表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

8.乱入者

 結局、私は毎日、営業前の朝の時間に一時間と、営業終了からの一時間、完了依頼の見直し作業を続けた。そして、週に二回は市場に顔を出し、何か新しい依頼は無いか確認した。


 地道な努力を続けて一か月が過ぎた。


「出来た!」

「出来たの?」

 私はテーブルの上に広げた地図を持ち上げて、アーサー様に向けた。


「はい! 見てください!」

「お、凄いね」

「これ、壁に貼っていいですか?」

「うん。どこでも好きなところに貼っていいよ」


 ようやく完成した、植物の採取地地図と、モンスター討伐グラフを壁に張った。

「冒険者のみんな、見てくれるかな?」

 ちょっと不安になりながら、冒険者ギルド『ビリーブ』の営業時間を迎える。


 ドアが開いて、数人の冒険者が『ビリーブ』に入ってきた。

「いらっしゃいませ『ビリーブ』にようこそ!」

「おう! ララちゃん、今日も可愛いね」

「あれ? なんだ? なんか地図があるな? それに……モンスター討伐傾向?」


 冒険者の方々が、私の作った資料を貼った壁の前に集まっている。

「そちらは、『ビリーブ』で完了した依頼の結果をまとめたものです。皆さんの冒険のお役に立つかもしれないと思いまして……」


 冒険者たちは私の顔を見てから、もう一度壁の資料を見た。

「これは良いな! 知らない採取地ものってるから参考になる!」

「モンスターの強さが分かってありがたいよ。初めて戦いを挑むモンスターは、どのくらい強いか、噂で判断してたからな。この表を見ると、自分のレベルで倒せそうか判断しやすい! これは助かるよ!」

「良かった」

 私は作った資料が冒険者の役に立ちそうだと分かり、胸をなでおろした。


「俺、知り合いにも『ビリーブ』には面白い資料があるって伝えるよ」

「僕は知り合いに『ビリーブ』には細かい依頼も豊富にあるって伝えたよ。そしたら、今度行ってみるって言ってた」

「わあ……。皆さん、ありがとうございます!!」


 私は受付カウンターの中から、冒険者の皆さんに頭を下げた。


 バン!

 ドアが叩かれた音がした。びっくりしてふり返ると、ドアが開き、仁王立ちしている女性が見えた。


「この泥棒猫! よくも『ラブリー』から冒険者を奪ったわね!」

「えっ!? ……キャシーさん!?」


 キャシーさんはカツカツと音を立てて、受付カウンターの前に立ち、『ビリーブ』の中を見渡した。

「地味な店。どうしてこんな店のほうが良いなんて言うのかしらっ! ……どいつもこいつもっ」

 キャシーさんは冒険者を軽く睨んでから、私の方に向き直した。顔を突き出して、凄みのある声で私に言った。


「……覚えてらっしゃい! 『ラブリー』を舐めるんじゃないわよっ!」

 キャシーさんは言い終わると、またカツカツと音を立てて『ビリーブ』を出て行った。


「え? え?」

 私は何が起きたか分からず、途方に暮れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ