ人は大勢死んでいく。


「義賊ぶってんのが気に食わねぇしな」

「そうやって動機を断定するのは視野を狭くしますよ」

「ならもっと視野を広げるために貴女の情報を開示してくれませんかね?」

「・・・・・」


 また無視。もういっその事こいつ捕まえて解体させた方が、この国の為になるんじゃないか。今の所捜査には協力的だから良いけども、こいつが暴走するリスクだってある。


(てかなんで僕を選んだんだか)


 自称ではあるけど自分の意思で過去に来たらしいこのアンドロイド。だがそれなら政治家とか影響の大きい人物に行きそうなものを、いくら家柄が良くて顔が良くて頭の良いとしても僕を選ぶのか。


「ま、いっか」


 どうせいつか分かるかもしれないしな。それに今はこの件を片付けるのを優先だ。これからもアンドロイドがらみの事件は起こるかもしれないし、今のうちに情報は集めて損はない。


 そうして捜査は進んだような進んでいないような、霧を掴むような感覚の中進んで行くのだった。

 


 

ちょっと年末年始は投稿時間がバラけるかもしれないです。極力16時付近には投稿するようにはします。

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