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夜薔

ピロリロリーン

俺のスマホが鳴っている。

今日は本業飲みだったので睡眠に入ろうとした時だった。


俺は基本的に夜の1時に帰ってきて、大体3時くらいに寝るのが日課である。

多分体質的には朝方の体質なのだがアルコールで無理やり寝ている。

長生きは出来ないな…と思い後悔しつつ眠りにつくのだ。


スマホは俺の高校の親友だったたくからだった。

彼は身長は低めで少しがっちりとした青年である。

自分が内向的に対して彼は外向的な性格をしている。

そのため友達が多いのだ、気さくで面白いと言われることも多い。


俺は何用かと思いつつ、懐かしくも感じたので通話を開始した。

「もしもし久しぶり。」

「おー!でたでた!西出元気ー?」


少し鼻につく特徴のある甲高いダミ声…

早口だが聞き取りやすい特徴的な喋り方だった。

「どした?こんな夜に」

「どうだ!ビジネスは順調かい?」


ビジネスという単語で少し思考する。

ああ、そうだ。

俺は彼の話術と起点は大きく買っていた。

その能力も見越して、俺は彼をビジネスの片腕にしようとしていた。

きっと自分の思考と聞きだす力と

彼の心をつかみ、話し続ける力が合わさったら成功は目前になるのかと本気で思っていた。


しかし、彼は断ったのだ。

彼は口が上手く容量が良い分努力が嫌いな人間である。

マルチ商法は基本的に営業と同じでつまらないことをコツコツするものであるため彼との親和性はないとの事だった。


何度も誘ったが、断り続けいつの日か絡むのを辞めてしまったのだった。


そうだ、彼に現状を聞かれたのだった。

素直に現状を伝えよう。

プライドは生きづらさの温床でしかない。


「やめたよ、もう半年前に。」

「え、やめたの!?お前3年間も必死にやってたのに。」

「もうダメだった。仲間もみんなやめて夢も希望も金もぜんぶなくなったよ。」

おどけが得意な彼は偉くショックを受けていた。

成功したらもの奢れよとおちょくることがいつもだった彼の反応はえらく珍しかったので拍子抜けだった。


「まあな。まあでも次のステップとしていまもそれなりに頑張ってるよ。」

「そうか…、お前は朝の4時まで頑張ってたのにな。

俺は正直、そんなキチガイみたいに頑張ってるお前をからしつこく勧誘受けるの楽しみにしてたのに。」

「そうかい、まあ今でもこうして接してくれるだけ俺は嬉しいよ。」


実際彼のおちょくりは鼻につくのだが、それでも接してくれるのはとても嬉しい。

日本だと勧誘はほぼ絶縁のきっかけになることはとても多い。

実際俺も何人もの人間との関係が断ち切れた。

それでも仕組みさえ飼い慣らせばみんなを幸せにできるという自分の美学に向き合ってくると勧誘されてでも話したい物好きも地元には何人かいたので俺はきっと面白いとか多少の人望を買ってもらえる人がいるのも小さな幸せだと感じた。


「それはそうとお前今は何やってるの?」

「今はボーイだよ。」

「へ?ボーイ?」

たくは間抜けな返事だった。

まあそりゃあそうか。ボーイなんてかっこいい仕事を俺がやってるとは思うまい。

「君は相変わらず色んなものに手を出すねぇ。

ホスト、メイド、ゲイバー、マルチ商法ときて次はキャバクラのボーイと…君は行動力どストイックさにはいつも驚かされるよ。」


彼は過去の話が好きだ。

そりゃそうだ。共通点が過去だからな。

「営業がメインでやってて副業なんだけどね。今月で3ヶ月位はぶっ通しで働いてるよ。」

「いやこええよ!なんでそんなに生き急いでるの?進撃の巨人のエレンなの?高校の頃も生徒会とバイトと少林寺拳法と詰め込みすぎなんだって。」


高校の話をしてきた。思えば俺は時給750円のバイトを9万円まで毎月はたらいていた。

少林寺拳法も全国大会までいっていた。

生徒会も議長というポジションでいたので高校の頃の俺は自由時間などほとんど無きに等しかった。


「そうかもしれない。今も昔も変わらねえよ。」

俺にとっては笑い話でしか無かった。

頑張るのが当たり前だと思っていたから。

「いやいや、俺なんて看護大学2年留年してるんだが…もう少し気楽でいいんじゃないか?」


彼は逆に努力が嫌いすぎて学校を休むことも多かった。

そのため数年間はそれを取り返す努力をしていた。

努力が好きだが容量の悪い俺。

容量は良いが努力の足りない彼。


人は無いものに引かれるとあるがその通りである。

対照的な2人は長い付き合いを実現していた。


「そういえば、なんか用があって電話したんじゃないのか?」

「おお…そうだった。今度俺の親友が誕生日で東京行こうかなって話をしていたんだよ。ついでにお前に会わせたいなって。」

「ん?いいけど大丈夫なのか?俺は普通の人から見ると危険人物だよ。」

「いやいや!まあでもその友達も夜のお店とか興味あるからさ!逆に今度お前のキャバクラに遊びに行ってやるよ!ちょっとすごい面白いやつでさ!お前と相性いいと思うんだよ!」

「お…おう。」

よくわからんが多分ぶっ飛んだ友達かもしれんな。


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