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「会長、ローレ様がお越しです」
「うん。直ぐに行くよ」
レスティアの風景を一望できる展望台に居た私をチームメンバーの一人が呼びに来た。この人は生徒会の人ではない。けどなんかよく、私の傍にいようとする。やる気はあるんだけどね。最近テア・レス・テレスに入った小さなギルドのリーダーだったから、上に居たい人なのかもしれない。
まあその割には、自分からこっちに併合を申し込んできたんだけど……今の所、私がちょっとウザいくらいしか実害はないからいいけど。
とりあえずお礼を言って私は展望台を後にする。その後に続く彼はこういうよ。
「朗報だと良いですね」
「そうだね」
「大丈夫です、会長の祈りはきっと届いてます!」
「はは……みてた?」
「私は会長の盾ですから……すみません」
私がちょっと意地悪に見つめると、そういって謝って来た。てかそもそも盾なんて役職はない。護衛もないしね。そもそもここはゲームの中だ。殺されたからって実際に死ぬわけではない。いつだってログアウト出来るし、ログイン出来る。都合さえあえばね。だから殺される事を警戒する必要なんてない。
それにここは私達の街だ。ここで私を襲うなんて事はもうこの街にいられなくなるって事。それはデメリットとしてはかなり大きい。そしてそれによって得られるメリットは何か? はっきり言ってない。いや、名声とかかな? 私は今や、LRO内で最大規模のチームのトップだ。だからそこのトップを打ち取るというのはそれなりの名声になるのだろう。
けどそれだけだけどね。
「ですが、あれだけ必死に祈るのであれば、こちらが動けがもっと簡単だったのでは?」
「そうでもないよ。私達は数でしかないからね」
私達の中にはそれほど突出した個がいる訳じゃない。まあ、最近はそれなりの人達もいるけど、やっぱり前のLROからやってる人たちは繋がりがある古株の人達とつるんでたりするから、テア・レス・テレスのメンバーは全体的に新しくなってから始めた人が多い。
そしてあの人数制限……いまの私たちなら数で押せるのならやりようはいくらでもある。でもそうじゃないなら、色々と手間が必要だ。勝てないとは言わないけど、難しいとは思う。
そんな私達に比べてスオウ達は突出してる。それに因縁も何やらある様だっしね。エレベーターから降りて街を歩くと色んな人が挨拶してくれる。それはプレイヤーだったり、NPCだったりと色々だ。本当にLROのNPCは普通の人にしか見えないから凄い。
私は普通にこの人達にも心があると思って接してる。だって見た限り何も変わらないからね。でもプレイヤーの中にはNPCだからって酷い事をする人もいるらしい。ここではそんな事許さないけどね。
「会長は本当に素晴らしいですね」
いきなり何を言い出すのかと思えば、なんかキラキラした目で彼は誇らしげだった。
「そんな事ないよ」
私は普通の事をしてるだけだ。普通の事を頑張ってるだけ。大好きな人の為に……ね。実は私は既に結果は知ってる。流石にスカルドラゴンを引っ張っていってそれで終わりな訳ない。ちゃんと戦いの行方を監視させてたからね。
それによれば、事は万事うまくいったよう。祈りは何とか届いた様だ。やっぱりスオウの事だけはあんまり介入できなくなっちゃうよね。ほんと、歩くの早い。一緒の方向を歩いてたと思ったらどっか行っちゃうし。だから祈る事をやめる事なんかできない。
いつだって彼が無事であります様に――とそう私は願ってる。
そしてテア・レス・テレスの本拠地である城まで戻って来た。そしてローレさんの場所まで急ぐ。彼女は庭園の一角で優雅にお茶を啜ってた。その横には青と白が混ざった髪をした屈強な青年が侍ってる。私は彼女の元に笑顔で近づいてくよ。