第2話 元勇者 vs 神!転生戦争、勃発
ギャグの中に、少しずつ“本音”が混じり始めます。
街の崩壊、仲間たちの乱入、そして神の本気――転生戦争の幕開けです。
街が、静かに崩壊していた。
爆発音。魔法の閃光。飛び交うスキル名と咆哮。そして、うろたえる通行人たちの悲鳴。
俺はただ、唖然とそれを眺めていた。
……いや、見ているしかなかった。
「我が弟子が迷惑をかけているようで、すまんのう。……今は我慢してくれぬか?」
そう言って、ロリババアの大賢者が通行人に頭を下げた。その直後に、隕石級の爆発魔法をぶっ放すあたり、何を言っても台無しだ。
「クソババアァァァ!! 魔力の暴走で道路が抉れたんだけどぉ!? 住宅街だぞここ!!」
「うるさいわ! 貴様のせいじゃろうが! ……それとも、力で黙らせてやろうかのぉ?」
「やってみろやババアァァ!!」
「望むところじゃ、クソガキィィィ!!」
また始まった。
……あの元勇者と同じパーティだったらしいけど、どうしてこうなった?
いくらなんでも、神様との対決に巻き込まれてこの状況はない。さっきから、街が5回は爆破されている。
──そのとき、神がゆっくりと姿を現した。
白く発光する衣に身を包み、頭上には輪のような光が浮かび、見た目は完全に神っぽい。けれどその顔には……若干の疲れが見えた。
『……うむ。これは想定外だったな』
神が天に響く声で呟く。
『まさか、貴様の元仲間が揃い踏みするとは……。この街を異世界戦争の舞台にする気か、小童』
「そっちが始めたんだろうが!! 転生なんて勝手なマネしようとするからだろうがァァ!!」
『勇者とは“選ばれし者”だ。それがこの世界の理じゃ』
「だったら! 俺がその“選ばれし者”の座に居座り続けてやるよ!」
元勇者の目は、どこまでもまっすぐだった。
彼の過去はよく知らない。けれど、たぶん並の苦労じゃなかったのだろう。たとえ世界を救っても、彼が得たのは“報われなさ”だった。
──そんな彼だからこそ、“次の誰か”を救いたいのかもしれない。
『ならば……力ずくで退けるしかあるまい。貴様の妨害など、所詮は一時凌ぎに過ぎん』
「やってみろよ、神様ァ!」
元勇者の足元に、蒼い魔方陣が浮かぶ。
「スキル、《集中》・《闘気展開》・《基礎強化》・《超反応》……全部乗せだ!!」
『その程度で神に届くと思うなよ?』
「上等だ……《時空加速斬》!」
瞬間、元勇者の姿が消えた。
風が裂け、空間が捻じれる。神の胸元すれすれを、光の剣閃が駆け抜けた。
『ふむ。なるほど。流石は一度世界を救った者……厄介な奴よ』
「ちょっとだけ本気出すわ。今から」
『ワシも少しだけ、神の威光を見せねばならんな』
天から光が降り注ぐ。
それは一見、美しい奇跡に見えた。
けれど。
街が、また一つ消えた。
──俺の平和な日常も。
──俺の常識も。
──全部、消えた。
……そう、これが“始まり”だった。
あとがき
ギャグと混じりながらも、少しずつ“神 vs 元勇者”の主張がぶつかり始めました。
この物語、ただのコメディじゃ済まさないつもりです。
次回、第3話は街がもっと爆発します。賢者とタンクも暴れます。
よろしくお願いします!