第26話:勇者候補、最後の抵抗
轟音。
《エクリプス・ゼロ》の奔流が、再び戦場を薙ぎ払おうとしていた。
「光! もう限界だ!」
元勇者が叫ぶ。
「叫べ! 技名を!」
タンクが煽る。
「そんなこと言われてもォォォ!!!」
俺は涙目で剣を構えた。
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秩序の神が冷たく言い放つ。
『勇者候補よ。お前の必殺技は既に決まった。《愛と変態のメタモル斬》だ』
「ふざけんなァァ!! そんな技名、絶対言わねぇ!!」
変態の神は満面の笑み。
「大丈夫だ光、勇気を持って叫ぶのだ! 世界はお前の“変態”を祝福する!」
「要らねぇ祝福だって言ってんだろォォ!!!」
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だが、光の奔流はもう目前。
避ければ全員が吹き飛ぶ。
喉が震える。
(……言わなきゃ、みんな死ぬ……でも言ったら俺の尊厳が死ぬ……)
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「光……信じろ」
元勇者の声が届いた。
「ダサい技名でも、叫んだ瞬間はお前の力になる」
「……くそっ……!」
俺は目をつぶり、渾身の力で叫んだ。
「愛と変態の――メタモル斬ッ!!!」
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轟音。
奔流が切り裂かれ、空に虹色の軌跡が走った。
戦場が、一瞬だけ静まり返る。
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「……」
全員が固まって俺を見ていた。
「……言ったな」
タンクが肩を震わせる。
「……言ったのぉ」
賢者が唇を噛んで必死に笑いを堪える。
「いや見んなァァ!! 忘れろ今の!!!」
変態の神が大喜びで羽をバッサァァァと広げた。
「これぞ! 勇者の新たな進化!! 歴史に刻まれたぞ、光!」
「刻むなァァ!!!」
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こうして俺の“技名ギャグ地獄”は、最悪の形で幕を閉じた。
「あとがき」
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
ついに光は「愛と変態のメタモル斬」という最悪の技名を叫んでしまいました(笑)。
しかし、この地獄のギャグ編はこれにて一区切り。次回からはついに――異世界編が始まります!
次回、第27話「第三の勇者、異世界へ」
神々の思惑により、光はついに異世界へ送り込まれる――新章突入!
なお、新章突入に伴い、物語の構成を少し見直すためにしばらく休載いたします。
お待たせしてしまいますが、さらに楽しんでいただける展開を準備しますので、どうか気長にお待ちいただければ幸いです!
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