表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
928/2705

928

「ひま――会長」


 思わず日鞠と言いかけた僕に鋭い視線が飛んできた。だから慌てて訂正する。日鞠は僕の姿を見た時、一瞬痛ましい様な目をした。けど、直ぐに僕に笑顔を見せる。「安心して」とそれは言ってるようだった。けど奴は強敵だ。

 日鞠自身の戦闘力は実際どこまでかわからないが、弱いって事はないとは思う。日鞠はなんだってできる。それは言葉通りの意味でだ。寧ろこいつに出来ない事を探す事の方が大変だ。そんな日鞠だからLROでだって弱い訳はない。あいつのペンの力は正直未知数だし……けどそれでもやっぱり僕は不安だ。


 なにせ僕はオリジンを知ってる。風帝武装だけならまだ何とかなると思うし、それならここまでの事態にもなってない。けどオリジンは危険だ。あれはまるで……この世界をデリートする為の力の様な……そんな気さえしてる。


「あいつは……あいつの使ってるスキルは危険だ……だから」

「だから何? 瀕死なんだからスオウは大人しくしてて」


 一蹴された。確かに僕は瀕死だが……まだ回復薬はある。まあ……それでもどうやらオリジンに斬られた傷は見た目上は癒えないし、奴に噛まれた傷もどうやら癒えないようだけど……オリジンと化したセラ・シルフィングによってつけられた傷はその部分がまるでバグったかの様に、オブジェクトが崩れた様に表示されてる。動くと血というドットが零れたりもする。

 明らかに変な風になってるのは見ただけでわかる。もしかしたら、現実世界の自分にも何らかの影響があるんじゃないかと思える。そしてそれを日鞠も懸念してるのかも。


「ここからの相手はこちらがするわ」

「雑魚が!! 俺の邪魔をするな」


 奴のマントから広がる靄が立ち上がり、それが渦を巻いて日鞠、もとい会長へと襲い掛かる。


「まずは知らないとね」


 そういって会長は一枚の紙を取り出した。何をするのかと思ったが、なんと会長の奴はそのままその攻撃をその身に受けた。

 建物を貫通するその攻撃は会長を吹き飛ばす。それでも会長の奴は悲鳴も上げず、歯を食いしばって耐えてた。けどその間もしっかりとペンは動いて紙に何かをしたためてた。


 僕は吹き飛んだ会長を抱いて別の建物の屋根に降りた。


「大丈夫か?」

「なんのこれしき……だよ」


 そうは言ってるが、かなりHPを持ってかれてるぞ。きっと必要な事だっただろうが……僕は日鞠が持ってる紙をちらっと見た。ちらっとでも僕のこの目なら何を書いたかくらい読める。けど僕の目には何も見えなかった。本当は何も書いてないのか? と思ったが、どうやらそうじゃないらしい。


 会長はその紙を目にして視線的に読んでるのがわかる。多分だけど、あれは使用者にしか読めない様になってるんだろう。そんな事を思ってると、奴が追ってきた。


「その女諸共消えたくなければ使え。オリジンを!」


 その言葉にピクッと会長の耳が反応する。けど、ここではそれは後回しにしてくれるらしい。会長は再び奴の前にでる。


「させません。スオウもそうだけど、これ以上レスティアは……私達のエリアは壊させない!」

「ただ一人のプレイヤーに何が出来る?」


 その奴の言葉に日鞠は薄く笑う。


「一人? 違いますよ。貴方が相手にするのはテア・レス・テレスというチームです。スキル『コントロールキャッスル』」


 その瞬間、日鞠の周囲に沢山の紙が展開した。あれで一体何をする気だ? 


「有象無象がいくら集まろうと!」

「有象無象なんてありません。全ては輝く一つの星。それを貴方にわからせましょう」


 再び奴は靄で攻撃してくる。今度も会長は動かない。けど、いくつかの紙に触れたり位置を動かしたりはしてる。そして何やら言葉も言ってる。するとどこからともなく、同じ格好をした奴らが側面からスキルを放つ。それは炎を弾が出るようなものだった。

 それを側面から現れた六人がうねりに向かって放った。けどそれは奴には向いてない。その炎の弾は僕達とうねりの間でぶつかって大きくはじける。その衝撃でどうやらうねりは吹き飛ばされたようだ。多分会長は直接攻撃したんではあのうねりが止まらないとわかってたんだろう。だから余波で吹き飛ばした。


 更に会長の動きはとまらない。空から大量の矢が一斉に奴に降り注ぐ。それは流石に全てを力で下すこともできない量だ。思わず奴が下がった所で底そこには空間の亀裂があった。それに奴は飲み込まれていった。


「さて、これでこっちの準備が整ってる場所に送れたから、後はあの力を解析しつつ倒すだけだけど……スオウはどうする?」


 それは僕に奴が無様に死ぬところを見せたいとかそういう? いや、会長はそんな悪趣味な趣味はしてないか。何か、ある……とおもってる? 僕とアイツの間に……でもたしかにそれはある。あいつが何でセラ・シルフィングを持ってかつての僕の力を振るうようになってるのか。

 それをしたのは多分苦十の奴だ。あいつは意味のない事はしない。それにやっぱりオリジンは危険だ。会長がへまをやらかす所なんか想像できないが……


「僕もいく」


 僕は会長の手を強引に取る。そして二人してさっき奴が飲み込まれた空間の亀裂に入る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ