第25話:叫ぶか、叫ばないか、それが問題だ
「生存本能……」
俺の喉から一瞬だけ漏れた言葉に、仲間たちが息を呑んだ。
「おい光! 今、口走りかけただろ!!」
タンクがニヤリと笑う。
「し、してねぇ!! 絶対にしてねぇから!!!」
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『……勇者候補よ』
秩序の神が低く告げる。
『叫べ。お前の力は名を伴わねば発揮されぬ』
「いやそっちの仕様どうなってんだよ!?!?」
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「光、恥じるな」
元勇者が真剣な顔で肩を叩く。
「ダサい技名でも叫べば力になる。それが勇者の宿命だ」
「宿命がクソすぎるんだけど!!」
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変態の神は満面の笑みで羽を広げる。
「さぁ光! 《愛と変態のメタモル斬》を世界に轟かせるのだ!」
「絶対に言わねぇぇぇぇ!!!」
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轟音。
《エクリプス・ゼロ》の奔流が街を飲み込む勢いで迫る。
仲間たちの視線が一斉に俺に注がれる。
「光……叫べ! さもなくば全員吹っ飛ぶ!」
賢者でさえ、珍しく焦った声を上げる。
「ちょっ……お前らまで俺を追い詰めんな!!!」
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俺は剣を構える。
喉が震える。
心臓が爆発しそうだ。
(言うか……言わないか……いや、絶対言わねぇ……!)
だが、光の奔流が眼前に迫った瞬間――。
「ッ……生存本能……」
声が漏れた。
「ぜ、絶叫……」
仲間たちが息を呑む。
「……だ、断斬――」
「最後まで言う気かよォォォ!!!」
タンクの絶叫が戦場に響き渡った。
次回、第26話「勇者候補、口が勝手に動く」
光は屈辱を振り切れるのか、それとも舌が裏切るのか!?




