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相思鳥

がらんとした最終電車の中、飲み会帰りなのだろう、ほんのりと酒の匂いをさせている女子大生の奈美と玲が話をしていた。


『あいつはね、そういうヤツなのよ。』


頬を紅潮させた玲が、回らない舌で奈美に訴えかける。


『もう、ホントにろくでもないヤツなの。皆んなはあいつのこといいヤツだって言うけどね、恋人のあたしからしたら、もうこれ以上ないってくらいのドクズなわけ。』


『もう先輩、今日ずっとそれ言ってる』


そう言う奈美も、程よく酔いが回っており、少し不満げながらもにこやかに話を聞いている。


『奈美も聞いたでしょ?あいつ、また後輩の女の子にご飯奢っててさ。あたしとはきっちり割り勘するくせに。信じられない。』


『え、あたしこの前関先輩たちと一緒にご飯いったのに、奢られてないんですけど』


『もう、今はその話じゃないでしょ』


二人は顔を見合わせて笑い合う。


『だから、あたしが言いたいのはね、恋人に奢んないんだったら、他の女の子にも奢っちゃダメってこと。』


『でも確かに。彼女からすると複雑かも』


『そう。『玲とは誠実に付き合いたいから』とかアイツは言ってたけどさ、結局コスパの良い彼女にされてるのアタシって。』


『え、先輩かわいそう。もう別れちゃえばいいのに』


『いやもうマジでそうなんだよね、アタシに見放されてないだけ感謝してほしい』


玲は組んでいた足を解き、逆に組み替える。


『でさ、聞いてよ。あいつがもうどんくらいクズかっていうとね、喧嘩したとき、あいつ一週間とか引きずるの。あたしはね、もうその1日で終わらせよう、解決しようって努力すんの。でもあいつは違うのよ。丸一日LINE無視したりとか余裕であって。』


『え、それはマジめに最低かも』


『そう!ホントに最低なヤツなの。もう、男ってなんでこうなんだろ。信じらんない。いつまでもグジグジして、何も自分から行動しようとしなくてさ。やっぱ男って本当にどうしようもないよね』

『それはちょっと分かる』


二人は目を見合わせて笑う。


『もう、なんで先輩たちって付き合ってるんです?』


『ほんとに。マジでなんで付き合ってんのか分かんない。でもね、確実に言えるのは、アイツはクズってこと。』


『もう分かりましたって』


『一緒に生活しててもさ、こっちが気を使ってばっかで、全然こっちに返そうっていう意思が感じらんないんだよね。もうヒモだよヒモ。精神的ヒモ。』


また二人でひとしきり笑い合っていると、二人が降りる駅に着いた。


改札を抜けて駅の外にでると、玲が人混みの中の一人の男性を指差して話しだす。


『ほら、アレがサイテー最悪のクズ野郎だよ』


いうと、玲の彼氏である関はそれに気づき、ため息をつきながら奈美たちの方に近づいてくる。

『お前、また奈美ちゃんに変なこと吹き込んでんの?』


『全部本当のことですー。奈美、マジでこいつのことは信用しない方がいいよ。ほんとロクなことないから』


『あークソ、マジでこいつ……。奈美ちゃん、こいつの言ってること全部ガン無視でいいからね』


すると、玲が急に目をうるうると上目遣いにしだした。しかし、その口元はこらえきれず笑みがこぼれ出ている。


『奈美、あたし、DVされててぇ』


 これは玲の口癖だ。一度本気で心配になった奈美が、一緒に銭湯に行って体に傷がないか確認したり、半同棲状態の玲たちの家を調べたが、どちらかといえば関が玲の尻に敷かれている証拠しか出てこなかった。


『はいはい、もう分かったから。帰るぞ』


『奈美、ほんとなの。あたし、あの、ええと……ものすごいDVを受けててね』


『奈美ちゃん、お疲れ。土日はゆっくり休んでね』


二人は、ガミガミと言い合いをしながら夜の街へと消えていく。


しばらくして二人が見えなくなると、奈美も帰路に着いた。


ふらふらと疲れた体を引きずりながら、まだ煌々としている街明かりの中を歩く。


酔いのせいか、奈美の口からポロリと言葉が漏れた。


『……惚気やがって。』


奈美が建物の隙間を見上げると、街の明かりに霞んだ半月が空に浮かんでいた。

あとがき


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