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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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「で、どのくらいかかるんだ?」


 僕は体のバランスを取りながらそんな事をアギトに聞く。この中で一番LRO歴が長いのはアギトだからな。僕は実際、全然どこにその祭壇があるかなんかしらない。会長は多分そこら辺わかってるだろうが……会長も聞いただけだろうしな。この中で実際に行ったことがあるのは多分アギトだけだ。


 そんな僕達は今、毛深くてがっちりとした体格の動物にまたがってる。身重そうなのに、案外この動物、軽やかにぴょんぴょんと進む。絶対リアルなら、荷物とか摘まれてのっそりのっそりと動くタイプの動物にしか見えないのに、この急勾配の坂を力強くジャンプ出来るんだからね。


 この分ならこの八千メートル級の山もそんな脅威じゃない。まあ実際にリアルと同じくらいの難度なら誰も来なくなっちゃうよね。いや、ここでは絶対に死なないからある意味難度的にはリアル以上になる事なんかないだろうが、普通は好き好んで過酷な環境に身を置きたいとは考えないしね。

 まあ冒険感はあるだろうけど……僕達は一応分厚いコートを羽織ってる。だけど、実際のエベレストとかにリアルで登るとなると、こんな装備だけじゃ全然だめだろう。けど今の僕達はちょっと肌寒いくらいだ。それは体を保温してくれるアイテムがあるから。

 これのおかげで、八千メートル級の厳しい寒さでも動きを阻害されるほどに着込む必要はない。まあそれでも厳しい環境だけどね。よく吹雪くし……吹雪いては止んでをくりかえしてる。


「記憶が曖昧だが、近くまで行けば思い出すと思うし、一時間くらいもあればつくさ」

「大丈夫だよスオウ、祭壇は逃げないよ」


 そういうことじゃない。会長はどうせ明日も学校行く必要ないからいいが、僕達は学校がある。あんまり遅くまではやってられない。まあまだ時間はあるけど、夜ご飯までには一回くらい戻らないと、お婆さんに悪いじゃん。家の事やってくれてるのに。


「でも実際、ログアウト出来る様にする方法とか探さなくていいのか?」


 アギトの奴がそんな事を聞いてくる。まあわかる質問だ。一週間しかないんだし、こんな余計なことをしてていいのか? と思うのは当然だろう。


「アギトのいうこともわかるよ。けど、ログアウト出来る方法って言われてもね。そこら辺に転がってるわけじゃないし、これはきっとLROのシステムのバグ的な物なんだよね」

「バグ? 昨日大変だったのに関係あるのか?」

「ありまくりかな?」


 会長の奴は多分、なんで自分がこうなったかの検討はついてる。いきなり精霊巡りしたいとか言ったのも、実は何か考えがあると僕は思ってる。日鞠はそういう奴だ。


「もちろん、外からも色々とやってもらってるけど、中からも一応できる事したいでしょ。私のコード、昨日の事でちょっと絡まったんだよね」

「絡まったってなんだよ?」

「まあまあ、そこはそういうことで。で、無暗にやったってこの世界がゲームだって知ってる存在は少ない訳で、その数少ない者達なら、色々と出来るかなってね。だから別に無意味な事をしてる訳じゃないだよ」

「ふーん」


 アギトも日鞠の事はよく知ってる。だからそれで納得した。


「わあ……」


 会長は山から周りの景色を見てそんな感嘆の声を上げる。いつの間にか既に雲が下にあって、透き通る空気にどこまでも地上が見渡せるようだった。さっきまで吹雪いてたから、それの晴れ間ってのもきいてるんだろう。世界が輝いてみえてた。


 会長は……日鞠は今、きっと冒険してる事を実感してるんじゃないだろうか?

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