第35話:裸勇者の冒険は続く、そして――
多少無理矢理感はありますが、やっと本編に戻れますね。
「……ふぅ、終わった……!」
畑の前で、俺は全力で息を切らしていた。
全裸でウサギの群れを追い払う――そんな辱めの仕事も、ようやく終わったのだ。
子どもたちが目を輝かせて指をさす。
「お母さん、あの人ほんとに裸で戦ってる!」
「すごい……服がなくても強いんだ!」
「違うからァァァ!!!」俺は即座に全力で否定する。
村人たちは拍手しながら口々に言う。
「変態勇者様、ありがとうございます!」
「裸のままで戦うなんて……まさに神の御業!」
「メタモルフォス様のお告げは本当だったんだ!」
「やめろォォ!! だから変態違うって言ってんだろォォ!!!」
羞恥で頭が爆発しそうだった。
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報酬の袋を受け取った俺は、勢いよく中を覗く。
……中身は、ほんのわずかな銅貨数枚。
「え、これだけ!? 服買えるどころか、下着すら無理だろォォ!!!」
タンクが爆笑しながら背中を叩く。
「ははっ、これぞ冒険の現実! 勇者でも変態でも財布は軽い!」
賢者が涼しい顔で頷く。
「まぁ、初仕事とは得てしてこういうものじゃ。金が欲しければもっと危険な依頼を受けるがよい」
「いやいやいや! 危険な依頼を裸で受けたら死ぬんだよォォ!!!」
村人たちがさらに盛り上がる。
「やはり勇者様はどんな状況でも戦うのだ!」
「うちの息子も将来は裸で戦わせたい!」
「教育方針おかしいだろォォ!!!」
俺は全力で叫んだ。
「くっそォォ!! 裸変態勇者の冒険は続くゥゥ!!!」
「(……ついに変態なのを認めた?!)」
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◆
静かな夜。
――場面は変わり、元勇者がひとり、月明かりに照らされた街を歩いていた。
……いや、瓦礫だったはずの街は、今や何事もなかったかのように元通りになっている。
崩れ落ちた建物は立ち直り、人々は笑顔を取り戻し、死んだはずの者たちまでもが日常を過ごしていた。
「……秩序神が動いたか」
俺は低く呟いた。
本来なら、秩序神の手で“転生”という形を取るはずだった。
勇者候補が選ばれるのは、世界の理――秩序を保つための当然の流れ。
だが、変態神の乱入と、俺の妨害によって流れは歪んだ。
その結果、奴は“転移”という歪んだ方法であの世界に送り込まれ、この世界から存在ごと消された。
あのガキ――光が勇者候補であること自体は、最初から決まっていた。
だが、あんな形で送り込まれるなんて……例外中の例外だ。
俺は空を仰いだ。
秩序を掲げる神の気配が、確かにそこに漂っている。
市民たちは何も覚えていない。
秩序神が時間を巻き戻し、犠牲を“なかったこと”にしたからだ。
けれど俺だけは、すべてを覚えている。
「……もう誰にも、あんな思いはさせねぇ」
拳を握りしめる。
「戦場で命を使い潰されるのも、秩序の名で犠牲を押しつけられるのも……
あと……好いた女が全員イケメンタンクに喰われていく、あの苦しみだけは絶対に受けさせたくない」
かつての傷が胸に疼く。
英雄と呼ばれながら、俺は何も守れなかった。
「修行だ。俺が強くならなきゃ、止められねぇ。
次に神が“秩序”の名のもとに勇者を生もうとしたとき――必ず叩き潰す」
夜の静寂を裂くように、元勇者の誓いだけが響いた。
次回、第36話「修行編:神に抗う力を求めて」
ギャグとシリアスが交錯する物語は、再び本筋へ――!




