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バリバリバリとうるさい音が僕の鼓膜を刺激する。外に見える夜の景色はとても綺麗に光り輝いてる。こうやって夜景を観賞してると、さっきまでの事は夢だったんじゃないかとさえ思う。
いや、ごめん。そんなことはやっぱりない。だって僕の足はさっきの傷は現実だと、そう痛みで訴えかけて来てる。それに少し内を見れば……ね。今でも十分異常だとわかる。黒光りするスーツにフルフェイスのヘルメットに全身を覆った奴らがいるんだ。皆、壁に備え付けられた簡易的な椅子に座ってる。
このヘリはきっと物資とかも輸送したりするんじゃないだろうか? だから大きなスペースを確保する為に胴体部分がぽっかりと空いてる。こんな壁に備え付けられてる椅子ではすぐにお尻が痛くなってくる。銃は全員分のが壁に収納できるようになってた。
こうやって壁に収まってると、モデルガンかな? と思えるが、事実あれは正真正銘の銃なんだよね。
(やっぱりまだ日常じゃないな)
そんな事を思ってると、一人だけヘルメットをとってる奴……つまりクリスと目が合った。
「まだ怖がってるようデスね。私の事も怖いデスか?」
そういってクリスは僕の手を優しくとる。全身を包む黒いスーツに身を包んでるから、その温もりとかを感じることはできない。けど……こいつは……
「正直言って怖いな」
「あれま……」
怖くない……と言おうとしたよ。けど、よく考えたら、こいつも僕を攫った奴らと同類なんだ。そしてもっと狡猾だと言っていい。ここで「安心する」と言ったら、それはそれだけクリスの事を中まで侵入を許してるってことじゃん。
今は……クリスはただのクラスメイトだ。けど、こいつらにも計画がある。それが進めば、きっと今のクリスは崩れるだろう。だからこいつらの計画だって進めさせることは出来ない。
まあ僕に出来ることなんて言葉で「信用してない」とかいうくらいしかできないけど……
「まあ正しいデス……それは。でも今はまだ、ちゃんと帰してあげますよ。日葵と摂理の元へ」
その時、とても柔らかなものに包まれた。そして頭を埋め尽くすような香りが広がる。空気を吸うたびにそれは入ってくる。視界は一つの物に覆われてた。
「おまっ!? これ!」
「ふふ、男はこれが大好きデスから、安心するかなーって」
いたずらに成功したみたいな声が聞こえるが、良いのか? と言いたい。僕は今、クリスの胸の中にいる。確かに男はこれが好きだし、出来うることならやってもらいたいと思ってる。
けど、それって僕のような彼女なしの男には縁のないことで……それがこんな形で実現されるなんて……
「今はクリスじゃなく、ただの謎のお姉さんに甘えればいいんデスよ」
そういって頭を優しくなでられて胸に包まれてると、なんかとても安心した。なんと言おうとこれはクリスで、僕を狙う組織の一つのヘリの中で……安心なんて程遠いはずなのに……僕はいつの間にか眠りに落ちてた。