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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
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(行ける……か?)


 風のお陰で水中でも息はできてる。さっきまでとは違う。水をかき分けて進む。目指すはただ一つ。水中に佇む、日本的な城だ。近づくとその色は赤くて、なんとなく竜宮城みたいだなって思った。多分意識してると思う。海の中にある城とか、日本人ならそれを思い浮かべない訳ないし……辿りついたのは大きな門の前。多分ここが入り口だと思う。

 水中何だから直接上から行けるかも……とか思ったが、どうやらそれは許されないらしくて、何やら膜の様な物に阻まれた。なので何処か入れる所は無いかと探した所、この門にたどり着いた。一応この城、ポツンとあるだけじゃなく、門と共に塀もあってそれがぐるっと囲む範囲は何やら不思議な膜が包んでるみたい。上から見た感じ、城の周りには日本庭園らしき物が見えた。

 

(うぐっ……)


 不味い、顔を覆ってる風がもう無くなりそう。そうなると呼吸できなくなるから、早々と中に入りたい所だ。多分だけど、この門を潜れば息も出来る筈。てかそうでないと困るだろう。僕じゃなくローレのやつがさ。押せば開くかな? とか考えながら更に近づく。すると、何に反応したのか、大きな門がドゴっという音を一度鳴らしたかの様に聞こえて開き出す。

 そしてその瞬間だった。まるで溜めた水が排水口に流れる様に身体が引っ張られる。それは水中でのスキルを満足に持たない僕には抗いようもない力だった。

 

 

「つっ……ローレの奴……後で文句言ってやる」

「誰に文句言うって?」

「げっ」


 冷たい床の感触を感じて目が覚めた僕が真っ先にそんな事を口ずさんで居ると当人が居た。確かに「げっ」なんて言ったが、文句をいう権利はあるはずだ。僕は自分を奮い立たせて強い視線をローレに向ける。


「お前な、ちゃんと迎えに来いよ! 前はあんなに自分のエリア詮索されるの嫌がってただろ」


 ほんとそこも謎だよ。前に目隠しとかまでして、ささっとここを通過させた癖に、今回はバッチリと散策出来たぞ。

 

「前は前。今は今はでしょ。何アンタ、過去に生きてるの? 私、前しか見てないから」

「いや、そういうことじゃねーよ。とにかく、迎え位寄越せよな。めっちゃ苦労したんだからな」

「うん、そこはありがたかったわ。良いデータが取れたし」


 こいつ、データ取る為に僕を放っておいたのかよ。殴りたい。いくら可愛い美少女だと言ってもそろそろ一発位許されるんじゃないだろうか? そんな事を思ってるとふと、ローレに言われた。

 

「それよりもさっさと服着てよ。セクハラで訴えるわよ」

「わ、分かってるし」


 そういえば、服は装備を外してたんだ。ウインドウを開いて中から服を取り出す。それをいそいそと着ていつもの格好になった。でもこいつでもそういうの気にするんだな? ローレなら別になんとも思いそうもないだろうとか思ってた。

 

「何よ?」

「いや、案外乙女な部分もあるんだなゲホッ!?」


 何が起こったかわからないが、腹部に衝撃がきた。絶対今、ローレの奴、何かやっただろ。こいつマジで容赦って物がない。

 

「お前な……」

「ここは私の城で私のエリア。アンタに万に一つも勝ち目はないんだから、私の気を逆撫でないことね。思わず殺しちゃうかもしれないし」

「……お、おう」


 怖い。素直に怖い。セラとかも怖いけどさ、アイツにはまあ殺される事はないだろうと思ってる。けど、ローレはやりそうな怖さがある。ローレの方がちっこい癖にえげつないな。

 

 そんなやりとりをした後に、ローレがさっさと歩きだすから、僕もその後ろについていく。襖や障子で隔たれた部屋はとても日本らしくて、ローレが居なければとても安心できる気がする。まあこいつに会いに来たわけで、そんな事ありえないけどさ。てかやっぱりこの城にも人の気配がない。マジでボッチなんじゃないかこいつ?

 自分以外、全員見下してる節あるし、充分ありえるな。

 

「それで、私にもスカルドラゴンの討伐に協力してほしいんだっけ?


 庭園が見える所まで来て、ふいにローレの奴がそういった。僕は勿論肯定する。

 

「見返りは?」

「は?」

「だから、私が協力する見返りよ。タダでやるわけないじゃん」


 くっ、こういうやつだよお前は。わかってた。わかってたけど、ローレが納得する見返りなんて……待てよ、あれならどうだ?

 

「よし、見返りは僕もテア・レス・テレスとバトルする時は、お前の方に付いてやるよ」

「何いってんの? それはもう決定事項だし」

「おいおい」


 いつ決定してたわけ? 誰もまだ参加するなんて言ってないはずだが? けどどうやらローレの中では決定してるらしい。これは条件には出来ないようだ。けどそしたら後は何も……

 

「スオウはチームには入ってないのよね?」

「まあ厳密には」


 アギトとかメカブとかのチームにもはいってはないね。僕は好きにやってるだけ。一心とも別にチームって訳じゃない。よく考えたら僕もボッチだった。いやいや、僕はローレとは違うし。ちゃんと周りには人いるから。こいつは周りに誰もいない程の上級ボッチだろう。格が違う。そう思ってると、ローレの奴がトテテっと歩いてきて僕の腰に抱きついてきた。

 え? なにこれ?

 

「なら、私のチームに入りなさい。それが条件」


 顔を見せないようにして、そう言ってくるローレ。流石にボッチは辛かったのか? まあこんなだだっ広い城で一人で居るのは辛いよな。ローレの戦力は貴重だ。スカルドラゴンもコードを食ってどれだけ強化されてるのかは分からない……それと天秤にかければ……

 

「私のチーム『瀬戸内盛り上げ隊』に入らないとやったげないから」


 …………うん、やっぱやめようかな? と思った。

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