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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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イラつくアイツ

レイアードに入って数週間が経った頃、俺たちの周りには一つの影が付きまとってる感覚がいつもあった。レイアードに入ったからって別に変らない日常に少し安心してたのに、これはマジで迷惑なんだ。

 なんで? なぜアイツは俺達が狩りに行く時の待ち合わせ場所に幾度となく鉢合わせるんだ? 何企んでるガイエンの野郎。


 俺とアイリがエルフ族のレイアードに入って数週間が経った。まあ入ったからって何が変わった訳でも別にない。別に誰がレイアードだって公表されてる訳でも無いし、何か制約が有るわけでも無かった。

 ただ連絡が来て時々集会みたいなのに顔を出すだけ。俺とアイリはその時位しかアジトに行かない。だから他のレイアードの連中とも薄っぺらな関係……が大体何だが――


「おい、今日は何の様だよガイエン?」

「何、たまたま通りがかりにお前を見つけただけだ。貴様かこそこんな所で何やってる?」

「お前……あからさまに毎度毎度同じ展開で来るなよな」


 ――このガイエンなる蒼髪野郎は最近いつもこうやって俺達の待ち合わせ場所に現れる。そして言うことがいつも同じだから有る意味不気味だよコイツ。


「毎度毎度同じとは心外だな。それじゃあ私が狙って現れてる様ではないか」

「様じゃなく、完璧そうだろ! 何お前? グラウドに言われて俺達を観察でもしてる訳か?」

「はっ、あの単細胞がそんな事をさせる奴に見えるのか貴様は?」

「質問を質問で返すなよな。それに単細胞って一応リーダーだろうが」


 酷い言い様をする奴だまったく。てか何の指示も無く自分の意志で俺達を追い回してるって事は、それってストーカーじゃね?

 どうやら今日こそアイリが来る前に退場して貰った方が良さそうだ。今までは居座られてる間にいつの間にか狩りにまで同行されてたからな。

 大きなゲートクリスタルがある門の前で、俺達は多分それぞれの思惑を巡らせていた。多くの人々が通るこの場所で、いつその人混みに紛れてアイリが来るか冷や冷やする。

 アイリの奴は気にせずに「一緒に行こー」言うからな。だからアイリが来る前に何としてもコイツを帰らせる。


「リーダーか……ああ、そうだな。リーダーリーダー。そうそうそう」

「おい、お前……忘れてたのか? よく自分が入ってる組織のリーダー忘れられるな。そんなんだからレイアードでも孤立してんだよ」

「ふん、余計な世話だな。私は元々誰かと馴れ合う事など求めてない」


 きっぱりとそう言いきるガイエン。ならどうして俺達には馴れ合いに来るんだよって言いたい。気紛れか? 勝手な気紛れで喧嘩の火種を抱えて狩りをするのって気分重いんだよな。

 マジで帰って欲しい。


「あっそ、なら何で毎回邪魔しに来るんだよ」


 ボソっと横向いてそんな言葉を発する。喧噪に紛れてしまうかと思った言葉はどうやらちゃんとガイエンの耳に届いたらしかった。


「別に貴様等の逢い引きを邪魔しに来てる訳じゃない」

「逢い引……ゲホッゴホ!?」


 何て事言いやがるんだコイツ。おかしな言動も程々にしとけよ。思ったことを自由気ままに言う奴なのか? どうりで誰とも仲良く成れないわけだ。

 てか、やっぱ狙ってきてるんじゃねーか。


「何だ、違ったか?」

「当たり前だ! 俺とアイリはそんなんじゃねーよ!」

「まあ、別にどうでも良いことだがな。他人なんてな」


 くっそーつい取り乱してしまった。ガイエン相手にあんんな姿を見せるとは不覚だ。妙にニヤニヤしやがって本当にムカつく顔つきしてやがる。


「なら俺達の事もスルーしとけよ。他人なんだから」


 本当に何でコイツと喋ってるのが理解できない。最初にあの火山のダンジョンでの印象はプラマイゼロ位に成ってたからさ、結構気まずく最初にアジトで見かけた時は一度もどっちも喋らなかったのに。

 そのまま来たら良かったのに……一体どこで間違ったんだろう。するとガイエンが衝撃的な事を言った。


「先に話しかけて来たのはお前達の方だろう」

「うぐっ……」


 そう言えばそんな気がしないでもない。確かあれはアジトに行った次の日に偶然……あの時はきっと偶然にも通りかかったコイツにアイリが声かけたんだった。

 それがガイエンのストーキングの始まりか。


「アイリが私に声を掛けた。忘れたとは言わせん」

「だからって毎度毎度来なくて良いんだよ。誘われてもねーんだからな。図々しいのか、シャイなのかどっちなんだよテメーは」


 自分で一緒に行きたいとは言えないが、目の前に現れて勝手に付いてくる……両方を併せ持ってるな。「思春期か!」と言いたいかも。

 実際ガイエンが何歳かなんて知らないが、どう感じても同年代とは思えないんだよな。アイリはそんなに年が離れてる感じはしないけど、ガイエンは言葉遣いとかあの偉そうな態度とか……成りたくない大人像が見える感じ何だよな。


「だから毎度毎度偶然だと言っている! 貴様達が私の行く先々に現れるんだろうが」


 なんだその言い訳? たく……もしかして、ガイエンは・・俺はあくまでも偶然と言い切るガイエンをジトーとした目で睨んで言ってみた。


「お前まさか嬉しかったとかか? アイリに声かけられて? だからこうやって現れて――って、気がある?」

「はっ、何をバカな事を。恋や愛など病気だよ。ましてやここLROでは、そんな感情は全て幻・幻想だろう。私がまさか、あんな偽りの姿に騙されるとでも思ってるのか?

 笑わせる」

「……あっそ」


 もの凄く舌は良く回ってた。でも俺の瞳は冷めてたよ。だってガイエンの言葉が上っ面だと直ぐにわかったから。だってコイツ……


「ガイエンお前さ、メッチャ膝震えてるぞ」

「ぬお!! ……はは、勘違いするな。これは武者震いだ。一体今日は、どんなモンスターの断末魔が聞こえるのかを想像してな」

「チビッたのか?」

「武者震い言ってるだろ!」


 突っ込まれた。多分スッゲー今動揺してるんだろう。表面上はそんな物見せないように必死に取り繕ってるが、既に遅い。

 コイツの弱みを一個握れた気がする。だけど何だろう?

 素直にからかえないと言うか……胸が苛つくみたいな感じがする。まあだけど、それはガイエンを見るといつも思う事だから変わりないか。


「お前とはちゃんと決着を付けた方が良いのかも知れないなアギト。貴様を見てると何故か異様にムカムカするんだよ。理由は知らんがな」

「奇遇だな。俺もお前の面を見る度に殴りたくてイライラしてたんだ。理由はしらねーけどな」


 喧噪の続く門の脇で二人のエルフがにらみ合っている。本当さ、俺達はつくづく相性が悪いんだと思う。どっちも本能で「こいつは嫌いだ」って思ってるって事が今発覚したしな。

 元々馴れ合いなんて俺達には不可能な事だったんだ。俺達二人では激しい科学反応を起こすだけ。いつの間にか俺の中でも退場の意味が変わってる。

(ガイエンはこの場から退場じゃなく、どうせなら俺の目の前から永久に退場して貰おう)ってな。物騒な考えが巡り巡る。

 俺達の異様な雰囲気に周りで同じく待ち合わせか何かしてた人達も引いている。そしてゆっくりと同時にウインドウを開く。呼び出す項目は勿論『決闘』しかも『デスマッチ』で! 

 これは何の制約も無く戦闘不能までやり合えるメニューだ。俺には分かる。ガイエンも同じ項目を出してることが。俺達はお互いに目障りな存在何だと思うんだ。

 だからここで……消しておこう。


「覚悟は言いかよガイエン?」

「それはこっちの台詞だな。グラウド風情に負けた貴様が調子に乗るなよ」


 やっぱガイエンの奴、グラウドをリーダーなんて認めて無いよな。足蹴にしすぎだろ。だけどあの台詞は自分がグラウドより強いって言ってるみたいに感じる。

 自己欺瞞か自己陶酔かそれとも本当か知らんけど、今更そんな言葉で引く気なんてない。俺達は武器に片手を掛けて、そしてもう片方は果たし状を送るためにウインドウへと延びる。

 積年……と言うほどの関係は全くないが、決闘への意気込みはそれを感じさせる何かが有った気がする。迷い無く延びた手が送信を捕らえる――寸前で、耳に陽気で明るくて聞き覚えの有る声が鼓膜を震わせて脳にまで届いた。


「アギトーごめんねー。遅く成っちゃったぁ」


 現れたのは待ち合わせに遅れてもいないのに謝るアイリ。その声だけで何だか不自然な態勢で止まってしまって動けない。タイミングが秀逸過ぎるんだよ。

 周りの異様な空気なんて何のその、アイリはてこてこ近付いてきて俺の向かいの奴に気づいた。


「あれ? ガイエンさん、また来てくれたんですね。二人はいつの間にそんなに仲良く成ったの? てか、何やってるの? 向かい合って、そんな中腰で?」


 張りつめた空気が次第に流れていく感じが分かる。俺は正面に居るガイエンに目で訴えた。


〔おい! 何とかしろよ。お前のせいだろ〕

〔はあ? ふざけるな。何で私が貴様の為になど〕


 おお、何か帰ってきたぞ。内容はムカつくけど感激だ。


〔元はと言えば、お前が俺達に付いてこようしたのが原因じゃねーか!〕

〔はっ、誰がそんな事を……被害妄想も大概にしろよ貴様。私はた・ま・た・ま、ここを通りがかっただけだ〕


 目だけの会話(?)がどんどん白熱していく。もうどうして意志が伝わってるのか何て、俺達の間ではどうでも良いことだった。


〔まだそんな言い訳するかこの見栄張りエルフが!〕

〔貴様こそアイリアイリと……腰巾着か貴様は!!〕

〔ぬぁに!? 誰が腰巾着だこの一匹狼野郎! 完全に分かったぞ。お前はただ友達作れないだけじゃねーか! そのねじ曲がった性格のせいでな! 

 格好付けてんじゃねーぞコラアアアアア!〕


 壊れだした俺である。


〔ねじ曲がっただと……私は貴様等の様に他人の顔色を見て自分の考えを変えるような事をしないだけだ! 薄っぺらく、貧弱な貴様等の信念やらを見てると、私は吐き気がするんだよ!

 女のケツを追いかけるしかしない貴様は吐き気どころか反吐が出るわあああああ!!〕


 再び再燃した炎は二人の間で絡み合って火花を散らしていた。勿論精神世界でだけどな。イメージ映像って奴だが俺達には確実にそれが見えている。

 だけどそれが見えてない奴がヒョコッと駆け出しそうに成った俺達の間に入ってきた。


「もう、アギトもガイエンさんも無視しないでください! 寂しいじゃんですか。二人だけで見つめあったり何かして……何だか私だけ仲間外れみたいじゃないだし」


 頬を膨らませて怒った顔を強調しようとするアイリ。だけどそれは失敗だろう……だって再び燃え上がった炎が即座に鎮火されるほどにその顔は愛らしい。


「いや……別にそんな気は毛頭無いよアイリ」

「本当に?」


 そう言って今度はガイエンにも確認を取るみたいに視線を向ける。するとガイエンは首を無理にでも曲げるように横へ向けやがった。

 何あいつ? 思春期の中学生か? そして心許ない声で「ああ」と言った。最初あったときは、まだ全然まともに話してたのに……まさかマジでアイツアイリの事を? 

 今度はイライラよりも妙な不安が心を覆うような感じがしてきた。イヤな気分だ。アイリは俺とガイエンを交互に何故か見比べてる? そして――


「そっか、良かった私も居て良いんだね」


 ――なかなか訳の分からない事を言った。だから俺は問いただす。


「どういう意味だよそれ?」


 元はアイリとの待ち合わせ何だからアイリが居ちゃいけないなんて事有るわけ無いのに。おかしな事を言う奴だ。


「だってね……二人がさっきスッゴく熱い眼差しで見つめあってるの見て気付いたの……」

「何に?」


 何だかイヤな予感がする。アイリってどこかズレてる所があるからさ。数ヶ月一緒にいればおかしな考えをしてる時のアイリが分かるように成ってくるんだ。そしてそれが今だ! と経験が告げている。

 そして真っ青な空の下……アイリはマジでとんでもない事を言いやがった。


「それ……はね。アギトとガイエンさんはその……もう、友達以上の関係なんだって!!」

「「――っつ!? はあああああああ?」」


 アイリは真っ赤な顔で拳を堅く握りしめて、大きな声でそう叫んだ。そして俺達二人はその言葉を一瞬理解出来なかったが、直ぐに打ち消す様に声を上げる。

 だけど既に遅いようだ。晴天の空に突き抜ける様に広がったアイリの染み込み易い声はこの門の前で行き交う人々、待ち合わせにタムロってる人々、その他色々にしっかりと届いたらしい。

 周りの目が俺達に向いてるのが分かる。四方八方から様々な目が俺達を捕らえてる。叫んだアイリの両側に顎が外れそうな程、口を開いたエルフが二人……自分達の良からぬ噂の広がりにおののいて、滴るイヤな冷や汗を止めることが出来ないでいた。

 その時、俺達は初めて利害が一致したテレパスをした。


〔〔誤解を解こう! 何としてもだ!!〕〕


 至上命令でした。いや命題かも知れない。だってこのままじゃアルテミナスに居られなくなりそうだ! いや、アルテミナスで噂が止まるとは限らないんだ! 下手すれば情報伝達が発展した現代じゃ一気にLRO中に広がりかねない。

 それはもう生きていけない!! 寄りによってこいつと何か……絶対にイヤだ。そもそも何だよ。友達以上の関係って。どういうつもりでアイリはそんな事言ったんだ?


「アイリー!! 何だよ友達以上の関係って!?」

「それは……その……口に出すのもはばかられる様な……私には言えないよ!」

「お前は一体俺達の何を見てたんだ!!」

「仲良しな所です」


 アイリの仲良しの基準が分からない! いや、アイツの目が何を写してたのかが疑問だよ。ガイエンと仲良くしてた事なんて一回だってないのにマジで何を見てたんだ!? 

 俺は言い切った、みたいな顔をしてるアイリに詰め寄って両肩を掴んで言ってやった。


「お前、いつから幻覚魔法に掛かってんだ!?」

「そんなの掛かってないですー」


 頬を膨らせて否定するアイリ。


「じゃあシステムのバクだな。良く聞けアイリ。お前にはあり得ない事が見えていたんだ」

「あり得ない事?」

「ああ、今の俺の言葉だけが真実だからな。今まで自分が感じた印象は全て取り払え」

「ええ~? そうなのかな? ガイエンさんはどう思います?」


 鬼気迫る俺の勢いを交わしつつガイエンへと首を向けるアイリ。だけど当然ガイエンもこっちに乗ってくる筈だ。


「あり得ない事を、お前は見てたんだ!」


 向こうも鬼気迫る感じの顔で言い返してくれた。本当に向こうも必死らしい。アイツプライドの塊みたいな感じだから、変な噂なんて耐えられないのかも知れない。

 そして両側から異様な空気で挟まれたアイリは、ようやく俺達の必死さに気付いたかも? 「あれ~?」みたいな顔してるよ。

 まあ実際バクなんて普通にLROの知識があれば、んな訳無いと分かるはずだが、アイリは良く分からずにLROやってるタイプだから混乱してる。

 それに信じやすい。多数決に左右される日本人の特徴を持ってるよ。この頭が整理仕切ってない所で、俺達は仲良しというアイツの見解をボロ屑の様に壊せば万事解決。

 畳みかけよう、アイリの脳に刷り込んでやる。


「いいかアイリ……」


 俺はアイリの肩を強く握って緊張感を殊更出す。そしてその空気に飲まれた様にアイリは唾を飲み込んだ。細い喉がコクンと動いたのが見えたんだ。

 周りの喧噪が耳から遠ざかる感覚。代わりに木々が風に揺れて枝や葉を擦る音だけが異様に大きく聞こえている。


「天地神明に誓って……俺はガイエンの野郎が、ダイッィィィィキライなんだよ! 顔を見る度に殴りたい衝動と腹が煮えたぎる思いを感じてる」


 まさに心に隠してた思いを全部ぶちまけた。するとアイリは俺の言葉に引いたのか、ちょっと震えてる。


「あ……アギトがそんな事言うなんて信じられない。こっちがあり得ないよ! 本当に……そんな事思ってるの?」


 アイリが必死に叫ぶと何だか本気で自分が責められてる気がしてくるな。まあアイリは純粋に俺を責めてるんだろうけど……でも、幾ら痛くてもこれが真実だと分からせなければいけない。

 だから俺は俺から見て前方、アイリからは後方になるガイエンへ振った。


「ああ……残念だけど俺は思ってる。けど、同じ様な事はアイツも思ってると思うんだよな? 違うかガイエン?」

「ふん、当然思ってる。貴様は出会った時点から気に入らなかったしな。殴りたいなんて生温い……私は百回殺しても殺したり無い位だよ。

 確信して言える。私のこの感情は、貴様が転生してエルフを辞めなければ消えないとな」

「ガイエンさんまで……」


 ショックを受けてるアイリ。無理も無い……今のガイエンの言葉は俺にもショックを与えたからな。だって、何て言ったかアイツ? 百回殺しても殺したり無いって、どんだけ俺は恨まれてるんだよ。

 あ~、やっぱアイツムカつくわ。何、言い切った後にあんな爽やかな顔してるんだよ。ガイエンも胸に有った物を出したって事なんだろうか。

 あんまりアイリに攻撃されてないのが不公平だが、ここが決め場所だ。後一押しで納得してくれる筈だ。


「分かったかアイリ? これが俺とガイエンの本当の姿なんだよ。仲良しなんてままならない、言う成れば俺達は犬猿の仲だ」

「そうなんだ……がっくりです」


 何故か異様に肩を落とすアイリ。一体何を期待してたのかは知らないが、取り合えず俺達の不仲を正しく理解してくれた様で何寄りだ。けれどまだアイリは一縷の望みを何かに懸けてこう言った。


「だけど……いやよいやよも好きの内って言うし、嫌い嫌いは大好きの裏返しと言う線も……」

「そんな事はどっかのツンデレにでも言ってろ」


 一縷の望みもバッサリと叩き斬ってやった。きっと今までで一番冷たい瞳をアイリに向けたと思う。だって言った後、アイリの震えが増していた。


「あ……アギトが怖いよ~」


 だけどそんな声が耳に届くと途端に俺の気持ちも沈んでいく感じに襲われる。あ~何嫌われる様な事やってんだろ俺? って泣きたくなるな。

 そして救われたのはガイエンだけって感じに成ってるのがやっぱり気に入らないから一発殴ってやった。そして結局始まった喧嘩はアイリが喧嘩両成敗するまで続いた。



「もう~二人が仲悪いのは分かったよ。だけど町中で喧嘩何かしちゃダメだからね」

「はいはい、悪かったよアイリ」

「ふん、手を出して来たのはそっちだろう」


 俺達は門の有る場所の端の方で正座させられている。だけど反省なんて……だって俺達が仲違いするのは何かもう宿命みたいな? そんな感じがする。

 けれどアイリはそんな俺達にご立腹だ。


「二人の仲の悪さは以上だね。でもそれはきっとお互いをまだ良く知らなくて誤解が多いからだと私は思うの」


 怒った口調から徐々に優しさを帯びていく言葉。何だ? 一体何を企んでる? 


「何の事だよそれ?」

「ふふふ、だから私はあえてそんな二人を仲良くさせたい! きっとね、二人は友達になれるよ! うん絶対! そんな気がするの。

 だから私が心の架け橋になって二人の誤解を解いて行きます。だからこれからは三人で仲良くしよう!」


 唐突に出た、アイリからのそんな宣言。当然僕は猛抗議したが受け入れて貰えず、ガイエンの野郎は嫌々言いながらも別に反対はしなかった。

 そしてこれから俺達は三人でパーティーを組むように成った。そして一緒に居る時間が増えると、イヤな奴とでも仲間意識ってのは芽生えてしまうものだ。

 いつしかこれが普通になって……そして遂に『侵略システム』が実装された。俺達を大きく巻き込むそのシステムへと自分達から歩み寄って行くことに、これらから成る。

 悲しい結末が有るとも知らずに……いや、お前は知っていたのかもな……ガイエン。

 第八十七話です。

 アギトとガイエンとアイリのつるむ切っ掛けの様なお話です。これから三人が色々とやっちゃう訳になるのです。今の地位にそれぞれが居る理由。全ては本当にガイエンの思惑通りだったのか? 

 どうしてアギトがアルテミナスを去ったのか……その理由も明らかに出来るかな? って感じです。

 それでは次回は月曜日に上げます。ではまた~

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