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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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「ん……」


 重い瞼を開けようとして、なかなか開かず、一体何がどうなったんだっけ? と思いながら何度も瞼を開けようと試みる。けどついに僕は気づいた。どうやら目隠しされてるっぽいと。そんな事にも気づかずに瞼を開けようとして自分がなんか恥ずかしい。


(えーとどうなったんだっけ?)


 僕は混乱してる頭を整理しようと試みる。けどちゃんと起きたと理解したら直前の記憶は自然と浮かんできた。


(そうだ……僕は――)


 その時、近くでガサっという音がした。僕は「居る」と思った。見えないが、確実に居る。僕を攫った奴らが。僕は眼がふさがれてることにとても恐怖してた。普通の事だと思う。だって人は大抵の情報を目から得てる。


 つまりは眼を塞がれると、情報量が極端に減るという事だ。情報がないと、自分の状態、状況が把握できない。そうなるとより人は不安になる。つまりは悪循環。更に僕はなまじ普通とは違う眼を持ってた。はっきり言って頼ってた。

 そんな目が封じられたから、普通の人よりもずっと怖いと思ってしまってる。けどここで狼狽えたら駄目だと必死に震えを抑える。実際抑えられてるのかはわからない。けど、心が折れない為にも気丈にふるまう必要があると思った。


(お……おちつけ僕。こいつ等の目的はなんだ? 僕自身なのか、それとも身代金目的の誘拐か……)


 後者は実際そんな事は無いだろうなって思ってる。行きずりの犯行ならその線もあるが、僕を攫った奴らは明らかにプロの動きしてた。誘拐の……ってわけじゃない。戦闘のプロって事だ。


(クリスと……同じ感じ……同業者?)


 その線が一番強い。クリス自身が僕は複数の組織に狙われてるらしいと聞いてた。なら、そのどこかの組織が動いたんだろう。こいつ等にもどこかの国がバックについてるって事か? でもクリス達みたいに、穏便に済ませてくれるのだろうか? さっさと連れ去って――


(連れ去って? 待てよ、ここが日本だと僕は勝手に思ってたけど……本当に日本か?)


 僕は間違いなく誘拐された。それは確実だ。そしてこいつらはただの誘拐犯じゃない。きっと……クリスと同じような奴ら。バックにはどこかの国がいる……となると、誘拐した時点で逃亡準備なんて万端で犯行に及ぶのではないだろうか? 

 だってプロだ。抜かり何てきっとない。日本内にいたら、こいつらはずっとアウェーに居るような物だ。けど、素早く僕を移送できれば? 個人じゃなく、国という後ろ盾があるのなら、多少の無茶だってきっと出来る。


(もしもここが日本じゃなかったら……)


 そう思ったらますます怖くなってきた。不味い……震えが抑えられないかも……


(落ち着け、まだ日本の外だとは決まってない。どれくらい気を失ってたのかもわからないし……ちょっと大きな声でも出してみるか?)


 どうやら目隠しはされてるし、手も足も縛られて椅子にくくられてるようだが、口は無事なようだ。声を発するくらいは出来る。僕は小さく深呼吸を繰り返して、その時にゴクゴク小さくなんと叫ぶかシュミレーションしてみる。


 けど、いい言葉が浮かばない。すると一人の男の声がした。


「下手なマネはするな」


 それだけだった。まさに何の情報もくれない言葉……プロの鏡だな。それでいて、容赦なんてしてくれないんだろうなって事がありありとわかる声音をしてた。


(絶対やばい……)


 そう僕の頭が訴えてる。このままじゃダメだ。なんとかして逃げ出さないと。袖にでもナイフを仕込んでおくんだった。現実的ではないが……けどこれからは本気で検討しよう。きっとラオウさんなら拘束なんて筋肉を膨張させて突破するんだろうが、あいにく僕はそんな事はできない。必死に周囲の状況を探るには今はもう音に頼るしかない。


「こほっ……」


 タバコ? そんな匂いがした。きっと誘拐犯の誰かが吸ってるんだろう。けどそれで僕は気づいた。


(見え……る?)


 それはタバコの煙の対流だ。煙がどうやって部屋に満ち、何を避けて対流してるのか……その流れが見えるというか、感じれた。そしてそれは部屋の構造と奴らの人数をおしえてくれる。


(なんかよくわからないが、状況が把握出来るのは助かる)


 僕は得られた情報からどうすればいいか考えて……けどやっぱりこの状況を一人で脱するのは無理だと判断した。状況がわかれば、見えてなかった希望が、見える絶望に変わるのだと僕はしった。けどその時だ。何か床が揺れた気がした。対流も僅かだけど流れを乱してる。


 何かが起きてる……僕は耐える事を選んだ。チャンスはきっと来る。それまでは僕はじっとして籠の鳥を演じてよう。

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