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僕たちは今、もぬけの殻となった街に来てた。ここはあのスカルドラゴンが生まれた街だ。スカルドラゴンとの最終決戦をここに決めたから、僕たちはこの場所をもっと知るためにもここに来たんだ。まあ、何度かシルクちゃんたちが調査はしてるんだけどね。魔法陣はそのまま残ってるけど、それが何なのか、までは判明してない。
まあスカルドラゴンという化け物を生み出すための物なんだろうけどね。でも不思議な事に生み出した後もこの街の魔法陣は消えてないんだ。いままではそういう仕様なのかと思ってたけど、この世界に理由がなかったことがあっただろうか? 僕たちはまだあのスカルドラゴンの事を何もしらない。ただのモンスターとなったのか思ってたけど、何やらあのスカルドラゴンはまだ目的がありそうだ。
それを知るためにも、そしてこの町の人たちを助けるためにも、僕たちは知る必要があるんだ。このままではあのスカルドラゴンに勝つのはかなり厳しい。奴のその強さの鍵がここにある気がしなくもない。
「日記の解析はどうなったんですか?」
「あまり意味はなかったですよ。書かれてたことも、この世界への絶望と独白みたいなものでしたし」
そういうのはシルクちゃんだ。今はシルクちゃんにテッケンさん、そしてローレの奴がいる。シルクちゃんがいればテッケンさんがいる。テッケンさんがいればシルクちゃんがいる。この二人はワンセットみたいな感じだからいつも通り。けどローレがいるのは予想外だろう。だいたいこいつ自身、渋ってたしね。けど、条件出されてなんとか来てくれた。
こいつに頼ることはしたくないんだけど……こいつは魔法関連ではトップだろうからね。精霊もいるし、こいつがいれば、僕たちではわからないことがわかるだろうという思いで来てもらった。そしてそんなローレの奴は街に入ってから、何やらやってる。何をしてるのかはまだ教えてくれない。広げた腕にマップを表示させてそれを覗いてる。
「おいローレ、これから領主の屋敷にいくぞ。多分そこに何かあるだろうし」
「さんざん調べたんですけどね。けど、ローレ様なら何か気づくかもしれません」
「ふふん、まああんたじゃ無理よね。なにせ全部失ってるし。私と違ってね。私は前の力取り戻しちゃってるけど、あんたはなくしちゃったもんね」
「……ええ、流石ローレ様です」
こいつは……恥ずかしげもなくよくそんな自慢できるな。まあ、前からシルクちゃんには対抗心燃やしてたからね。世界が変わって、二人の間にはかなりの差ができたんだし、もうその遺恨もなくしてよさそうなものだけどね。だって誰がどう見たってローレが強い。まあけど、ローレ的にはそういうことではないんだろう。でも変に自慢するから人間的にローレが劣ってるように見えるんだよね。
そこには気づかないらしい。
あれだよね。二人を見てると姉妹かなって思える。もちろんシルクちゃんがお姉さんだ。優しいお姉ちゃんにわがままばかりいう妹みたいな感じ。
「けどそこじゃなくて行きたいところがあるわ。多分そっちが陣の鍵よ」
そう言ってローレは勝手に歩き出す。けど、ここはローレについてくのがいいだろう。
「お前……なんでそんな事……」
「わかるのかって? なんの為に私が来たのよ。この町のマップに力の流れを重ねてみてるのよ。それである程度どこが重要かくらい察しがつくわ。確かに領主の館が中心にあるけど、何も中心が陣の鍵って訳じゃないのよ。まあほとんどのプレイヤーは陣の意味さえしらないでしょうけどね」
何言ってんのこいつ? 僕はローレが有能っぽい事言ってるから思わず口を開けたまま固まってしまったよ。
「何よその顔?」
「いや、お前そんなキャラだったっけ?」
「どういう意味よ!」
僕たちはそんなことをワイワイ話してた。そして一つの建物にたどり着く。なにやら倉庫のような? いうなれば何の変哲もない建物だ。ここにローレは何かあるという。本当に? けど、こいつはこれで結構有能なのはしってる。だから僕はローレの奴で顎でこき使われてもぐっとこらえて倉庫の扉を叩き壊す。