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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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 学校に来た。今日もまたいつもの光景だ。澄んだ空気に青い空の下、肌寒い教室で僕はぽつんと席についてる。普段はこんな早く登校なんてしない。むしろギリギリくらいだ。けど今日はかなり早い。こんな時期にまで部活頑張ってる奴らと同等くらい早い。


 いつもは来たら大体のクラスメイトは登校してるからな。まあ僕に挨拶する奴なんて秋徒くらいだが。誰も挨拶してくれない教室に入るのってなんか形見狭いよね。まあそんな事で傷つく段階はとっくに過ぎてるけど。


 けど今日はそんなの関係ない。だって誰もいないから。いや、正確には摂理がいる。いつも一緒に登校してるし、摂理は車いすだから置いてくなんかできない。だから悪いけど、僕に付き合わせて早く登校してもらった。


 そんな摂理は今は自分の机で丸くなってる。スースーと寝息を立ててるから今クラスメイトが来たらヤバイ破壊力の摂理を見れることだろう。静かな教室とこの時期特有の冷たさに酔いしれてたけど、眠る前に摂理がエアコンつけてたから、肌寒さはなくなってきた。巻いてたマフラーをほどいて窓の外をみる。


 何もかわらない教室。昨日と全く同じだ。それはそうだろう。一日で教室が様変わりする訳ない。そんなの文化祭の時くらいだ。ずっと教室にいるのもなんだし、僕は廊下にでる。摂理は……まあホームルームまでは寝かしておいてやろう。


「さむ」


 廊下に出るとブルっと体がふるえた。マフラーやコートは教室内だ。けど、また扉を開けるのは忍びない。静かだから余計音が目立つ。せっかく寝てる摂理が起きてしまうかもだし……僕は冷える手を学ランのぽっけに突っ込みながら廊下をあるく。


 空の教室を覗きながら階段を下りたり上がったり、卒業式の準備に使われてる体育館の方に……生徒会の奴らと顔を合わせるのは嫌だったらそこらへんはさけてグラウンド手前の花壇らへんをぶらつく。部活に精を出してる奴らが声を出しながら走ってる声も青春だ。


 花壇には蕾をつけてる花もある。普段はこういうところに目を向けないから新鮮。もうすぐ春だ。

 僕は自分の足を見て怪我してる部分をさする。


「案外大丈夫だな」


 刺された割にはそこまで痛くない。昨夜、あんな事があったのに今、僕は普通に登校してる。よくよく考えたら、こうやって一人でいるのは危ないのだろうか? クリスの奴が常に僕は監視されてるって言ってたしな。

 けど流石にこんな朝からはないか。人が少ないといっても全くいない訳じゃないし、闇に紛れるなんて今は出来ない。

 

 でも昨日の事を思うと今でも足が震えるし、鼓動が早くなる。今ここにこうしていられる事がとても大切だと……そうおもう。いつもの日常は当たり前だから尊いんだ。


「スオウ、一人じゃ危ないよ?」


 そんな声をかけてきたのは日鞠の奴だ。昨夜の事は話してない……というか、会ってないから話せるわけもなかった筈だけど……いまの言葉は知ってるような口ぶりだった。けど日鞠ならあり得ると思える。


「いやいや、ここは学校だぞ。何が危ないって――」


 そうふざけて言ってたら、日鞠が僕の胸に寄りかかってきた。学校でこんな……僕は引きはがそうと肩を掴む。でもその時顔を上げた日鞠の目を見たら、何も考えず抱きしめてた。だって日鞠は僕の日常で、常に僕があるべき場所だから。それをきっと確かめたかったんだ。

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