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「俺っちはこのおっさんと契約してるわけっすよ。まあなんていうか? 俺っちって来るもの拒まずな主義なわけじゃん。だからまあ、誰とでも案外簡単に契約するんすよね」
なんかオルガトの奴は言ってるけど……正直僕たちはお前の事知らないから。わけじゃん――とか言われてもそうなんですね……としか言えないんだが。まあこいつは別に同意して欲しい訳でもなさそうだけど。
「去る者は?」
「居ないっすよ。俺っちの契約は魂の契約っすからね。いやいやいや、そりゃあそうでしょ? だって俺っち常闇の精霊っすよ。闇の深淵に潜みし者とか言われる最強クラスの精霊っすよ? そんな俺っちと契約するって事は、命差し出すと同じっしょ」
ローレの奴の質問にノリノリでそう答えるオルガト。つまりはこいつと契約したら、クーリング・オフは出来ないと……そういう事みたい。てか自分で最強クラスとか言っちゃうんだ。全然そんな風には見えないんだけどね。ノリが軽すぎて……
「――で、小さなレディも俺っちと契約したいと? 俺っちとしては歓迎っすよ。やっぱりむさいおっさんよりも美少女の方が好みっすからね」
「おいローレ」
僕はローレの肩を掴む。だってこのまま簡単にこいつ契約結んじゃいそうじゃん。オルガトはノリは軽いけど、その契約自体は全然軽くない。まあ、死とかが代償だったとしても、それはプレイヤーの僕達にはNPCの皆さん程のリスクではないけど。でもなにかデメリット的な物はあるはずだ。それが何なのかは多分契約してみないとわからないんだろうけど……
「何よ?」
「お前は目的変わってないか? こいつと契約しに来たんじゃないぞ」
「そうだっけ? 私はあたりつけて来たけど?」
こいつ、やけにあっさりと付いてきたと思ったら、そういうことかよ!? ローレの奴は独自で色々と調べてたんだろう。それで、もしかしたらってのがあったんだ。
「それに契約すれば、いつだって呼べ出せる。苦労してこっちが会いに行く必要ないじゃない。それに精霊は契約煩いし、こんな奴でもこのままじゃ、簡単に口割らないかもよ?」
「そういうものなのか?」
ハッキリ言って精霊と契約なんてしたことないからわからない。
「アンタもエアリーロとしてるでしょ」
「え? そうなの?」
契約とかしたかな? 覚えがないんだが……てか別に召喚とか出来ないし……そんなコマンド何処見てもないよ。
「自身にある風を感じるでしょ?」
「それが契約してるってことなのか?」
「さあ、私は違うけど」
おい……こいつなんでも適当言ってないか?
「へいへーいお二人さん? 俺っちのこと忘れてないかい? こんな所まできたんしょ。一発やっとこうぜ」
こいつはこいつで言い方! それなんかイヤラシイ事するみたいだから!! でもさローレの奴はああいってるけど、一応聞いてみてもいいと思う。
「なあ……そこのおっさんと何を契約したんだ?」
「ああ、それはほら、力と死なない肉体が欲しいって泣きついてきたっすから、これだけの命くれたら力をやろうってお決まりの奴っすよ」
「おい、案外簡単に教えてくれたぞ」
「あんた、ほんとに軽いわね」
流石のローレも呆れ気味。けどなるほどね。まあこの光景でなんとなくは察せれたけど、まさに悪魔との契約のお約束という感じだ。けどだからって自分の所の領民を使ってあんな……領主はなんで力を欲しがったんだろうか? そこが重要なのかもしれない。