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「小賢しい」
そう言ったのはイフリートだ。どうやら奴は、自分の領域で冷気が発せられるのを嫌うらしい。まあ炎の精霊だしね。おかしくない。僕達にとっては地獄のような暑さも、イフリートにとっては快適そのものなんだろうし……イフリートは冷気が気に入らないから、その体を震わせる。すると周囲のマグマが活性化し、温度は瞬く間に上がってく。けど僕と会長の周りだけは快適だ。なぜならそこには氷の壁があるからだ。出した海も全て凍らせて冷気を発せさせてる。
しかもこの氷は温度が上がったこの状況でも溶けだしてない。それだけ特殊な氷だ。勿論これだけの物は今の僕だけでは作り出せない。会長のチートのおかげだ。会長が何やらペンで書いたからこそのこの強度と冷気だ。
「だが面白いぞ。がはははははは!!」
何やらいきなり笑い出したぞ。どういう事だ。これで終わりならいいんだけど……だって精霊と戦うなんて思ってなかったから心の準備がね……アイテムも万全とは言い難い。それに何より、二人だよ? 普通精霊とかかなりの大人数で挑む物だ。それを二人でなんて……きつすぎるでしょ。
「受け取るがいい」
そういってイフリートは口から何かを吐き出す。なにそれ……ばっちい。ちょっと引いた。けどその小さな炎はゆらゆらと漂って僕達の方へとくる。それはイフリートが吐くにしてはとても小さな炎だ。だから思った。これがイフリートの祝福ではないかと。だから避けるようなことはしなかった。僕と会長はそれを受け入れる。もしかしたら触れた瞬間、消し炭にされる炎かもしれなかったが、敵意は感じなかったからだ。
そしてその予想は正しかったのか、HPが削られるような事はなかった。ただ体の中がとても熱くなった。
「最初の試練だ。その炎を抑え込んで見せよ。それだけ祝福を使いこなせてるのなら、この程度楽勝だろうがな」
あれ? なんか結構過大評価されてないか? もしかしてイフリートの祝福はあの攻撃をどの程度防ぐかで受け取れる炎の強さが変わるとかないよね? ちなみに僕達はノーダメージだ。そのせいなのか、元々こんな物なのかわからないが、とても体が熱い。ハッキリ言って爆発しそうだ。体を押さえて丸まらないと、本当に爆発するんじゃないかと思える。隣をみれば、会長も同じように体を抑え込むように丸まってた。
(これは……いままでの祝福とかなり違うぞ)
僕は脂汗流しながらそう思った。だって今では取り込む事自体は簡単だった。それから扱うのが苦労する物じゃん。テッケンさんやシルクちゃんなんかは受け取ったけど、祝福を感じれることはなかった。だから操る事も出来なかったんだ。けど……イフリートの祝福ははっきり言うと主張が強い。強すぎるんだ。出来ない主など焼き殺してやろうという炎の意思が感じられるほどだ。
僕はよろめいて周囲の氷に当たる。ひんやりとしてて気持ちいい。その時、これが使えないか? と思った。出したものを中に戻す? 自分の氷なら出来るだろうが、物質を取り込むなんて不可能だ。でも……これは本当の物質ではない。そう見えて感じるだけのコードじゃないか? 僕は自分の特殊な目でコードを見る。これが出来れば、この炎を抑える事が出来る。僕にはこの方法しか思いうかばない。