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5.はじめの一歩

 空が白く染まり始めた早朝、私は教会に向かった。

 教会に入る門は開かれていたが、まだ一般の信者は来ていないようだ。

 私は庭を掃除している牧師さんに声をかけた。

「おはようございます」

 牧師さんは箒を動かす手を留め、私に会釈した。

「おはようございます。朝早くから礼拝ですか? まことに良い心がけです」

 笑顔で話す牧師さんに、私は首を横に振ってから言った。


「いえ、礼拝に来たわけではないんです。私は冒険者ギルド『ビリーブ』で働いているララと申します。今日は教会に困りごと、例えばモンスターを倒してほしいとか、薬草を集めて欲しいとか、そういったことが無いかと思いまして、お話を伺いに来たのです」

「……ほう?」

 牧師さんは私の目を見て、黙っている。


「教会には神の助けを求める人が集まるので……もしかしたら、冒険者ギルドでもお役に立てることがあるかもしれないと思いまして、こうしてお話を伺いに来たのです。突然押しかけて申し訳ありません」

「お心遣い、感謝いたします。確かにここには、けがをした方がいらっしゃったり、モンスターに出会わないよう神の加護を求める方がいらっしゃったりもしますね」


 私は震える手で用意していた張り紙を握りしめたまま、牧師さんの目を見て言った。

「あの! 大変差し出がましいとは思うのですが……この張り紙を教会の掲示板に貼っていただくことは可能でしょうか? 隅の方でかまいません!」


 そう言って私はアーサー様に許可をもらった張り紙を牧師さんに渡した。

 張り紙には<魔物退治、薬草採取、探索等、お困りごとは冒険者ギルド『ビリーブ』までご依頼ください>と書いてある。

 牧師さんは張り紙を見て少し考えた後、「教会で相談してみます」と言って張り紙を受け取ってくれた。


「よろしくお願いします! それでは失礼いたします!」

 私は教会を出ると、お城に向かった。


***


 お城に着くと、門の前には兵士が並んでいた。そのうちの一人に声をかけてみた。

「あの、すいません、私冒険者ギルド『ビリーブ』のララと申しますが」

「……?」

 兵士はちらりと私を見た。

「門の脇の掲示板に張り紙をしてもよろしいでしょうか?」

 黒い制服に青い帽子をかぶった兵士が答えてくれた。

「この掲示板は、城からの通達を張るためのものだ。一般の掲示物は載せられない」

 兵士は私のほうに体を向けて事務的にそう言い、また前を向いた。

「そうですか……。失礼いたしました……」


 がっくりと肩を落とした私を横目で見た兵士が、つぶやくように言った。

「民間の掲示物なら、市場の脇に大きな掲示板があったと記憶している」

「あ! そっちがありましたね! ありがとうございます! 行ってみます!」


 私は兵士にお辞儀をすると、市場の掲示板に向かって早足で進んだ。



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