表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/16

煙草

がやがやとたくさんの人が集まるにぎやかな街。

ただ賑やかな街といっても横浜や新宿に比べたら繁華街としては少し寂れてるようなありふれた街、ここは町田と呼ばれていた。


ここは小田急線と横浜線から織り成す住みやすい町とも有名で郊外に住みたい人はここを拠点にすることも多いくらいだ。

アクセスもよく程よく賑わっているため、居酒屋もキャバクラもとても多い。


俺は今、駅のホームにいた。

「今どこ?」

「改札のセブンの横にいるよ。」

「私ももうそろ着く。」

「りょ。」

こんなに簡素なやり取りを自分とするのは以前にも紹介したあすかだった。

こいつとはこんな感じで普段やり取りをするのだが、たまにカラオケをしたり、シーシャに行ったりする。


そんでもってお互に愚痴会を始めるのだ。

俺は待ち合わせが暇なので、ソーシャルゲームに打ち込んでいた。

あすかはどちらかと言うと生物上は異性に当たるのだがお互いなんとなく過ごす時間が多いので最早男友達のような感覚だった。それにこいつはどこかしら男がいるので攻略外と考えると、これ以上接しやすい女性もいないだろうと感じる。


「おまたー。ちょっと道混んでた。」

気だるげだがどこかアニメ声のような声が聞こえてきた。

振り向くと身長が148cmの小柄な体型をしていて、尚且つどこに脂肪があるのかというスレンダーな金髪のつり目の女性が現れた。

そう、俺の悪友のあすかだ。


「お疲れ様。俺もいまさっき来たとこだったから大丈夫だよ。」

「そ、それじゃああのシーシャに行くか。」

「そだな〜。」


お互いやる気が無いやり取りをする。

これはお互いリラックスをしている証拠である。


お互いに駅から南に進んで、街を進んでいく。

天気はぼんやり雨が降っていた。

あすかは傘を指し、俺はパーカーのフードを被っていた。

「あんた、傘は?」

「忘れたよ。」

「いやちょっと……仕方ないから買ってあげるわよ。」

そういい、足を止め薬局を目指す。

そんなに気を使わなくていいのに。


「いや、大丈夫だよ。」

「いいよいいよ、今回の相談料よ。」


そういい、あすかは傘のコーナーに進んでいく。

こいつはよくそんな感じで俺に気を使ってくれる。

話したり涙をしたりすると心が軽くなると聞くが、こいつにとっては対価を払っても良いほどのものだろうかと少し考えた。


「どれがいい?」

「んー、このレインボーなカラーのやつで。」

「あんた相変わらず特殊なやつ選ぶわね……。」

そういい、お互いにレジに運び薬局を出て暫くして俺たちはシーシャバーに着いた。


ここは、町田の隠れたシーシャバーだ。

ビルの奥にあるが、内装は木と観葉植物があり、ノスタルジックな布地のソファーに腰をかけて吸うスタイルだった。


ここは少し高めだがお互い雑談をしながら過ごすにはとてもうってつけなのでお気に入りになっていた。

何よりここの好きなところはもうひとつあった。


「お!あるある!ノンニコチンのはちみつレモンあじ!」

「私はチョコミントのニコチンのやつにしよっかな〜。」

あすかはiQOSを2日で1箱を消化するヘビースモーカーなのだが、俺はニコチンはNGである。

そのため、ノンニコチンのやつはとても有難かった。


フレーバーも甘口なので甘党の俺にとっては珍しく吸うタバコでもあった。

ぶくぶくぶくぶく……と心地よい音を器具が発し、下に甘い味が付着するのを感じる、そしてしっかりと吸った後に服と、白い煙が水分を含んでヤカンの蒸気のように出てきた。


俺はこの味が好きだ。

これで長居できるのだからいくらでも居られる気がする。


「で、なんかあったのか?」


俺が話を切り出す。

あすかは基本的に我慢をする女だ。

人間関係で周りに合わせて疲弊して、溜め込んで疲れる癖がある。

俺と知り合うまではそのストレスをホストで浪費に費やしてたくらいだからこうしてガス抜きをするのだ。


「私ね、町田でキャバ始めたのよ。」

「言ってたな、仕事もやめて新たなステップを踏んだわけだ。」

「まあそうね、でも……結構人間関係が疲れるのよ。」


わかる、わかるぞ。

俺もキャバクラのボーイを初めて半年経つが、女同士のやり取りというものはたまにゾッとするものがある。

例えば何人かで派閥を作り楽しそうに話してるかと思いきや、30分後に一緒にいた人間の悪口を平気で言ったりするのが女だ。

俺もそんな場面たくさん見てきたが、仕事なので割り切っていた。


「どんなことが疲れるんだ?ちなみに。」

「結構相手に合わして、旅行に行ったりするんだけどさ。」


おいおい、傍から見たら俺より楽しそうだぞ?


「旅費はかかるし、運転はさせられるし…無神経な人と一緒にいるとなんでこんな人に合わせなきゃ行けないんだろうって、お金も減ったし疲れた。」


あ、これあれだ。仲良くない人と旅行に行ったやつじゃん。それは地獄だ。


「そっか……それは大変だったな。」

「しかもさー!私まだそんなにお金無いのにさ……みんな同じ金額なんだよ!ひとりあいりちゃんって子はいるんだけどその子は月収100万以上なのに!」


あすかはシーシャをすぅ……と吐いてから大きく吐き出す。

あすかは本当に自分の意見を言うのが苦手だなぁ。


「しかもさ、ボーイがめっちゃウザイの!」

「そうなの?」

「そう!報告連絡相談ができないから、急遽シフトに入ることになったり、ギリギリになって急に休みだとか言い出すのよ。」

「ムカつくな。」

「ほんっとにムカつく……、お客さんもウザイの!」


あすかはどんどんと続けていく、こいつは本当によく喋る。

俺が相槌と要約をしてあげるとこれでもかと言うくらい喋るのだ。

俺はそこまで意見を言わないので自然と出てくるといつも言っている。


「私がさぁ営業LINEすると、店外で会えないかな?とか交渉するの!それでさ、私は会いにいくとだいたいヤリモクでさ〜、お店に指名行くねって行ってきてくれたことがほとんど無いのよ。」

「え、やったの?」


すると、あすかは少しニヤついて。

「やった。ちょっとかっこよかったし。」

「おいおい……。」


ちょっとこいつにも原因はある気がするが……まあいいだろう。

ちなみにこいつに意見を言ってはダメである。

こいつは話を聞いてから、導いてあげるのが最善の選択である。


「そうだなぁ……例えば話してみてちょっとここ辞めてもいいかもとかある?」

「んー、そうね……相手に合わせすぎてる気がするかも、あとは流されるからもうちょっと意見は言うべきかな。」


あすかは冷静に考えればきちんと問題解決力はあるのだ。問題としては直感で動きすぎてるところがあるのた。


「まあ、悩んだり困ったらその都度電話もしてもいいぞ。そうすれば考えがまとまるんだからな。」

「たしかに!ちょっと気持ちが楽になったかも!ありがとう。」


そう言ってあすかは笑顔になりジンジャーハイを飲んだ。


「それで……今の選択に後悔はしてないかい?やっていけそうかな?」

「うん!ネイルもできてるし、工場だと同じことしてばっかりだったから刺激になって楽しいよ!悩むことは多いけどその分頑張ってみるよ!」


ちなみにこいつの1番大事なことは前を向かせるために最後は前向きな感想をしっかりと言ってもらうことだ。

そうすると自然といい会話になる。

まあ、この心地良さがお互いに4年以上のやり取りにさせてる1つのメリットである。


あすかは機嫌良さそうに立ち上がった。

「ね!ボーリングいこうよ!ジュースを賭けでいこ!」

「お!いいぞー!俺負けねえからな!」

「あんた運動神経悪いじゃん!」

「なんだと〜?どの運動神経が悪いんだァー?」

「ぎゃー!近寄るな!近寄るなぁ!」


お互いにバーを出る。

ちなみに俺がスコア惨敗したのは、また別の話。

なんだかんだ言ってるが、俺もこの時間がとても好きだ。

さーて、俺も明日からキャバのバイト頑張るか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ