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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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「皆は?」

「この魔法の効果はそんなに広くないわ。もう手遅れでしょうね」


 ローレの言葉に僕は気を引き締める。僕達は今、一部の時を切り取ってるんだろう。それがローレの、いやメノウのやったことだと思う。


『主』

「お疲れメノウ。よくやってくれたわ」


 いつの間にかメノウはローレの傍にいた。なんだろう。メノウの動きがコマ送りというか、コマ落ちの様にみえる。その動きがこいつの不気味さを増してる。メノウは人型してるが、二メートルくらいあって、更にローブとかから見える腕は真っ白で骨ばってる。それにローブとかも裾とかはギザギザだ。いうなれば、メノウはとても霊っぽい見た目をしてる。


 見あげる様に顔を覗いてもその顔は見える事はなく、赤い瞳だけがこっちを見下ろしてくる。そんな事を思ってると、ピシと何かに亀裂が入るような音が聞こえた。


「流石にこれだけの奴を時に閉じ込めるとなると、そう持たなそうね」


 どうやらスカルロードドラゴンが時の拘束から逃れようとしてるらしい。これを自覚してるのか? 時間が止まってるなんて、止まってしまったら自覚なんて出来ないハズではないか? だってさっきの僕が良い例だ。僕はきっとローレが触れるまで時が止まってたんだろう。

 だからこいつの接近に気づかなかった。それならスカルロードドラゴンだって同じの筈。領主が実力者とか聞いた事ないしな。けど、そういえばオルガトは既に理性がなくなってると言ってた。コードを奪われて理性を無くすというのも良くわからない。


 だって自分のコードを取られた訳ではないだろうに……でもあそこでオルガトが嘘を言うメリットもない訳で……いまのこいつは完全なモンスターとしてのスカルロードドラゴンなら、その野生の勘が働いてるのかも。


「どうする?」

「ちょっと待って」


 そういって僕はローレに引っ張られて奴の元へといく。それはこの空間内で時を止められてるオルガトの元だ。


「やっぱり、まずは俺っちすか?」

「あんたやっぱり動けるんだ」

「まあ本気出せば? このデカいのが攻撃されれば本気出さざる得ないっすけど」


 驚いた。どうやらオルガトは自力で動けるらしい。流石は最強を自称する精霊だけあるって事か。そしてローレはそれが分かってたから先にオルガトの元へ来た。


「俺っちにも攻撃したら動いちゃうっすよ?」

「そんな事しないわ。今からあんたの支配を上書きする」

「召喚を乗っ取る訳っすか。それよりもキスしてくれたら一発っすよ?」


 冗談めいたオルガトの言葉にローレは言葉を帰さない。杖を向けていくつかの札を手から放っていく。それが青い炎になって燃えていくと、魔法陣がオルガトの周りに展開される。召喚された精霊を乗っ取るなんてそんな事が出来るのか? と思うが、ローレがやるというのなら出来るんだろう。


 オルガトを覆う陣の光は徐々につよくなってる。そして周囲から聞こえるピシピシという音も断続的に聞こえてる。視線を下に向けるとローレが険しい顔して口を動かしてた。その額からは汗が落ちてる。こうやって並んでるとローレの小ささが分かる。

 前のLROの時よりも全然大きくはなってるけど、それでもこいつは小さな女の子な見た目してる。こんな奴に頼りっぱなしなんだなって思ってその頭に手を置いてポンポンしてやった。すると何やらうざったいような視線を向けられたが、怒られる事はなかった。


 そしてひと際大きく陣が輝き、それと同時に砕け散る。すると両手を広げたオルガトが光から出て来てローレに礼をする。


「流石っす」

「当然でしょ。さて、それじゃあ、最後の仕上げといきましょう。スオウ、アレを使いなさい」

「あれって……いいのか?」

「大丈夫よ。オルガトにサポートさせるわ」


 なるほど、こいつを手中に戻したのはただ邪魔されない為でもなかったのか。確かに一人で使った時は酷い事になった。けど、このスキルの力の元はオルガトだ。そのオルガトが力を貸してくれるのなら大丈夫なのかもしれない。


「まあ男に興味はないんすけど、主人の頼みじゃ仕方ないっすね」


 そういってオルガトはそのくちばしで僕の左目を突きつぶしやがった。


「――――づ!?」


 LROじゃなかったら悶絶してる所だ。一瞬だけズキッとしたがそれだけで、どうやらHPの減りもない。どういうことだ?


「契約者同士っすし、これが効率いいんすよ」


 その言葉と共に、何かが体に侵入してくる感覚があった。これはきっとオルガトが体に入って来てるんだろう。そしてその感覚が無くなると、顔に変な感覚があった。なんか視界が狭い。手で顔に触れると異物にあたった。どうやらオルガトがつけてた仮面をつけてるらしい。そしてオルガトが身に着けてたマントも付けてるし、なんか服が黒を基調としてオルガトが身に着けてたタイトスーツみたいなのになってる。首にモフモフしたのが当たって気が散る。

 でも体がから湧き出るような力も同時に感じてた。


『まさか、アレが発言してるとは……これも可能性の賜物っすね』


 体の内からそんな声がきこえた。可能性……その言葉は普通なら希望みたいに聞こえる物なのかもしれない。けど、なんか呪いの様にも今の僕には聞こえるよ。


「それじゃあやりなさい」


 そういってローレが手を離す。けど僕は止まらない。どうやらオルガトの力で止まった時間の中でも動けるらしい。僕は空の両手を広げて呟く。


「オリジン」


 ようやく、今回の戦いが終わる。

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