6話 「半身勇者」
【前書き】
物語はついに“神の領域”へ突入。
時間停止という神の最終兵器が放たれ、元勇者は覚醒寸前の暴走状態に。
そして今回、ついに“巻き込まれ系主人公”が……覚醒します。
その理由はまさかの、“下半身の危機”!?
混沌バトルと爆誕ギャグが入り乱れる第6話。
ぜひ、最後までお楽しみください!
「《神気解放・第二段階》──開始する」
神の声と共に、空が捻じれ、世界が再び変質した。
天の色が反転し、魔素が逆流する。
空中には、黄金の環が幾重にも重なりながら、異形の術式を描いていた。
「ちょ、待て待て待て!! 前のが第一段階だったのかよ!?」
元勇者が顔を歪めながら叫ぶ。
「マジでやべぇって、あれぇ……!」
タンクが素直に怯え、賢者が眉をひそめて呟く。
「……あの神気、惑星規模じゃ……」
『第二段階は創造の領域に達する。我を止める術などない』
神の指先が円環を撫でた瞬間、空が断裂した。
その圧倒的な魔力に、世界中の鳥が空から落ち、風すら止まった。
「お、おかしいだろこの世界観!! これ“異世界ギャグ”だったよな!?」
金髪少女が半泣きで走り回る。
巻き込まれた通行人のはずが、もはや“運命の被害者”と化していた。
「は、はやく……どっか、逃げられる場所……」
足をもつれさせ、瓦礫に引っかかって倒れ込む。
「くそっ!」
それを見て、俺――青年は反射的に駆け出していた。
背後では、神の術式が稼働し始めている。
巨大な魔法陣から、光の槍のような魔力が降り注ぐ。
「危ないっ!」
少女の腕を掴み、引きずり出す。
その瞬間――
「……な、なんで……あなたの手、光って……?」
「わかんねぇ……けど、今のって……」
俺の右手が、淡く青白い光を帯びていた。
まるで、神の干渉を拒絶するかのように。
そのとき、空の彼方で神がこちらを振り返った。
『……やはり……お前が“次の勇者候補”かァァァ!!』
「は? マジかよ俺!?」
「えっ、私じゃなくて!? いや、あなたの手なんか光ってたけど!!」
『お前は光っておらぬ。勇者ではない』
「ですよねーッ!!」
少女が絶叫したその刹那――
空から、巨大な瓦礫が音を置いてきぼりにして落ちてきた。
それは、ピンポイントで俺の下半身めがけて落ちてくる。
「あ゛っ……!?」
脳内に、一瞬で無限の未来が広がった。
(子ども……名前は陽翔にしようと思ってたのに……!)
(娘も……あったかい家庭も……温泉旅行も……全部……!!)
(俺の……未来がァァァァァァ!!!)
次の瞬間。
覚醒した。
理屈も理性も関係ない。
生命の危機ではなく、“種の存続”の危機によって目覚めた力。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
青い閃光が走り、瓦礫は空中で粉砕された。
その衝撃で、地面が陥没し、神の魔法陣さえ一時的に揺らぐ。
『なっ……!? この魔力は……!?』
神が、初めて動揺した。
少女は震える声で呟いた。
「……あの……ありがとう……でも、叫びが本気すぎて引いたんですけど……」
「……俺の未来の“可能性”が死ぬとこだったんだよ……」
「え、怖ッ!?」
一方その頃、元勇者は神の背後を取っていた。
「よそ見してんじゃねぇぞ神様ァァァ!!」
『チッ……貴様ら、やはり厄介な──』
神の声が、今度は少しだけ“人間くさく”聞こえた気がした。
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第6話では、青年がついに覚醒!
その理由が「子孫が作れなくなる危機」という、あまりにも人間的すぎる本能覚醒でした。
ギャグとシリアスが共存するこの作品らしさを、改めてブチ込みました。
読者の皆さんが少しでも笑ってくれたら嬉しいです!
次回はいよいよ、「青年の真価」と「勇者 vs 神」の第二ラウンドが本格化します。
シリアスとギャグを行ったり来たりしながら、全力で爆走していきますので、
どうか引き続き、応援よろしくお願いいたします!