楽園の庭
僕達は辿り着く……遂にその場所へ。そのための扉は今開かれたんだ。この先にセツリは居る。だけどその前に、純情可憐な乙女が顔を真っ赤に染めて、僕の言葉の意味を求めてた。
「エイルの奴はリルレットにそんな感情を抱いてるって事だよ」
僕は真っ赤な顔して火照ってるリルレットにそう返してやった。エイルには心の中で謝りながらね。これはしょうがない事だったんだ。
「エ……エエイルが? これってドッキリですか?」
認めたくないのかそんな事を言うリルレット。まあ二人の関係性がどんなのか知らないから、これは完全に余計なお世話何だろう。だけど思わず出るため息は止められなった。
「ドッキリって……僕達ふざけてここまで出来ないよ」
「うぎゅ……」
今までの事がそんなふざけて出来る事じゃないってリルレットはわかってる。まあ当たり前だけどね。何回も窮地が訪れてたんだからな。
しかしそれでも何だかリルレットは曖昧な感じ。
「でも……でも……うう……」
「信じられない?」
僕のその問いにリルレットはコクンと頷く。僕達としてはそっちが信じられないけどね。すっげーエイルってあからさまじゃん。
でもそれでも全然伝わって無いって事は脈はないって事なのかな? やっぱエイルには悪いことしたかも。しかしけど……この反応はどうなのだろう?
脈がない様には見えないっていうか……信じられない理由がある感じ? でもそれなら本人が直接言えばリルレットも認めざる得ないんじゃないかな。
やっぱ僕から伝え聞くのは違うっぽいしね。湯気が出そうな位真っ赤で少し震えてるリルレットと、ここにはいないエイル二人の問題だから後は丸投げで。
「それならこの戦いの後に本人から聞くといいよ。それならきっと受け止められるだろ?」
「そんな! ……うぅ」
勢いは呆気なく萎んでいった。まず聞ける訳なんて無いのかも知れないな。でもそしたらエイルの奴は踏み込まない気がするんだよ。
アイツがリルレットの事を思ってるのは間違い無いのに、このままで良いと思ってそう。そしてそれはリルレットも同じなのかも知れない。居心地の良い関係ってのは得てして壊し難い物だから。
だけど亀裂は入っちゃったかも知れない。僕のあの一言のせいで。これからはエイルにも優しくなろうかなとか思うよ。
するとその時、僕達しか居ない筈のこの場所に変な声が響いた。
「あははは、くだらないわね。やっとで全部倒したのに、どうしてそんな事で足踏みしてるのかしら? そんな事じゃ、折角私が用意したオモチャが可哀想じゃない」
「オモチャ……」
リルレットが声を一段低くして眼下に目を向けている。そして僕達もそこに横たわる物へと目をやった。あれは……倒したはずのエイルモドキの体だ。
頭はリルレットが吹き飛ばしたから無くなってる状態のエイルの体が地面にポツンと残ってる。けれどそれがどうしてなんだよ。
今までプレイヤーモドキは倒した瞬間に蘇生待ちの時間を省いて消滅してた。だけどエイルはそうじゃないらしい。何で今まであの不自然差を気に止めなかったのかが不思議だ。
直ぐに気づいても良さそうだったけど、安心とリルレットの純情さにやられてた。けれどまだ終わって無かったって事か?
だけどあれは……あの声はエイルモドキって言うよりも、もっと別の口調だった感じ。そう、少し前に聞いた様な声だった筈だ。
「お前……あの柊って奴か!?」
「ふふ、覚えててくれて光栄ですスオウ。でも意外と強く無いんですね。思ってたより時間掛かってますよ。それともあの程度の敵じゃ役者不足でしたか?
貴方の実力を出すのには」
向いてもいない……それどころか顔すらない筈なのに、奴の顔があのエイルの体に浮かぶ様な気がする。こっちを見て言ってる……そう感じるんだ。
それに役者不足って、趣味の悪いことをやった割にはまだ足りなかったって事かよ。どんだけ悪女何だよ。
「言ってくれるな……あんな事やりやがって。実力が知りたいなら自分で来れば良いだろ。戦えない訳じゃないだろう?」
「三百万の内のプレイヤーの中で私達に使われた事を光栄に思って欲しいくらい。そうでしょ人間? それに私達はまだ……貴方を殺さない。
ちゃんと私達のあの子を奪った償いをして貰ってから殺してあげるって決めてるの。だから良かったわ。万が一にもこんな雑魚に倒される事がなくてね」
奴の傍若無人な物言いに先に関を切ったのはリルレットだった。自身の納め忘れてたレイピアを無惨な体のエイルへと向ける。
「ふざけるな!! 何が雑魚よ! 何が光栄に思えよ! 私達がどんな思いで彼らを倒したと思ってるの!? 心は痛かったんだよ!
どこから声出してるか知らないけど、次にふざけた事言ったらその体を今度は消してあげる」
「ふん、直ぐに私を消さないって事は何か聞きたい事でも有るのかしら? 特別に発言を許してあげるわよ」
リルレットの眉がつり上がるのが見える。既にアイツはフザケてるからな。だけどそのレイピアを降り卸す事をリルレットはしなかった。
グッと堪えるようにして、きつい瞳で下を睨み口を動かす。
「それ……なら……アナタが使ったエイルや、他の人達。柱にされたその人達はどうなってるんですか!! 中の人達は無事なんでしょうね!?」
「ああ、その事。無事じゃなかったら貴女はどうなるのかしら? ふふふ、囚われてたら柱になった人達は貴女達に殺された事になるのかしら?」
「「「!!」」」
その場の全員が緊張感を張りつめた。だってそれは僕達が想像してた最悪の結果だ。そしてそれが原因を作った奴の口から出たんだ。動揺しないなんて出来ない。
首がないエイルの体が異様にまがまがしく、恐ろしく感じた。それが僕達のやった結果だとでも言うように。
「どうなのよ! 答えなさい! そんな曖昧な言葉じゃ認めないわ!」
アイリは気を強く持ってそう言った。本当は自分が一番怖いはずだろうにさ。それでも真実を求めてる。それは勇気だ。
後戻り出来ないだけの様にも見えるけど、僕達はそれを求めなくちゃいけない。どっちみち、目を逸らす事なんて出来ないんだからな。
でもここで聞いても大丈夫かどうか……もしもこいつからの真実が最悪の物だとしたら、みんなは進めるだろうか?
人殺しなんて罪……背負ったらどうなるかなんて分からない。それは想像を絶する様な罪悪感何だろうからな。動けなくなったっておかしくない。
どっちだ……どっちなんだ一体。
「ふふ、そうね。み~んな無事よ。だって私達に精神を捕らえるだけの権限は無いもの。システムはそこまで私達に開示してはくれない。
だから私達にプレイヤーをLROに閉じこめる事は出来ないの。貴女のお友達は今頃リアルで困惑してるんじゃ無いかしら?」
システム? それが開示しないってどういう事だよ。こいつらはシステムに介入出来る筈だろう? いわばシステムの上に居る奴らじゃないのか。
だけどそんな疑問よりも分かりやすい感情が確実に上がってくる。
「それって……本当?」
「今更よ。嘘付いてどうなるの? それにもう十分に時間は稼げたもの。そう……時間はね」
怪しい言葉。それにこいつが本当に真実を言ってるとは限らない。けれど嘘を言ってる感じでも無かった。用が無くなった道具の事なんてどうでもいいって感じ。
それなら本当に嘘付く理由も無いだろう。
「じゃあエイルは無事なんだ。良かった……」
リルレットの瞳から大きな涙がこぼれ落ちる。僕達も少しだけ何かから解放された感じがする。だけどそんな想いも長くは続かない。
何故なら原因がそこに居るんだから。
「なかなか楽しんで貰えたみたいで良かったわ。シクラが何で人を操るのを楽しむのか分かった気がする。だけどそれでも、私はやっぱり人の非合理性は見てて苛つくけどね。ふふふ……反吐が出るわ」
広い門広場に広がる奴の冷たい言葉。こいつにプレイヤーを捕らえる術が無くて本当に良かったと思う。もしもそこまで出来たら、こいつは最悪の想像をやってた筈だから。
だってそれが一番効果的だ。
「お前!!」
「アナタは遅すぎた。それを扉の向こうでしると――」
不意に途切れた言葉。それはリルレットが残ったエイルの体にレイピアを突き立てたからだ。それによってエイルの体は青い炎に焦がされていく。
「それ以上エイルの体を汚さないで!! そして貴女は絶対に許しません!!」
「――ふふ、私はあなたに興味なんて無いわ。でもついでだから、スオウと一緒に絶望をあげる。それだけの覚悟をして扉を潜りなさい」
言葉の終わりと共にエイルの体は燃え尽きていく。そして最後に僕へ向けての言葉が空気の中から聞こえてくる。
「スオウ……セツリはね、いつまでもアナタ側には居ないわよ。あの子は元々、私達の所へ居るべき存在なんだから」
言葉が空気に溶ける様に消えると、大きな音を立てて門が開いていく。重厚な音と中から現れた強烈な光が僕達の影を長くする。
この向こうにセツリが居るんだ。多分それは間違い無いだろう。けど――
「どういう事だよ……お前達の言ってる事なんて一ミリもこっちはわかんねーんだ!」
本当にどいつもこいつも言葉が足りない。人を置いてけぼりにしやがって勝手に話を進めるな。何が私達の所に居るべき存在だ!? セツリはちゃんと人間じゃないか。
何か似たような事を当夜さんも言ってた気がするけど――確か『システムはあの子を手放さない』とか何とか。似たような事だろうか?
でもアイツ等はシステムと自分達は違うみたいな事言ってたぞ。あ~もう! 訳が分からん! ここでウダウダやってても解決何かしないんだ。
そう思って僕は開かれた扉を見据えた。
(この向こうにセツリが居て、アイツ等もいるんだ)
それなら行けば、全部わかりそうじゃん。それに僕は立ち止まって悩むタイプじゃない。大抵が行き当たりばったりなんだよ。
最初にセツリを見つけてから、大体そんな感じでやってきた。見つけて見据えて、そして受け止めるんだ。それで良いと思える。
立ち止まってたら一生答えなんて出ないから。だから知るためにまずは進む。どうするかは受け止めてから考える。
「みんな……ここからマジで危険になると思うけど、一緒に来てくれる?」
もうとっくに退路なんて僕達には無いけど、一応ね。僕はここでみんなに何て言って欲しいのか……何回も幾度と揺らいだこの選択。
けれど今回は流石に早かったよ。逆に僕がみんなを実は信頼してないように思える程にさ。
「勿論!」「当然」「がってんだ!」「当たり前」「何言ってんだ今更」
様々な了解の声が真っ直ぐに僕の耳には届いてた。光で照らされるみんなの顔は、何かみんな静観に見えた。そして少しだけピリッとくる緊張感みたいな物がある。
それはきっとみんなが本気だと言う事だろう。みんなこれまでの事でもう覚悟とか決めてる。それを今更問うなよって空気で言われてる気がした。
油断も人任せにもしてる訳じゃない。みんながそれぞれ、自分がここで出来る意味を本気で見据えてる。だからこそ、この良い空気が出来てるんだろう。
「はは……ありがとうみんな」
僕はみんなにそう言って笑顔を作る。一人じゃ何も出来ない弱い自分だから、本当にそれは最大限の感謝の印。ここまで良く来てくれたし、ここからも来てくれるみんなが最高だと思える。
「スオウ、行きましょう。私達が当初目指してた場所へ!」
「――ああ、そうだな」
僕達は元々セツリ救出班だった。だからリルレットは目指してた場所何て言ったんだろう。まあだけど、僕はセツリと出会っていつもそこを目指してる気がするな。
ずっと追いかけてる……出会いも突然で、そして居なくなるのもいつも突然。掴んだと思ってた手を呆気なくすり抜けて行きやがる。
何度も何度もさ。でも不思議と追いかけるのを止めようとは思わなかった。それはいつもアイツは待っててくれたからだと思う。
それにもう、誰かに……何て任せておけるわけがない。一度掴んだ腕は、僕は何度だって掴み直して見せる。それがセツリなら……尚更だしな。
(ようやく追いついた。今度こそちゃんと捕まえてやる!)
そう心で思いながら僕は扉の中へと入っていく。目も眩むような光線を浴びて、出来る影させも消えていくかの様な光に全身を包まれる。
そして不意に草木の音と、涼しげな風が水の匂いを僕達に伝えてきた。何も見えなかった光は次第にその光明を減らして、僕達の瞳にそこを映し出す。
思わずため息が出そうな程のその光景を。
「綺麗……」
女性キャラの面々は思わずそう呟いてしまう程の物で、僕達男性キャラはため息を出したり飲み込んだり、素直に綺麗なんて言えなくて「うわー」とか言ってみたりを繰り返してた。
でもそれは無理も無い事なんだ。だってそれだけの物が僕達の目の前には広がっている。LROはそれぞれの場所でいろんな驚きをくれるけど、これもまさにその一つに成り得る物。
最近ではアルテミナスのクリスタルの町並みにも衝撃と圧巻を受けたけど、これは自然の美しさを表した系としては最高クラスだ。
空の青をそのまま地面に落とした様な湖に、地面に咲き誇る一面の花はどれも大きく凛と咲いてる。枯れた物なんてここから見る限りじゃ一つもないよ。そして少し視線を巡らせるとちょっと小高い丘の所に建物が見える。別荘の様な豪奢な作りのそれと、湖畔の傍にもお茶が出来る様なテラスみたいな場所もある。
小川のせせらぎに小さな腰ぐらいの水車も何か稼働してた。画家とかなら、この場所を描きたいとか思うかも知れない。写真家なら、永遠の一枚に残すかも知れない。そう思える程の美しい光景だ。
時間が自然とゆっくり流れる様なさ。そんな感じになるよ。
「でも……思ってたけどやっぱりあの白い宮殿の中……じゃないよねこれって?」
リルレットが言ったそんな疑問にみんな頭を捻る。実際、あり得なくないかって言ったらあり得なくもないかも知れない。
別に宮殿の中にこの空間を作る事だってLRO……もとい仮想空間なら出来ないことは無いだろう。外見にあってない広さを用意する事だって出来るって聞いたし、それならあれだけデカい宮殿ならすっぽりとこの空間が収まっててもおかしくはないんじゃないかな?
でもしかし……やっぱりここが宮殿の中ってのは違和感が有る気がする。外は外って区別したいし、中ならわざわざあんな光で多い隠す必要が有るのかって感じ?
今思えば何だかあの光、移動系の魔法の感じに似てたかも知れない。それならここはやっぱり別の場所で、あの扉は空間移動系の魔法で僕たちをここに運んだのかも知れない。
それならLRO初のエリア移動って奴だな。あの光の扉の中は普通のTVゲームで言うエリアとエリアの読み込み期間みたいな感じ。
そっちの方がまあ納得? すると誰かが気付いた用にウインドウを開いて言った。
「そうだよ。エリアサーチすれば分かるんじゃないか? さっきまではアンノウンだったからさ、エリア移動したのなら名前が表示されてるかもしれない」
成る程ね。みんな細かい所にまで気を配ってる。僕はさっきまでいた場所がアンノウン表示だった事さえ知らなかったよ。
やっぱりタゼホに無理矢理作られた場所だったからアンノウンだったのか?
「――ん?」
僕の頭に何かがその時引っかかった。何だろうこれ? この光景……この場所……僕はどこかで見たことが有る気がする。一面の花咲く場所に湖畔のテラス……御花畑を駆ける一人の少女と、それを見守る黒い髪の女性の姿……何だろう、この二人を僕は知ってる。
多分以前に見た映像が重なって写し出された様だ。実際は御花畑を駆ける少女は居ないし、それを見守る黒髪の女性も居ない。
でも確かに……僕はここを知っている。
「あったぞ。表示されてる。え~とこのエリアは『エデン』そう書いてある」
「『エデン』」
それって楽園って事だろうか? 旧約聖書でアダムとイヴが罪のリンゴを食べてしまうまで過ごした神の箱庭。確かにここはエデンと呼ぶにふさわしい感じはする。
楽園とか天国とかのイメージはこれからこの場所を浮かべそうと思える程だしな。だけどアンノウンだった所から名前が有る所に居るって事はやっぱりここはさっきまでの空間と違うって事なんだろうか?
奴らが割り込ませて作った場所じゃなく、元から存在してた場所って事に成るのかな。
「それにしても……あのシクラと柊とかはどこに居るのかな? それにセツリも」
「まあ向こうから出てこないなら探すしか無いよな。取り合えずあの建物が一番怪しい」
てか外に居ないのならあそこしか考えられないだろう。あの建物も実際にリアルで建てると成ったらそうとう金が入りそうな作りしてる。
小さな城って言うか、宮殿と言うか、とにかくそんな感じ。童話にでも出てきそうな感じなんだよな。ここはそう……セツリが好きな物で溢れてる様な、そんな感じがする。
「けどさ良く考えたら実際俺たちってその助ける子の姿知らないんだよな。敵は会ったけどさ、実際どうなんだよ?
かなり美人って聞いたけど? こんな場所が似合いそうな天使の様な容姿してるってな」
その言葉に「うんうん」と男共が協賛してくる。て言うかもの凄い今更な発言だよな。まあ最初はただ協力するだけの感じだったから、セツリにまで興味なんて無かったんだだろうけど。
それぞれみんな目的とかがあったんだろうしさ。だけどここまで来たらそうもいかないか。てか苦労したんだし知りたくなって当然。
「私少しだけ見たこと有るよ~。悪魔戦の時にね。でもあれは幻みたいだったけど、それでもやっぱり綺麗だったな」
そんな事を言って男共を煽るリルレット。そして案の定、興奮が激しさを増す男共。だけどさ、LROってどこにでも美男美女が溢れてる訳だし、そこまで興奮する事かな? とも思うんだけど。
まあセツリの場合はその容姿が『本物』って言うアドバンテージが有るわけだけどね。だからかは分からないが割り増しで良く見えるかも。
他のプレイヤーなら「リアルは一体……」なんていう詮索というか疑いの目とかが入るしね。それにそもそも「本当に女だろうか?」という問題もあったりする。
まあ大体が所作や不意に出る言動でアギト曰く分かるらしいが、偶に本物よりも女性してる人も居るらしいからね。それはもうプロらしい。プロってどういう事か分からないが、どうしたってLROではそう言う事が起こりうるってことだ。
だから絶対に信じれる美少女であるセツリはとても貴重って事なのかな。こいつらの期待値半端無さそうだもん。
「お前等な、少しは鼻息納めろ。それにリルレットも煽るなよな。確かにセツリはこういう所が良くにあ……う」
「うん? おいどうしたスオウ?」
また頭に記憶の残滓が顔を覗かせた。自分で言ってて要約気付いたよ。
(そうだ……あれはセツリとサクヤなんだ。そしてここは……あの時見た)
その時、一際強い風が吹いた。そして空に白い何かが見え、次の瞬間視界を覆う。どうやら飛んできたのは紙だ。それも原稿用紙。そして何か文章が綴られてる。
そしてその丁度一ページだったらしい場所の右端を瞳が捉えて僕は目を丸くした。だってそこにはこう綴られていたんだ。
『私の冒険!! 命改変プログラム』
舞う紙は一つじゃない。幾つもの紙が空と花を包んでる。湖畔のテラスに二つの残滓。笑いあうセツリとサクヤ。
でも残滓が消えると姿は一つ。彼女は僕を見て照れ笑いを浮かべてた。
第九十話です。
とうとう九十話って、もう百話まで直ぐですよ! なげーなアルテミナス編。だけどようやくセツリ再登場。出るぞ出るぞって言いながら長かったですね。そろそろアギトには過去編から帰って来て貰わないとズレが生じそうだし、色々大変です。
でも頑張ります! 次回は日曜日に上げますのでそれではまたです~。




