Chat 5. 「俺じゃダメですか?(魔道鏡『ダメです』)」
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「リサ、本気なのか?」
多分昨晩の話をするつもりで来たのに、最悪のタイミングで「振られた」ことを知ったジュールは哀れだ。必死に感情を抑えているものの、尻尾はわずかに垂れ下がってしまっている。
「俺じゃダメな――」
「生年月日を入力してください♪」
相変わらず不遇である。おそらく勇気を振り絞った声は、魔道鏡の無情な指示に遮られた。ジュールの耳がさらに伏せられる。
メイが憐れむような視線をジュールに送る。その目には「頑張れ、犬少年」というような感情が浮かんでいるが、口に出すほどの優しさはないらしい。
「1570年春の月10日生まれです。」
リサはジュールの耳も尻尾も視界に入れず、魔道鏡に向かって堂々と答えた。
「25歳で間違いないですか?」
「はい!」
「このサービスを利用した目的は?」
「はい、彼氏探し、そして最終的には結婚相手を見つけることです!」
元気に手を挙げながら答えるリサ。その異様なハイテンションは明らかに場違いだが、本人はまったく気づいていない。頑としてジュールと目を合わせないあたり、意識しているのは明らかだった。
この国では若いうちの恋愛には寛容だが、26、27歳を過ぎた独身女性には白い目を向ける風習がある。おかげで結婚するのが難しくなるのだ。面倒な風習だが、リサは独り身では死にたくなかった。愛されない覚悟はしている。それでも、愛せる子供と家庭を築く夢だけは諦めたくなかったのだ。
「結婚相手をこんな胡散臭いサービスで探すのか!?」
ジュールの尻尾が逆立っている。明らかに慌てているのだろう。
「真剣交際を求めていらっしゃるのですね!ではご自身の職業、年収と相手に求めるスペックを教えてください♪」
魔道鏡の無慈悲な進行がリサを追い詰める。メイは普段聞いているからいいとして、ジュールの前で男の好みを語るなんて、リサにとっては地獄そのものだ。
リサは顔を真っ赤に染めながら、覚悟を決めて答えた。あまり高望みをしないようにはするが、少しくらいの要望は許されるだろう。
「私の職業は呪物学教師です。年収は600万ロゴスくらい。」
一呼吸を入れる。
「要望としては、適度に引き締まった体で……。」
欲望に忠実すぎる第一声に、ジュールの尻尾と耳がぴくりと動く。
「できれば高学歴で。」
さらに尻尾が揺れた。メイは「単純すぎる」と言わんばかりの目で尻尾を見ている。
「年上で、同じ種族だといざこざも少なくていいかなと思ってます!」
ジュールの耳が突き上げられ、次の瞬間、これでもかというほど伏せられる。
「……」
メイは、無言でジュールの肩をポンと叩いた。