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一体どうやって傭兵ギルドへと乗り込むのかと思ったら、一心は人の集まる所で聞き込みを始めてた。なんて原始的な方法をとる奴だ。ネットを漁ってそういうコミュニティを見つければ、情報を向こうから発信してくれそうな気がするが?
(もう帰りたいな~)
とか思ってたら、一心がなにやら二人くらいのプレイヤーを連れてきた。
「だれ?」
「この二人は件の傭兵ギルドのメンバーだ」
「「うっす」」
なんか見つかるのは早い。これが行動力という奴か。一心が連れてきた二人は別段普通のプレイヤーだった。いや、まあ別に傭兵だからってチンピラみたいな訳じゃないよな。それこそちゃんと信頼を得てやってるのだとしたら、それは当たり前の事だ。うんうん。
「それで聞きたい事とはなんでしょう? 傭兵のお依頼なら歓迎ですが――」
その時、何やら視線が鋭くなった気がする。傭兵なんて事をやってると、変ないちゃもんをつける奴は度々いるのかもしれない。傭兵とかがいなければ勝てたのに……って逆恨みする奴がいてもおかしくないしな。僕達もそう見られてるのかも。
「うむ、残念ながら傭兵の依頼ではない!」
「そうですか、残念です。それでしたら一体?」
「聞きたい事がある。お前たちの所に日本刀を使う武士みたいな奴はいるか?」
「武士……」
脅すのかと思ったら、別段一心はそんな事はしないらしい。流石に長く生きてるんだし、そこら辺は弁えてるか。傭兵ギルドの二人は記憶を辿る様にしてる。あんな強い奴なら幹部とか……それこそギルド長とかかと思ってたが、どうやら違うみたいだ。
だって偉い奴なら顔だって知られてる筈だろう。この二人の様子を見るに、偉い奴ではなさそう。けど……あれだけの実力だ。違和感しかないな。僕は別段、LROで最強とか思ってないが、そこそこ強いんじゃないかとは思ってる。
それにきっとスピードだけならトップクラスの筈だ。そんな僕でさえ、奴には一太刀もあびせれなかった。あれは一体どういうことなのか? 感覚的にはもうそこにあった……みたいな? まるで自分から奴の刀に吸い来れていくような感じだった。
けど、あの時自分は確かに僕の意思で動いてた筈だ。
僕がそんな風に思案してる間にも、一心は必死にそいつの特徴を教えてた。そしてどうやら一人が思い至ったようだ。
「なあ、あいつじゃないか? 最近入ってきた」
「うーんいたか? そんな奴?」
一人は思い至ったようだが、もう一人はまだはっきりとはしないらしい。傭兵ギルドって実力テストとかはしないのだろうか? だって傭兵だよ? 傭兵足りうる実力者じゃないと、意味ないじゃん。ただ単にこいつらが下っ端だから知らないだけだろうか? 判断に困る。
「どこに行けばそいつに会える?」
「そういわれても……各々仕事は違うし……普通は数人で組んでる筈だが……そいつはひとりだったんだろ?」
その言葉に一心は頷く。やっぱり普通は一人ってないよね。小規模な戦いだったからかもだけど、一人じゃ、そこまで戦力に影響ない。まあ今回の奴は例外だったが。
「拠点はどこだ?」
「いや、流石にそれは言えねーよ」
まあ当然だな。そんな簡単に拠点の場所なんて教えないよな。そろそろ気もすんだだろうし、帰る提案でもしようと僕は一心に近づく。けどその時、一心はこういった。
「よし、なら雇おう! 傭兵はいくらで雇える?」
悪い笑みを浮かべる一心の顔が背中越しでも見えるようだった。