第4話 決別の叫び!元勇者、神の正義を斬る
元勇者の“本音”が少しずつ浮かび上がります。
神との対話が激しさを増し、戦いの火種は新たな局面へ――
青年の視点も、今話から少しずつ変わっていきます。
爆発の轟音が鳴り響く。
元勇者と神、そして騒ぎまくる仲間たちによって、街はもはや原型をとどめていなかった。
瓦礫の山。焦げた道路。浮かぶ魔法陣。空を裂くスキルの光。
「ねぇ! ちょっと! あんたら本当に勇者パーティなの!?」
通行人らしき誰かの絶叫が聞こえたが、全員スルーだった。
「さすがに派手すぎるぞお前らァァァァ!!」
そう叫んだのは、イケメンタンク。彼自身もかなりの範囲破壊魔法をぶっ放しているので説得力は皆無だった。
「文句あるなら喧嘩売るなよクソガキィィ!!」
「うるせぇロリババァァ!! 歳で数えたら俺より200年上だろが!!」
暴れる2人を背景に、元勇者と神は静かに対峙していた。
『……貴様の言い分は理解した。しかしな、小童。転生は“必要”なのだ』
「“必要”? ああ、そりゃあお前ら“上の存在”から見りゃそうなんだろうよ。消耗品として見てるならな」
『それは違う。ワシは……世界を守るために、勇者を作ってきたのだ』
「だったらさ……」
元勇者は拳を握りしめ、唇を噛んだ。
「どうして、全部終わったあとに誰も俺を見てくれなかったんだよ……!」
その言葉は、まるで絞り出すようだった。
『……』
「パーティの皆は勝手に離れてった。好いてた子たちは全員タンクに惚れてて、俺は英雄扱いされながら“何も持ってない”まま放り出されたんだぞ……!」
その叫びは、冗談めいていた。
けれど、それを支えていたのは、確かに“本物の痛み”だった。
『お前の人生を否定するつもりはない。だがな、それでも新たな脅威には新たな勇者が必要なのだ』
「だったら俺が行くよ!」
『貴様はもう、人間としての限界を超えている。次の勇者には“運命の導き”が必要なのだ』
「黙れよ、神様」
その一言には、決定的な怒りが込められていた。
「運命? 都合よく選んで、使い捨てにして、“次”へ回すって……それを、救いって呼ぶのかよ!」
『それでも、誰かがやらねばならんのだ。世界を守るためには、誰かが犠牲になるしか――』
「だったら! その“誰か”は俺でいいだろォォォ!!!」
元勇者の咆哮が、空を裂いた。
瞬間、魔力が暴走する。足元から天へ向かって蒼白の稲光が駆け昇り、地が揺れる。
「うわっ!? な、なにこの気配!? 賢者、こいつマジで怒ってんぞ!?」
「うむ……あれは“理性が飛ぶ一歩手前”じゃの」
タンクと賢者が並んで距離を取る中、元勇者は一歩、神へとにじり寄った。
「俺の人生を勝手に決めるな。俺は……もう、“神の正義”に付き合う気はねぇよ」
神は沈黙した。
そして、重々しく右手を掲げる。
『ならば貴様は、神の敵だ。排除対象とする』
「上等だよ。神様」
今にも暴発しそうな力を纏いながら、元勇者が笑った。
その笑顔は、どこまでも苦く、どこまでも強かった。
今回はギャグ少なめ、元勇者の“本音”と“怒り”にフォーカスしました。
ただのコメディ作品ではない、その片鱗を少しだけ見せたつもりです。
次回、第5話ではついに神が“真の力”を発動しようとします。
どうかお楽しみに