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7.努力の成果

 『ビリーブ』の受付カウンターに立っていると、ドアがそっと空いた。

「いらっしゃいませ! 『ビリーブ』へようこそ!」

 入ってきた白髪の女性は私の声に驚き、目を見開いた。


「……すみません、こちらで採取依頼を受け付けていると聞いたのですが……」

 老女がおそるおそる私に声をかけた。

「はい! こちらは初めてですか?」

「初めてです。教会に薬草を分けてもらいに行ったらこちらを紹介されまして」

「……! 薬草の採取ですね! 承ります!」

 やった! 教会から来たお客様だ!


「それでは、こちらの書類にご記入をお願いします。依頼者名、報酬、依頼内容等をお書きください」

「はい」

「依頼完了時に、報酬の一割を手数料としていただいております」

「はい」

 老女は依頼書を書き終えると、私に渡してくれた。

「これで大丈夫かしら?」

「拝見いたします」


 白色薬草10束、黒色薬草10束、報酬は銀貨5枚。

 悪くない依頼だ。


「では、依頼が完了しましたら、こちらから登録した連絡先に手紙を送ります。手紙を受け取ったら、また『ビリーブ』にいらっしゃってください」

「分かりました。よろしくお願いします」

 老女は頭を下げながら『ビリーブ』を出て行った。


 老女と入れ違いで冒険者がやってきた。

「いらっしゃいませ! 『ビリーブ』へようこそ!」

明るい茶色の髪を無造作に束ねた青年が、「こんにちは」と微笑んだ。

「あの、簡単な依頼を探してるんだけど……」

 前回はこの青年の希望に沿う依頼を紹介できなかったけど、今回は良い依頼がある。

「はい! 先日から増えた依頼で、白色薬草と黒色薬草の採取があります。報酬は銀貨5枚です」


「良いですね。詳細を教えていただけますか?」

「はい! こちらが依頼書です。ええと……お名前を伺っても良いですか?」

「サイラスと申します」

「サイラス様、この依頼を受けられるのでしたら、こちらの書類に記入をお願いします」

「分かりました」


 サイラス様は書類にサインをし、依頼書の写しを持って『ビリーブ』を出て行った。

「やった! サイラス様、早く依頼を完了して戻ってくると良いな」

 新しいルートで来た依頼が、さっそくサイラス様に選ばれたので私は嬉しかった。

「よかったね、ララちゃん。あの依頼ララちゃんが営業したから、ここに来たんでしょ?」

「運が良かったんだと思います」

 そう言いながらも、的外れな努力をしていたわけでは無いと分かったのは、心強かった。

「頑張ってるもんね、ララちゃん」

 アーサー様がにっこりと笑った。


 営業時間が終わると、私は完了した依頼書の内容を精査した。

 とりあえず五年分の完了依頼書を見直し、植物の採取可能場所を記載した地図や、モンスターごとの冒険者レベル別討伐率のグラフを作り始めた。

 なんだか文字が見えずらくなってきたな、と思って伸びをしたときに声をかけられた。

「ララちゃん、頑張るのもいいけど、程々にね?」

「アーサー様!?」

「もう、業務終了から三時間経ってるよ? さすがに、これは見逃せないな。さあ、もう帰りなさい」

「……はい」


 私は後ろ髪をひかれる思いで『ビリーブ』を出て家に向かった。


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