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Chat 2. バーリー酒は悪くない(私がわるい)

「うっ……寒っ。」


リサは冷え切った空気に目を覚ました。部屋が凍えるほど寒い。昨夜、暖炉に火呪文を唱えずに寝てしまったのだろうか。


冬の月も中盤。冬の冷たさが本格化してきた。人肌恋しいこの季節、昨日の婚活話がやけに盛り上がった理由も、きっとそのせいだ。


「うわ、頭痛っ。」


ガンガンする頭痛に思わず顔をしかめ、手を額に当てる。バーリー酒をショットで煽ったあたりまでは覚えている。でもその後の記憶は朧げだ。かろうじてジュールが迎えに来たところまでは思い出せるけれど、それ以降がまるで空白。


ふと冷蔵庫の中身が気になった。まだ巨大二枚貝の切り身は残っているだろうか?二日酔いの定番アイテムとしてよくお世話になっているのだが、前回の飲み会でも同じく二日酔いで汁物を作った記憶がある。きっともう在庫切れだ。……誰か、二日酔い対策の呪文を発明してくれないものだろうか。


リサは重い頭を抱えながら、冷蔵庫を確認しようと起き上がった――その瞬間だった。


「うーん……。」


隣から低いうめき声が聞こえる。リサの動きがピタリと止まった。


ベッドの隣には、布団にくるまった誰かの姿がある。見覚えのある黒髪の癖っ毛。そして頭には狼の耳。目を疑うが、間違いない。脳内で二日酔いの靄が晴れていくような感覚に襲われる。


恐る恐る自分の身体を確認する。……一糸纏わぬ姿だ。そして見知った部屋ではあるが、現在いるのは確実に自分の部屋ではない。まさか。


「頼む、どうか勘違いであってくれ。他人の空似であってくれ……!なんなら夢であってくれ…!」


リサは心の中で必死に祈る。神様に熱心にお祈りしたことなんて一度もないけれど、今回ばかりは頼らせてほしい。


しかし、神は微塵もリサを救ってくれない。いや、そもそも酒癖の悪さでとっくに見放されているのだろう。聖書学だけ成績が悪かったのも、今思えば当然だ。


隣の男が寝返りを打ち、その顔があらわになる。


太めの凛々しい眉毛、薄いけれど形のいい唇。そして硬く結ばれた口元の下には特徴的なホクロ。完全に見覚えのある顔だった。そして、彼もまた服を着ていない。イケメンだ。と、現実逃避した頭で考える。


さーっと血の気が引いていく音がした。


「……うそでしょ。」


散乱した服、そしてゴミ箱の中に見えるそれ。情事があったことを決定的に示している。


25歳、リサ・ヘミングウェイ。呪物学教員として程よく真面目に生きてきたつもりだったが――どうやら昨夜、20年来の幼馴染とワンナイトをしてしまったらしい。

こんな教師やだ

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