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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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 墳墓の入り口の前でにらみ合う二人。夜の風が優しく吹き抜けてる。曇った空……けど雲が流れて不意に二人を月の明かりが照らす。それを待ってましたと言わんばかりに一心が動いた。一気に前方に駆けた一心は何かを呟く。それと同時に、偃月刀に赤いオーラが宿り、そして一心の動きが変わった。滑らかに縦回転を繰り出して地面をえぐりながらブシさんに迫る。


 あの技は見たことがある。さっきのボスも同じ技を使ってた。システムの補助で今の一心の体は動いてるんだろう。だからあんなに滑らかだし、あんなに何回も回転出来てる。三半規管は大丈夫だろうか? 


 対するブシさんには焦りはみえない。迫ってくる一心は、確かにあのボスよりも迫力なんてないかもだけど、なかなかの威力を期待できそうな動きはしてる。


(一撃で決める?)


 そんな気がした。だってあれは一度見た技だ。それに絶対に一心よりも威力も早さもけた違いだったボスの同じ技をブシさんは受け流してた。つまりは一心の攻撃は通用しない。でも一心の奴だってそれはわかってる筈。でもどうだろうか? あいつ何にも考えてなさそうだしな……


(おお)


 とか思ってると一心動きが変わった。縦回転だったのが、ブシさんに届く距離で横回転になったんだ。ブシさんは縦回転を見極めて剣を抜いてた。今さら軌道を変えることが出来るのか? 出来なければ、一心の攻撃が当たりそうだ。

 回転を殺さずに縦から横にやったから、位置もずれて少しの猶予を作ったが、うまく体をひねって威力は殺してない。あそこまでが技なのかはわからないが、当たれば大ダメージを負わせることが出来るだろう。さらに一度当てさえすれば、二刀流の強みである連撃が生かせる。


 最初の一太刀は終わりじゃなく始まり。一撃を当てたら、HPが尽きるまで攻撃を叩き込むことだって……出来る! 勝機があるか!? そう思って僕は見守ってたけど、ブシさんはやっぱり冷静だった。冷静に一心がずれた場所に剣を振り下ろす。


 その時には既に一心の偃月刀が彼の体に食い込んでる様に見えた。けど……ブシさんは振り下ろした刀の刃を逆にして、わずかに体の向きを変えて刀を振り上げた。


「づあ!?」


 一心の体が切り上げられる。まさか――と思った。確実に一心の攻撃は届いてたし、勢いも考えれば押し勝ってておかしくない。なのに切り上げられたの一心だ。あれは……技術なのか? もう確実に相手を斬れる刀としか思えないような? 


 けど流石にそれは……強すぎる気がする。


(バランス崩し?)


 それなら納得できる。でもバランス崩しは国とか何か超重要な位置にある奴が持ってたイメージだが、あれはバランス崩しを持ってたからそういう立場になったんだっけ? よくわからない。でも今のは……斬られるべきはブシさんの方だった。


 僕は目がいいんだ。そう言い切れる。それを覆して切った。特別な動きなんか何もなかった。早かったけど、それでも間に合う早さじゃなかった。けど、覆った。でも何も技ではなけれは、武器になんの光も宿ってはないんだよな。

 ゲームだから演出は基本派手なLROだ。何かを使えば目に見える形で現れる。けど……ブシさんにはそういうのは見られない。本当に何も特殊な力なんて使ってないのかもしれない……本当に自身の力……プレイヤースキルだけであれをやってるのかも。


 それを考えると恐ろしくなる。そのあとは、結局一心は手も足も出ずに負けた。息を切らす一心に対してブシさんは涼しいものだ。そして彼は去っていったよ。不思議な人だ。出来れば、敵にはなりたくないって僕は思った。

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