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転生コスプレイヤーは可愛い服を作りたい  作者: 灰猫さんきち
第2章 ダンジョンの素材
36/86

36:今後の予定


 エラトの店に戻って経緯を報告すると、エラトと両親は抱き合って喜んでいた。ミミとサリアももらい泣きしている。

 やはりよほど不安だったのだろう。

 この事態を招いたのは私の甘さが原因。服のこととなると突っ走って足元がおろそかになるのが私の悪癖だ。

 ネルヴァという心強い後ろ盾がいるけれど、毎度毎度は頼れない。

 これからはしっかりと計画を立てて行こうと決意した。


「さて、これからやることは……」


 羊毛工房に帰って、これからのことを考える。やることはいろいろあるけれど、優先順位をつけて取り組まないといけない。

 その際はしっかりと不安要素を潰して、今回の二の轍は踏まないよう気をつけないと。

 ティトスと話し合いながらやることをリストアップした。


1.エラトの店のサポートと新しい衣装作り

 今まで通りの仕事。お店は一段落ついたので、優先順位はそれほど高くない。でも衣装は作りたいな。


2.機織り機の改良

 ネルヴァの軍制改革が始まれば大量の兵士の服が必要になる。早めに済ませておきたい。


3.兵士の服のデザイン

 ある程度は考え済み。デザイン云々はもちろんだが、着やすくて機能性の高いものがいい。となると材料も考えなきゃだ。


4.素材集め

 3番に関連してもっとたくさんの布や素材に触れてみたい。糸の種類や素材によって機織り機の調節も必要なので、2番にも関係する。


5.石鹸作り

 こちらは私の手を離れた、と思う。たぶん。フルウィウスが人と材料を手配して作っているはずだ。


6.新しい羊毛工房の手配

 これは私の仕事なのか微妙なところ。首都にそこそこ近い土地を取得して村を作る計画は、フルウィウスが主体でやっている。

 今の羊毛工房の職人はほぼそのまま雇われて、足りない人手は増やす予定。

 土地の取得から人が住める家屋の建築、その後に改良機織り機などを持ち込む段取りだ。

 職人たちのリーダーはお母さんが務めるよう打診が来ている。雇用主からの打診なのでまぁほぼ命令になる。でもお母さんなら問題ないと思う。


「うーん。今すぐに急ぎでやらなきゃいけないのは、とりあえずないね?」


「そうだね。強いて言うなら機織り機の改良だけど、どうしても今すぐってわけじゃない」


 となると、やっちゃいますか。4番の素材集め!

 最近は新しい布に触れていなくて、せっかくの繊維鑑定スキルも眠ったままだ。


「ふふふ……。腕が鳴るね」


「え、何。急に」


 急にニヤついた私にティトスがビクッとしている。


「あ、ごめん。急ぎがないなら素材集めしようと思って。やー、楽しみだなぁ!」


 いざ、まだ見ぬ繊維を探して。

 私が張り切って立ち上がると、ティトスもちょっと苦笑しながらついてきてくれた。







 通りに面したお店を冷やかしながら歩いていくと、いつもの列柱広場(フォルム)で市場が立っていた。

 今日の市場も雑多としていて、様々なものが並んでいる。

 繊維素材を探しに来たのだけど、かわいい雑貨やアクセサリーなどのお店はつい足が止まってしまった。


「この腕輪、可愛いね!」


 木製で花の模様が入った腕輪である。


「リディア、その、僕がプレゼントしようか……」


 ティトスが何か言いかけているが、私はあっという間に想像の世界に入り込んでしまっていた。

 こういったシンプルで安いアクセサリーも、ちょっと手を入れれば見栄えが良くなる。

 例えばむき出しの木目のままなので、上から色を塗るとか。フリルの布を合わせてゴージャスにするとか。

 この辺はコスプレイヤー時代の知恵だ。

 コスプレに必要なイメージぴったりの小道具は、ゼロから作ろうとすると案外難しい。

 けれど下地になるような小物があれば、改造を施してそれっぽく仕上げられる。


 私が前世で古代の女神のコスプレをした時も、杖の柄の部分は洗濯干しポールであった。百均で売ってるやつだ。

 あれだって布を巻いて色を塗れば立派な女神の杖になる。

 衣装自作派コスプレイヤーとは、創意工夫をする者である。なんてね。


「ティトス、何か言った?」


 エラトたちの次の衣装を考えながらテキトーに返事をしたら、ティトスはしょんぼりと答えた。


「いいよ、別に……」


 何なのか。まあいいや。

 雑多な市場は意外に面白く、私はいろいろなアイディアをふくらませながら露店を冷やかしていった。







 しばらく歩くと何だかワイルドな店があった。

 地面にじかに敷いた敷布の上には、毛皮が山と積まれている。刈った毛ではなくて皮がついたままの毛皮で、やけにカラフルだった。

 興味を持った私が近づくと、地面に腰を下ろしていた男が目を上げた。二十歳そこそこの若者で薄汚れたチュニカを着ている。


「よお、いらっしゃい。毛皮はどうだい? コートや肌掛けに仕立てればあったかいぜ。敷物もおすすめだ」


「たくさんありますね。お兄さんは狩人さん?」


「冒険者だよ。ここにあるのはダンジョンの魔物の毛皮!」


「……!」


 笑顔とともに言われた言葉に、私とティトスは顔を見合わせた。



新章開始です。

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