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逆光

少し寒くなってきたかもしれないな…

季節はもう9月とまだ残暑が残るのだが夜の2時になると

ビルのすきま風が体を凍てつくようであった。

これからもっと寒くなると思うと気が滅入る。


人通りも2時をすぎるとほとんど居なくなる。

歩くのは大体終電を逃した酔っ払いかヤクザだ。

なので仕事としてキャッチをするけどそれもあってないようなものである。


何も無いのが寧ろ苦痛なくらいである。

自動販売機のジュースはまだ冷たいものしかないので体を震えさせるしか温める手段がない。

きっと何かしら忙しい状態じゃないと合わないのだろう。


今日も今日とてキャバクラのバイトをしています。

西出です。

キャバクラFlowerに務めて早4ヶ月ちょいが経ちました。


週3で働かされてます。

相変わらず代表はポンコツと罵ってきたり

ママにこき使われたりしてます。


仕事は少し慣れました。

キャッチも少ない中4~5組ぐらいは来店していただいております。

実力は至らないですが他のキャッチのおじさん達に気に入っていただいてたまに振ってもらってます。


なので殺されるほど代表に詰められることもないです。

ちなみにボーイはあれから2人入りましたが1.2週間もすると飛んでました。

やっぱやばいのかなこの職場…


とぅるるるる…

電話がなる。店長からだ

「はい、西出です。」

「西出くん店内もどろうか。あ、じゅんこちゃんのテリア買ってきて。」

「承知しました。」

このようにたまにグラスの洗い物のために店内に戻ることも多い。

いいですか、ボーイは走る仕事なんですよ。


ちなみにじゅんこちゃんとは今月入った女の子だ。

黒髪オールバックのお淑やか系のお姉さんである。

お客さんとの座り方、テーブルの使い方で分かる。


あの子は売れる子である。

子って言うか…お姉さんキャラであるな。


という感じにぼんやりと考えながら走ってたらあっという間にキャバクラに到着した。

「すみませんじゅんこさん、テリアお持ちしました。」

「ん、ありがとう!」

ハスキーな声で返事をする。

なんというか、キャバ嬢は一定数は男勝りな感じがするけどこの人もそんな感じがする。

テリアを渡したあと俺は溜まったグラスを洗い出した。


どうしてもボーイは忙しいので洗うとこまで手が行かないのだ。

ざっと50本くらい溜まってるなぁ。

早く終わらしてまたキャッチをしなきゃなぁ…。

一つ一つ丁寧に洗うと後ろから扉が空く音がした。

お客さんかな?

「お疲れー!」

げ、代表だ。

代表は時計の確認でスマホを見るとずっといじってると勘違いをして詰めたり手を出したりするので変なことはしないようにしよう。

「おう!西出今日は何組?」

「…4組です。」

「4組?もうちょい捕まえろよ給料下げんぞ。」

「すみません、これ終わったらあと2組捕まえるために外でます。」

ちなみに4組はしょぼい数字のように見えるが他のボーイは今日は0である。頑張ってると思うんだけどなぁ。

女の子も今日は使命がないのか半分はスマホを弄っている。

営業をしてるように見えるがインスタかティックトック、パズルゲームをしてるのが大半だ。

何が言いたいかと言うと、今日は平日なので一通りも少ないので頑張っている方である。

「まあいいよ。今日はバーに行くぞ。付き合えよ。」

おいおい…むしろ罰ゲーム追加されてるぞ。

俺今日10時から営業しなきゃなんだけど。


「分かりました。片付けしてから行きます。」

「今日は営業終わりだからもう行くぞ。」

流石は個人経営、横暴すぎる。


☆☆


こうしてクラブFlowerで上の階のバーで飲み会をする事にした。

気分はちょっと絶望である。

面子は代表と店長と出戻りしたボーイのかずさん、ちょっと仲の良くないキャバ嬢とじゅんこさんである。


基本副業だし何時でもやめてもいいと思って一線を引いているからアウェイ感半端ない…。

これは俺側に問題があるのだがね。


「おら、飲むぞ!カンパーイ!」

「カンパーイ!」

みんなそれぞれにお酒が渡される。

明日の仕事のために体力残さなきゃ…


「おい、西出カラオケ歌えや。いつものやつだよ。」

今日は代表は俺に対して突っかかってくる。

いつものやつとはディズニー映画、アラジンと魔法のランプの挿入歌のフレンドライクミーである。


俺は歌はそんなに上手くない。

でもモノマネが得意なので山寺宏一さんに寄せた感じで歌うのだ。

それがキャバクラ内のお客さんにも大ウケで週に2回くらい歌わされる。

声がでかいのでお客さんの視線もかっさらうのだ。


緊張混じりでマイクをもつ。

「行くぞ!あっ、うっ、ふっー!」

ちなみにウィル・スミスが写ってる実写しか歌えない。ジニーのなんでも出来るよ。っていう感じの歌い方が好きなので何度か聞いていたら十八番になってしまっていた。

「ワハハ!うーうー!俺は最高の友達!」

パチパチパチ…

店内中の酔っ払いが拍手している。

は…はずかしい。


その後は何事も無かったかのように代表は島人ぬ宝を歌って、イーヤーサーサーと騒いでいる。

気まぐれな方だ。


「えー!初めて聞いた!めっちゃ面白いね!」

と、隣のじゅんこさんが話しかけてきた。

キャバ嬢って仕事柄かもしれないけど近いんだよなぁ。

「ありがとうございます。」

「今度私の卓でも歌ってよ!」

「嫌で---いいですよ。」

「いや本音隠れてないよ。」

「すみません。」

たまに建前を言えない時あるよね。


「西出って普段酒飲むの?」

「1人で飲みますね。」

話題作るの上手いよねこういう仕事の人って。

いつも勉強になる。

「お酒は何飲むの?」

そうだな…なんて言おう。

「鬼殺しです!」

「ファンキーだね!?」

違うんです…ちょうど2023年に流行った高校生ぼっちのロックアニメの酒飲みに影響されたとかじゃないんですよ。本当はコーラが好きです。


そんなこんなで会話してたらしばらく時間が経っていた…そろそろ帰らないと仕事が始まってしまう。

帰らせてもらおうと立ち上がった時だ。代表が目の前にいた。

「おい西出、俺は帰るからお前は女の子と最後まで一緒にいろよな。」

「え…いや僕も」

「じゃあなぁ」

このクソ上司!パワハラ!頭頂部ハゲ!

代表は他のボーイもつれてさっさと帰ってしまった。


俺も帰るように伝えるかな。あと3時間で出社だし。

「静かになっちゃいましたね!もう日が昇ってますし、帰りま」

「え、もっと飲もうよ!さっきの孫悟飯の話しようよ!」

なんというパワフルさでしょう。

キャバ嬢ってこええや。


それにしても…だ。

片方のキャバ嬢は俺のことはきらいだ。

それはいい、寧ろ高校と専門では人に嫌われることも多かったから嫌われることなんて屁の河童でしかないのだ。

この人はどんな距離感で接してるのかわからないんだよな。

本当に楽しいのかな。

そんなことを考えながらハイボールを口にする。

「なんで悟飯が好きなの?」

「んー、そうですね。基本的に巻き込まれることが多いんですよ。ラディッツに攫われたり、ピッコロに修行させられたりと…でもね、めげずに修行をして波があるけど彼なりの人生を積み上げてく感じが好きです。」

「いやめっちゃ分かるわ!セルと戦った時とか急にかっこよくなるよね!」

「そうなんですよ!責任を負わされて葛藤しながらも乗り越えるのが感情移入できるんですよね!」

あれ、意外と楽しいかもしれない。じゅんこさんも心地良さそうにお酒を飲んで笑っていた。


「あんた結構面白いじゃん!私は好きよ!仕事大変かもしれないけどなんかあったりやめたくなったら一旦私に言いなよ。」

「あ、ありがとうございます。」

「じゃあまた飲もうよ。お代も代表払ってくれてたみたいだから。」

「え!?そうなんですか!?」

なんだと!?ただのパワハラじゃなかっただと…?

まあいい、全然うちとけなかったけど今日は何となくいい日だとおもった。この仕事は副業で稼げればいいと思ったがたまにはこうして親睦を深めてもいいのかもしれない。


そんなこんなで僕らは店前を出て解散をした。

スマホ時計を確認する。

出社まであと一時間かぁ…。

俺は後頭部を少し書いて仕事場行きの電車をめざした。

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