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『転生なんてさせねぇ!』〜転生させたくない元勇者と転生をさせたい神の戦い〜  作者: 深森あい


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第36話:過去を見つめる時


夜の荒野に吹く風が冷たく肌を刺した。

歩みを止め、俺は月の光を仰ぐ。


「……修行も大事だが、焦りすぎている。一旦、自分を見つめ直す時間が必要だな」


胸の奥では、今すぐにでも力を求めて駆け出したい衝動が燻っている。

だが、その衝動に飲まれたままでは、また何も守れない。


俺は拳を握り、ゆっくりと呟いた。


「俺は――何故、自ら“例外”になったのか」


秩序神の理に従えば、勇者は役目を終えた時点で転生し、その生を閉じる。

それが世界の筋書き。誰も疑うことのない、決められた流れ。


けれど俺は転生を拒み、現世に戻り、神々の秩序を乱した。

変態神の乱入に乗じて、抗い続けた。

……結果、俺は神々から見ても“例外”の存在になった。


「その初心を、忘れては行けない」


あの時、俺は確かに選んだ。

仲間を失い、好いた女が全員イケメンタンクに持っていかれ、空虚な英雄の座だけを残されても――

それでも、誰かに同じ思いをさせたくなくて。


だから俺は、抗ったのだ。



---



目を閉じると、戦場の記憶が浮かぶ。

血と鉄の匂い。

燃え落ちる街並み。

そして――

「勇者様……お願いです、どうか……」

か細い声を最後に途切れていった、仲間の命。


英雄と呼ばれながら、俺は何一つ守れなかった。


唇を噛み、握った拳が震える。


「……俺が“例外”である意味を、見つけなきゃならねぇ」



---



夜空に浮かぶ月が、無言で俺を見下ろしていた。

秩序神の気配が、遠くから静かに注がれている。

だが俺はその眼差しを真っ直ぐに受け止め、深く息を吐いた。


「自分の過去と向き合う。そこから始めよう」


焦りを鎮めるように、自分へ言い聞かせる。

修行はその後だ。

まずは“俺がなぜ例外になったのか”を知るために。

次回、第38話「勇者の記憶」

元勇者が振り返るのは、栄光と苦悩、そして奪われた想い――過去と対峙する回想編へ。

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